野選とは?野手選択の意味・成立条件からエラーや安打との違いまで徹底解説
野球中継や試合速報で見かける「野選(やせん)」とは、正式には「野手選択」と呼ばれる記録上の用語です。英語では「フィールダースチョイス(Fielder's Choice)」といい、野手が打者走者を一塁でアウトにする代わりに、先行走者をアウトにしようと別の塁へ送球するプレーなどを指します。
野選は、打者が一塁に到達していても安打にならないことがあり、エラーや盗塁とも記録上の扱いが異なります。さらに、打率・出塁率だけでなく、投手の自責点にも関係するため、野球のスコアを正しく読み解くうえで欠かせない知識です。2026年の公認野球規則を踏まえ、成立条件から具体例、FCのスコア表記まで整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 野選の意味:野手が打者走者ではなく先行走者をアウトにしようと選択したプレーなどを記録するもの。
- 成績への影響:通常の野選で打者が一塁に生きても安打にはならず、打数が1増えるため打率・出塁率は下がる。
- エラーとの違い:野手の守備選択による進塁であり、必ずしも守備のミスを意味しない。
- 自責点との関係:野選による得点は原則として自責点の対象になる。ただし、失策などの影響によって判断が変わる。
- スコア表記:一般的なスコアブックでは「FC」と記載する。
【基本知識】野選とは?野手選択とフィールダースチョイスの意味

野選は野手がアウトにする走者を選ぶプレー

野選とは「野手選択」の略称です。
英語の「Fielder's Choice」を日本語にしたもので、野手が複数の走者に対して、どの走者をアウトにするかを選択する状況に関係します。
代表的なのは、次のような場面です。
- 一塁に走者がいる。
- 打者が内野ゴロを打つ。
- 遊撃手が打球を捕球する。
- 遊撃手は打者走者を一塁でアウトにする代わりに、二塁へ送球して一塁走者をアウトにしようとする。
- 一塁走者はセーフとなり、打者走者も一塁に到達する。
この場合、打者は一塁に到達していますが、通常は安打ではなく野選による出塁と記録されます。
つまり、野選のポイントは、単に打者がセーフになったかどうかではありません。
野手が通常の守備をすれば打者走者をアウトにできたか、どの走者をアウトにしようとしたかが判断の中心になります。
フィールダースチョイスは野選と同じ意味?

「フィールダースチョイス」と「野選」は、基本的に同じ意味です。
| 呼び方 | 意味 |
|---|---|
| 野選 | 野手選択の略称 |
| 野手選択 | 日本語での正式な呼び方 |
| フィールダースチョイス | 英語のFielder's Choice |
| FC | スコアブックなどで使われる略記 |
ただし、野選という言葉は、実際の試合では打者がセーフになった場面に限定して使われることもあります。
公認野球規則上の野手選択は、より広い概念です。野手が先行走者をアウトにしようとする守備を選んだ場合だけでなく、その送球を利用した走者の進塁や、守備側が無関心だったために認められない盗塁なども関係します。
2026年の公認野球規則における位置づけ
2026年度の野球規則改正は、2025年11月20日に日本野球規則委員会から公表されました。
この改正では、定義28の「フィールダースチョイス」を含む複数の規定で、「打者」という表記を「打者走者」に改めるなどの用語整理が行われています。
野選を理解する際も、打席に立つ打者と、打球を打った後に走者となる打者走者を区別することが大切です。
【成立条件】野選になる場面と具体例をわかりやすく解説
野選は、必ずしも一塁走者がセーフになったときだけに記録されるものではありません。
公認野球規則の定義や9.05、9.07などの記録規則を踏まえると、代表的なケースは次のとおりです。
具体例1:一塁走者をアウトにしようとして打者が一塁に残る
最も一般的な野選です。
一塁に走者がいる状況で打者がショートゴロを打ったとします。
遊撃手は一塁へ送球すれば打者走者をアウトにできると判断しましたが、二塁へ送球して一塁走者をアウトにすることを選択します。
ところが、二塁への送球が間に合わず、一塁走者はセーフ。打者走者も一塁に到達しました。
この場合、打者に安打は記録されず、野選による出塁となります。
具体例2:先行走者はアウトになったが、打者走者は一塁に残った
同じように一塁走者がいる場面で、打者が内野ゴロを打ちます。
野手は二塁へ送球し、一塁走者をアウトにしました。その後、打者走者は一塁に到達します。
この場合も、野手が打者走者を一塁でアウトにする代わりに、先行走者をアウトにする選択をしたプレーとして扱われます。
先行走者がアウトになったからといって、打者に安打が記録されるわけではありません。
具体例3:守備側の隙を突いて走者が進塁する
野選には、打球が絡まないケースもあります。
たとえば、打者が内野フライを打ち、野手が捕球してアウトになった直後、投手や野手が次のプレーに意識を向けている間に、一塁走者が二塁へ進んだとします。
通常の盗塁のように投球前からスタートしたわけでもなく、失策による進塁でもありません。
このように、野手が他の走者をアウトにしようとするプレーや、守備側の無関心を利用した進塁が野選として記録される場合があります。
実際に2021年4月1日の広島対阪神戦では、阪神のジェリー・サンズ選手が、打者の飛球が捕球された後、守備側の隙を突いて二塁へ進みました。
このプレーについて、翌4月5日付の日刊スポーツは、担当した公式記録員への取材を掲載しています。
記録員は、タッチアップでも通常の盗塁でも失策でもない進塁であり、守備側の隙を突いたプレーとして野選を適用したと説明しました。
この事例は、野選が内野ゴロの処理だけに限定されないことを示しています。
具体例4:盗塁を企てた走者に対して守備側が無関心だった
走者が次の塁を狙ってスタートしても、守備側が進塁を防ごうとする動きをまったく見せなかった場合があります。
この場合、盗塁は記録されず、野手選択による進塁とされることがあります。
ただし、単に送球しなかったという事実だけでは決まりません。
守備側が走者の進塁を防ぐ意思を持っていたか、試合状況や戦術的な理由なども含めて判断されます。
【徹底比較】野選とエラー・安打・盗塁の違い
野選を理解するうえで、特に混同しやすいのがエラー、安打、盗塁です。
いずれも走者が進塁したり、打者が一塁に到達したりするため、試合映像だけでは区別しにくいことがあります。
次の表で違いを整理します。
| 比較項目 | 野選(FC) | エラー(E) | 安打(H) | 盗塁(SB) |
|---|---|---|---|---|
| 基本的な意味 | 野手が守備の選択をした結果など | 守備のミス | 打者が安打で出塁 | 走者が自力で次塁を奪う |
| 打者の安打 | 原則なし | なし | あり | 打者の安打とは別 |
| 打数 | 原則1 | 原則1 | 1 | 打席結果による |
| 守備のミス | 必須ではない | あり | 必須ではない | 必須ではない |
| 主な判断材料 | 守備選択と通常の守備ならアウトにできたか | 捕球・送球などのミス | 普通の守備でアウトにできたか | 盗塁行為と守備側の対応 |
野選とエラーの違い
野選とエラーの最大の違いは、守備のミスがあったかどうかです。
野選は、野手が状況に応じてアウトにする走者を選択した結果です。
たとえば、遊撃手が一塁走者を二塁でアウトにしようと送球したものの、送球自体は正確で、走者がセーフになったとします。
打者走者が一塁に生きても、守備のミスがなければ野選となります。
一方、遊撃手が送球を大きくそれさせ、打者走者や先行走者が余分な塁を獲得した場合には、失策が記録される可能性があります。
つまり、野選とエラーは必ずしも二者択一ではありません。
最初の進塁は野選、その後の余分な進塁は失策というように、同じプレーの中で両方が記録されることもあります。
野選と安打の違い
打者が一塁に到達したからといって、必ず安打になるわけではありません。
重要なのは、野手が普通に守備をしていた場合、打者走者を一塁でアウトにできたかどうかです。
公認野球規則9.05では、先行走者をアウトにしようとした結果、その打者走者を一塁でアウトにできなかった場合でも、通常の守備なら打者走者をアウトにできなかったと記録員が判断すれば安打を記録すると定めています。
反対に、一塁へ送球していれば打者走者をアウトにできたと判断される場合は、安打ではなく野選となるのが基本です。
野選と盗塁の違い
盗塁は、走者が次の塁を奪う行為に対して記録されます。
野選は、野手の選択守備や守備側の無関心などによって進塁した場合に記録されます。
公認野球規則9.07では、守備側が盗塁を防ごうとする守備行為を示さず、無関心だった場合には、盗塁ではなく野手選択による進塁とする規定があります。
ただし、守備側に正当な戦術的理由があって二塁への送球を控えた場合などは、盗塁が認められることもあります。
たとえば、一・三塁で一塁走者が二塁へ向かったとき、守備側が三塁走者の本塁突入を防ぐために送球を控えたのであれば、単純な無関心とは判断されません。
【成績への影響】野選と打率・出塁率・自責点の関係
野選は単なるプレーの呼び方ではありません。
選手の個人成績や投手の評価にも影響します。
野選になると打率は下がる?
通常の野選で打者が一塁に到達した場合、打者には安打が記録されません。
一方、打数には1が加算されます。
打率の計算式は次のとおりです。
\[
\text{打率}=\frac{\text{安打数}}{\text{打数}}
\]
たとえば、野選になる前の成績が10打数3安打だった場合、打率は次のようになります。
\[
3\div10=0.300
\]
その後、野選で出塁すると、11打数3安打となります。
\[
3\div11=0.273
\]
このように、安打数が増えないまま打数が増えるため、打率は下がります。
なお、先行走者への守備選択があっても、通常の守備では打者走者をアウトにできなかったと記録員が判断した場合には、安打が記録される例外があります。
野選になると出塁率も下がる?
出塁率は、打者がどれだけの割合で塁に出たかを示す指標です。
NPBが公表する計算式は次のとおりです。
\[
\text{出塁率}=
\frac{\text{安打数+四球+死球}}
{\text{打数+四球+死球+犠飛}}
\]
野選による出塁は、出塁率の計算上、安打として扱われません。
そのため、分子の安打数は増えず、分母の打数だけが増えます。
結果として、野選による出塁は打者の出塁率を下げることになります。
ここが、四球による出塁との大きな違いです。
四球は打数に含まれず、出塁率の分子にも加算されますが、野選は打数に含まれ、安打にも加算されません。
野選で走者が得点すると打点はどうなる?
野選のプレーで走者がホームに生還した場合、打者に打点が認められるかどうかは、得点に至ったプレーの内容によって判断されます。
野選による得点がすべて自動的に打点になるわけではありません。
特に、野手がボールを持ちすぎたり、無用な送球をしたりした間に走者が得点した場合は、走者がそのまま走り続けていたのか、いったん止まってから守備のミスを見て走り直したのかが判断材料になります。
公認野球規則9.05(c)では、こうしたプレーについて打点の扱いを定めています。
野選による得点は投手の自責点になる?
野選と自責点の関係は、野球ファンでも誤解しやすい部分です。
野手が先行走者をアウトにしようとして打者走者を一塁に生かした場合、守備側に失策がなければ、その走者が後続打者の安打などで得点したとき、自責点の対象になります。
公認野球規則9.16(a)には、自責点の対象となる要素として、次の項目が挙げられています。
- 安打
- 犠牲バント
- 犠牲フライ
- 盗塁
- 刺殺
- 野手選択
- 四球
- 死球
- ボーク
- 暴投
つまり、野選は自責点にならない守備失策とは異なり、自責点を構成する要素の一つです。
ただし、失策などによってアウトになるはずだった走者が生き残って得点した場合や、失策によってイニングが延長された場合などは、自責点の判定が変わります。
自責点の計算では、守備側が3人の打者・走者をアウトにできる機会を得る前に発生した得点かどうかも考慮されます。
たとえば、二死から野選で打者走者が出塁し、その後の安打で生還した場合、ほかに自責点を妨げる失策などがなければ、投手に自責点が記録される可能性があります。
失策が絡んだ場合には、その失策がなかったと仮定したイニングを再構成して判断します。
【スコアの見方】野選の公式記録とFC表記・記録員の判断
野選を実際の試合記録から見分けるには、スコアブックの表記を知っておくと便利です。
野選のスコア表記は「FC」
FC
FC=Fielder's Choice
フィールダースチョイス、野手選択の略記
一般的なスコアブックでは「FC」と記載します。
たとえば、遊撃手がゴロを捕球し、二塁へ送球したものの一塁走者がセーフとなり、打者走者も一塁に残った場合、打者の打席結果をFCと記録します。
ほかの代表的な記号と比較すると、次のようになります。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| FC | 野選・野手選択 |
| E | エラー・失策 |
| H | 安打 |
| S・SB | 盗塁 |
| BB | 四球 |
| HBP | 死球 |
| WP | 暴投 |
| PB | 捕逸 |
なお、FCは野手に付く失策数を表す記号ではありません。守備選択や走者の進塁理由を示す記録上の略記です。
スコアブックの方式や記録アプリによって大文字・小文字などの表記には違いがあります。
野選は誰に記録される?
ここで重要になるのが公式記録員の存在です。
野球では、打者が一塁に到達したプレーについて、それが安打なのか、失策なのか、野選なのかを公式記録員が判断します。
公認野球規則9.01では、記録員に記録規則を適用する権限が与えられています。
そのため、同じように見えるゴロでも、打球の強さや野手の位置、送球までの時間、通常の守備でアウトにできた可能性などによって記録が異なることがあります。
特に重要なのは、次の3点です。
1. 打球を処理した野手がどの走者をアウトにしようとしたか。
2. 一塁へ送球していれば打者走者をアウトにできたか。
3. 送球や捕球に失策と判断されるミスがあったか。
野選と安打の境界は、単に映像上で走者がセーフになったかどうかだけでは決まりません。
公式記録員は、プレー全体を見て記録規則に照らした判断を行います。
野選とフォースアウトは同じ意味ではない
もう一つ混同しやすいのが、フォースアウトです。
フォースアウトとは、後続の走者が打者走者になったことなどによって、元の塁にとどまることができなくなった走者を、次の塁でアウトにするプレーです。
一方、野選は野手がどの走者をアウトにしようとしたかという守備選択や、その結果としての進塁に関係する記録です。
つまり、フォースアウトはアウトの成立方法、野選は記録上の分類という違いがあります。
野手が二塁でフォースアウトを成立させた場合でも、打者の打球に対して野手選択が行われたプレーとして扱われることがあります。
この2つは、同じプレーの中に登場することがあるものの、意味は異なります。
【プロの結論】野選を理解するために押さえたい3つの判断基準
野選を正しく理解するには、プレーの結果だけでなく、野手が何を選び、その選択が記録上どのように評価されたかを見る必要があります。
特に押さえておきたいのは、次の3点です。
1. セーフになったから安打とは限らない
野選を理解するうえで最も重要なポイントです。
打者が一塁に到達していても、通常の守備ならアウトになっていたと判断されれば、安打ではなく野選になります。
逆に、先行走者への送球が失敗しても、打者走者を一塁でアウトにすることができなかったと判断されれば安打になることがあります。
2. 野選は必ずしも守備の失敗ではない
野選は、守備側が複数の選択肢からアウトを狙う走者を決めた結果です。
そのため、野選が記録されたからといって、野手がミスをしたとは限りません。
むしろ、失点を防ぐために先行走者をアウトにしようとする合理的な判断だった可能性もあります。
3. 野選は打者と投手の成績に異なる影響を与える
野選で出塁した打者には、通常、安打が付かず打数が加算されます。
そのため打率と出塁率は下がります。
一方、野選によって出塁した走者が得点した場合、その得点は失策などがなければ投手の自責点になる可能性があります。
打者にとっては不利な記録でも、投手にとっては失点の責任が生じる場合があるという点が、野選の興味深いところです。
野球の記録は、単純なセーフ・アウトだけでなく、プレーの過程まで評価して成立しています。
【よくある質問】野選とは?に関するFAQ
Q1:野選とは簡単にいうと何ですか?
野選とは、野手が打者走者を一塁でアウトにする代わりに、先行走者をアウトにしようとする守備選択や、それに関連した走者の進塁を記録するものです。英語ではフィールダースチョイスと呼ばれます。
Q2:野選で一塁に出塁した場合、打率は上がりますか?
上がりません。通常の野選では安打が記録されず、打数だけが1増えるため、打率は下がります。
Q3:野選とエラーはどちらも守備のミスですか?
いいえ。野選は守備選択による記録であり、必ずしもミスではありません。エラーは捕球や送球などの守備上のミスが認められた場合に記録されます。
Q4:野選で出塁した走者がホームインした場合、自責点になりますか?
原則として自責点の対象です。公認野球規則9.16では野手選択を自責点の要素に含めています。ただし、失策などが絡む場合は、イニングを再構成して判断します。
Q5:野選と盗塁の違いは何ですか?
盗塁は走者が次の塁を奪う行為に対して記録されます。一方、守備側が進塁を防ごうとせず無関心だった場合などは、盗塁ではなく野選による進塁と記録されます。
Q6:野選のスコアは何と書きますか?
一般的には「FC」と記載します。Fielder's Choiceの略称で、日本語では野手選択を意味します。
Q7:野選は野手の誰かに失策として記録されますか?
いいえ。野選そのものは失策ではありません。別途、送球や捕球のミスがあって余分な進塁を許した場合には、そのプレーに対して失策が記録されることがあります。
まとめ:野選とは守備の選択を記録する野手選択のこと
野選とは、野手が打者走者ではなく先行走者をアウトにしようと選択したプレーなどを記録する「野手選択」のことです。
英語のフィールダースチョイスを略してFCと表記することもあります。
野選を理解するために覚えておきたいポイントは、次のとおりです。
- 野選は守備側がアウトにする走者を選択した結果などを記録するもの。
- 通常の野選では打者に安打が付かず、打数が1増える。
- 打率と出塁率は原則として下がる。
- エラーは守備のミスであり、野選とは異なる。
- 盗塁を企てても守備側が無関心なら野選になる場合がある。
- 野選による得点は原則として自責点の対象になる。
- スコアブックでは一般的にFCと表記する。
野選を見分ける最大のポイントは、「打者がセーフだったか」だけでなく、「野手が一塁へ送球していれば打者走者をアウトにできたか」を考えることです。
この視点を持つと、野選と安打、エラー、盗塁の違いが明確になります。
2026年現在も、公認野球規則に基づく公式記録では、プレーの結果だけでなく、その過程にある野手の選択や守備状況が重視されています。野選の仕組みを知れば、試合速報やスコアブックから、打者・走者・投手それぞれの成績をより正確に読み解けるようになります。