供託金没収は何票で起きる?2026年の選挙別金額・没収点と返還条件を徹底解説
選挙に立候補するときに必要となる「供託金」。実は、選挙に落選したからといって、必ずしも返還されないわけではありません。得票数が法律で定められた基準を下回ると、供託したお金が国や地方公共団体に没収されます。この基準が一般に「供託金没収点」と呼ばれるものです。
2026年11月現在、供託金の金額や没収点は選挙の種類によって異なります。衆議院小選挙区なら有効投票総数の10分の1、参議院選挙区なら原則として議員定数で割った有効投票数の8分の1、地方議会議員なら同じく10分の1が基準です。さらに、比例代表選挙には独自の計算方法があります。公職選挙法第92条から第95条、法務省の供託手続に関する案内をもとに、選挙別の金額、没収条件、返還手続、立候補辞退の注意点まで整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 供託金没収点:衆議院小選挙区・知事選挙・市区町村長選挙は有効投票総数の10分の1未満が原則。
- 選挙供託金の金額:国政選挙では300万円または候補者1人につき600万円、地方選挙では15万円から300万円など、選挙によって異なる。
- 返還条件:落選しても没収点以上の得票があれば原則返還対象。ただし、立候補辞退や届出の取り下げには別の没収規定がある。
【まず知っておきたい】供託金没収とは?制度の目的と基本的な仕組み

供託金没収とは、選挙に立候補する際に法務局などの供託所へ預けた金銭や国債証券が、法律上の条件に該当した場合に返還されず、国庫または地方公共団体に帰属する仕組みです。
供託金は立候補時に預ける保証金
日本の選挙では、一定の選挙に立候補する場合、公職選挙法第92条に基づいて所定の供託金を納めなければなりません。
供託できるものは現金だけではなく、規定額に相当する額面の国債証券も含まれます。供託は立候補の届出に先立って済ませる必要があり、供託を証明する書類を選挙の届出手続に使用します。
この制度の目的は、当選を争う意思がない候補者による売名目的の立候補や、無責任な候補者の乱立を抑制し、選挙の公正を確保することです。
ただし、供託金は選挙活動に使うための費用ではありません。あくまでも一定の条件を満たせば取り戻せる預け金です。
落選と供託金没収は別の問題
最も誤解されやすいのが、落選した候補者は供託金を失うという認識です。
実際には、落選しても供託金没収点以上の得票があれば返還の対象になります。反対に、当選を争ったかどうかとは別に、法律上の基準を下回れば没収されることがあります。
つまり、選挙結果を確認するときは、当選・落選だけでなく、候補者の得票数と有効投票総数、選挙区の議員定数を合わせて見る必要があります。
【2026年最新版】選挙別の供託金額と供託金没収点一覧
供託金没収点を理解するうえで欠かせないのが、公職選挙法第92条と第93条です。第92条が供託金の金額を定め、第93条が候補者の得票数に応じた没収条件を定めています。
2026年1月1日更新の愛知県選挙管理委員会の案内や自治体の選挙制度資料でも、以下の金額と計算方法が示されています。
| 選挙の種類 | 供託金額 | 供託金没収点 |
|---|---|---|
| 衆議院小選挙区 | 300万円 | 有効投票総数の10分の1未満 |
| 衆議院比例代表 | 名簿登載者1人につき600万円。重複立候補者は300万円 | 当選者数などによる計算式で没収額を算定 |
| 参議院選挙区 | 300万円 | 有効投票総数÷議員定数÷8未満 |
| 参議院比例代表 | 名簿登載者1人につき600万円 | 名簿登載者数と当選者数によって没収額を算定 |
| 都道府県知事 | 300万円 | 有効投票総数の10分の1未満 |
| 都道府県議会議員 | 60万円 | 有効投票総数÷議員定数÷10未満 |
| 指定都市市長 | 240万円 | 有効投票総数の10分の1未満 |
| 指定都市議会議員 | 50万円 | 有効投票総数÷議員定数÷10未満 |
| 指定都市以外の市・特別区の長 | 100万円 | 有効投票総数の10分の1未満 |
| 指定都市以外の市・特別区の議会議員 | 30万円 | 有効投票総数÷議員定数÷10未満 |
| 町村長 | 50万円 | 有効投票総数の10分の1未満 |
| 町村議会議員 | 15万円 | 有効投票総数÷議員定数÷10未満 |
※「未満」は基準の得票数に達していないことを意味します。基準と同数の得票であれば、原則として没収対象にはなりません。比例代表は候補者個人の単純な得票数ではなく、政党等の名簿単位で計算するため、別途確認が必要です。
衆議院小選挙区は有効投票の10分の1が基準
衆議院小選挙区選挙の供託金は300万円です。
没収点は、有効投票総数の10分の1未満。例えば、有効投票総数が20万票だった場合、没収点は2万票です。
候補者が1万9,999票以下なら300万円が没収されますが、2万票以上なら、落選していても原則として返還対象になります。
ここで重要なのは、投票率ではなく有効投票総数を基準に計算することです。投票者数や選挙人名簿登録者数をそのまま計算に使用するわけではありません。
参議院選挙区は議員定数によって基準が変わる
参議院選挙区選挙の供託金は300万円です。
没収点は、有効投票総数をその選挙区の議員定数で割り、さらに8分の1にした数です。
例えば、議員定数が6人の選挙区で有効投票総数が12万票だった場合、計算は次のとおりです。
120,000票÷6人÷8=2,500票
したがって、この例では2,500票未満になると供託金が没収されます。
なお、公職選挙法では通常選挙における議員定数を基本とし、選挙すべき議員数がその定数を超える場合には別の計算上の取り扱いが定められています。
地方議会議員選挙は議員定数を考慮する
地方議会議員選挙では、都道府県議会、指定都市議会、一般市区議会、町村議会で供託金額が異なります。
没収点は基本的に、有効投票総数を選挙区の議員定数で割り、さらに10分の1にした数です。選挙区が設けられていない場合は、議員定数を用います。
例えば、議員定数6人、有効投票総数6万票の地方議会選挙なら、供託金没収点は1,000票です。
地方議会議員選挙では、候補者数だけでなく、選挙区ごとの議員定数によって没収点が変わることが大きな特徴です。
【公職選挙法93条・94条】比例代表の供託金没収は計算方法が違う
衆議院比例代表と参議院比例代表は、選挙区選挙や地方選挙と同じように候補者個人の得票数だけで没収を判断する制度ではありません。
公職選挙法第94条では、名簿届出政党等が供託した金額と、当選した候補者数などを基準に没収額を計算する仕組みが定められています。
衆議院比例代表の供託金没収額
衆議院比例代表では、名簿登載者1人につき600万円を供託します。ただし、衆議院小選挙区との重複立候補者については300万円です。
没収額は、供託額から次の金額を差し引いて計算します。
没収額=供託額-(300万円×小選挙区で当選した重複立候補者数+600万円×比例代表の当選者数×2)
つまり、比例代表で当選者が出なかった場合や、名簿登載者数に対して当選者数が少なかった場合には、供託金の一部または全部が没収される可能性があります。
ここで注意したいのは、比例代表の供託金は候補者個人が単独で計算するものではなく、名簿を届け出た政党等の供託額を基礎に算定することです。
参議院比例代表の供託金没収額
参議院比例代表では、名簿登載者1人につき600万円を供託します。
公職選挙法第94条第3項に基づき、供託金のうち、次の計算で求められる金額が没収されます。
没収額=600万円×(名簿登載者数-当選者数×2)
例えば、名簿登載者が10人で、当選者が3人だった場合を考えます。
- 供託総額:600万円×10人=6,000万円
- 当選者数に応じた控除額:600万円×3人×2=3,600万円
- 没収額:6,000万円-3,600万円=2,400万円
この例では、2,400万円が没収され、残りの3,600万円が没収対象から外れます。
衆議院・参議院の比例代表では、候補者本人の個人票だけを見て供託金の返還額を判断できない点が、選挙区選挙との大きな違いです。
【間違えやすいポイント】供託金没収点と法定得票数との違い
供託金没収点と法定得票数は、どちらも選挙における最低得票ラインに関係する言葉ですが、法律上の目的は異なります。
供託金没収点は、預けた供託金が没収されるかどうかを判断する基準です。一方、法定得票数は、候補者が当選人となるために必要な最低得票数を定める基準です。
法定得票数は公職選挙法95条が根拠
公職選挙法第95条では、衆議院小選挙区、参議院選挙区、地方議会議員、地方公共団体の長について、それぞれ法定得票数が定められています。
それぞれの基準を比較すると、次のようになります。
- 衆議院小選挙区:没収点は有効投票総数の10分の1未満。法定得票数は6分の1以上。
- 参議院選挙区:没収点は有効投票総数を議員定数で割った数の8分の1未満。法定得票数は同じ基礎数の6分の1以上。
- 地方議会議員:没収点は有効投票総数を議員定数で割った数の10分の1未満。法定得票数は同じ基礎数の4分の1以上。
- 地方公共団体の長:没収点は有効投票総数の10分の1未満。法定得票数は4分の1以上。
没収されないのに当選できないケースがある
例えば、地方議会議員選挙で有効投票総数が6万票、議員定数が6人の場合、供託金没収点は1,000票です。
一方、法定得票数は次の計算になります。
60,000票÷6人÷4=2,500票
この場合、1,000票以上2,500票未満の得票であれば、供託金は没収されない一方、法定得票数には届きません。
つまり、供託金が返ってくることと、選挙で当選できることは別の問題です。
「供託金没収点を超えたから当選できる」という理解は誤りです。選挙結果を正しく読み解くには、両方の基準を区別する必要があります。
【返還条件と注意点】供託金はいつ戻る?立候補辞退ではどうなる?
供託金の返還は、選挙が終われば自動的に口座へ振り込まれるという仕組みではありません。法律上の没収条件に該当しないことを前提に、所定の払渡請求手続を進める必要があります。
供託金が返還される主な条件
候補者が選挙で落選していても、得票数が供託金没収点以上であれば、原則として供託金を取り戻すことができます。
一方、得票数が没収点に届かなければ、供託金は国庫または地方公共団体に帰属します。
比例代表の場合は、候補者個人の得票数ではなく、公職選挙法第94条に基づく名簿届出政党等の計算が適用されます。
立候補を辞退すると供託金は没収される?
注意したいのが、立候補辞退と供託金没収の関係です。
公職選挙法第93条第2項では、候補者の届出が取り下げられた場合や、候補者がその候補者たることを辞した場合などにも、同条第1項の没収規定を準用すると定めています。
したがって、正式に立候補した後で辞退した場合、通常の得票数による判定とは別に、供託金が没収されることがあります。
浦安市などの自治体の選挙案内でも、得票数が没収点に達しない場合と立候補辞退の場合を、供託金没収の条件として説明しています。
なお、立候補届出期間が終了した後は、原則として自由に候補者を辞退できるわけではありません。立候補の取り下げや辞退の可否は、届出の段階や選挙の種類、法律上の事情によって異なります。
立候補を検討している場合は、届出前に選挙管理委員会へ相談し、辞退に伴う供託金の取り扱いも確認しておくことが大切です。
法務省の供託手続と返還までの流れ
法務省の供託Q&Aによると、供託金の取り戻しには、供託物払渡請求書と所定の添付書類を、供託を行った供託所に提出する必要があります。
一般的な流れは次のとおりです。
- 選挙結果の確定:候補者の得票数や比例代表の没収条件を確認する。
- 供託原因消滅証明書の取得:選挙長から供託原因が消滅したことを証明する書類を取得する。
- 払渡請求書の提出:供託物払渡請求書に必要事項を記載する。
- 必要書類の添付:本人確認や代表者資格など、該当する添付書類を準備する。
- 供託所での払渡手続:審査を経て供託金の取り戻しを受ける。
特に重要なのが、供託原因消滅証明書の証明年月日です。法務省の案内では、選挙の日から次の期間を経過した後でなければ、選挙長による証明ができないとされています。
- 地方公共団体の長・議員の選挙:選挙の日から14日経過後
- 衆議院・参議院の選挙:選挙の日から30日経過後
また、個人の場合や法人格のない政党等の場合は、条件によって印鑑証明書の添付が省略できることもあります。必要書類は供託者の属性や手続方法によって異なります。
供託金の払渡請求権には消滅時効もあります。2020年4月1日以降に供託されたものについては、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年という民法上の期間が適用されます。返還対象になった場合は、長期間放置せずに手続きを進めることが重要です。
【2026年最新の選挙制度】供託金没収の理由と地方選挙の変更点
供託金制度を考える際には、単純に金額や得票数だけを見るのではなく、なぜこの制度が設けられているのかという背景も理解する必要があります。
供託金制度は候補者の乱立を抑えるための仕組み
供託金制度の基本的な考え方は、選挙に当選する意思を持たない候補者が、売名などを目的に無責任な立候補をすることを抑えることです。
選挙には、投票用紙や投票所の準備、開票作業、選挙公報の作成など、多くの公的な事務が伴います。候補者が際限なく増えれば、選挙管理にかかる負担も大きくなります。
供託金は、立候補の自由を全面的に制限するのではなく、一定の金銭的負担を設けることで、選挙制度の公正性を維持しようとする仕組みです。
2020年の法改正で町村議会にも供託金制度を導入
2026年の制度を理解するうえで押さえておきたいのが、2020年の公職選挙法改正です。
2020年6月12日に公布された改正法では、町村議会議員選挙に供託金制度が導入されました。供託金額は15万円とされ、町村議会議員選挙でも得票数が一定の基準に達しない場合に供託金が没収される仕組みになりました。
この改正は、町村議会議員選挙における選挙公営の対象拡大と合わせて行われたものです。選挙運動用自動車、ビラ、ポスターなどの公費負担を拡大する一方、立候補に伴う供託金制度も整備されました。
参議院の法案審議資料にも、町村議会議員選挙に15万円の供託金制度を導入することが明記されています。
したがって、2026年時点では町村議会議員選挙も供託金の対象です。「町村議会議員なら供託金は不要」という古い情報には注意が必要です。
供託金の高さは立候補のハードルにもなる
一方で、供託金制度には別の側面もあります。
例えば、衆議院小選挙区や参議院選挙区では300万円、都道府県知事選挙でも300万円が必要です。政治活動を続けていても、まとまった資金を準備できなければ立候補そのものが難しくなる可能性があります。
特に、政党の支援を受けにくい無所属候補や、政治活動を始めたばかりの新人候補にとって、供託金は決して小さくない負担です。
そのため、供託金制度をめぐっては、無責任な立候補を抑制する効果と、政治参加の機会を狭める可能性の両面から考える必要があります。
【プロの結論】供託金没収で失敗しないために確認すべき3つのポイント
供託金没収を正しく理解するには、次の3つを区別することが重要です。
1. 供託金額だけでなく没収点を確認する
300万円の供託金が必要な選挙でも、没収される得票基準は選挙ごとに異なります。特に参議院選挙区や地方議会議員選挙では、議員定数が計算に影響します。
選挙の種類だけで判断せず、対象となる選挙区の有効投票総数と議員定数を確認することが必要です。
2. 法定得票数と供託金没収点を混同しない
供託金が返還される基準と、当選人になるための最低得票数は別の制度です。
落選しても供託金が戻るケースはありますし、没収点を超えていても法定得票数に達せず、当選できないケースもあります。
選挙のニュースを読む際にも、この2つを分けて考えることで、候補者の得票結果を正しく理解できます。
3. 比例代表と立候補辞退には別のルールがある
比例代表では政党等の名簿単位で没収額を計算します。また、立候補を辞退した場合には通常の得票数による判定とは異なる没収規定が適用されます。
立候補を予定している人は、資金計画だけでなく、辞退した場合の法的な取り扱いや返還手続まで事前に確認しておくべきです。
供託金制度は、単なる立候補時の費用ではありません。選挙に参加するための条件であると同時に、選挙の公正性と政治参加の機会をどう両立させるかという制度上の課題を映し出しています。
【供託金没収】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:供託金没収は何票以下で起きますか?
A1:選挙の種類によって異なります。衆議院小選挙区や都道府県知事選挙、市区町村長選挙では有効投票総数の10分の1未満、参議院選挙区では有効投票総数を議員定数で割った数の8分の1未満、地方議会議員選挙では同じ基礎数の10分の1未満です。
Q2:選挙に落選しても供託金は返ってきますか?
A2:はい。落選しても、法律で定められた供託金没収点以上の得票があれば、原則として返還対象になります。ただし、比例代表では政党等の名簿単位で計算するため、個人の得票数だけでは判断できません。
Q3:立候補を途中で辞退すると供託金は返還されますか?
A3:原則として没収対象になります。公職選挙法第93条第2項では、候補者の届出の取り下げや候補者を辞した場合にも没収規定を準用しています。
Q4:供託金が返還されるのはいつですか?
A4:選挙後に供託原因消滅証明書を取得し、供託物払渡請求書などを供託所へ提出して手続きします。選挙長による証明は、地方選挙なら選挙日から14日、国政選挙なら30日を経過した後となります。
Q5:町村議会議員選挙にも供託金は必要ですか?
A5:必要です。2020年の公職選挙法改正により制度が導入され、町村議会議員選挙の供託金は15万円となっています。
まとめ:供託金没収は選挙の種類と得票基準を確認することが重要
2026年11月現在、供託金没収の仕組みは公職選挙法第92条・第93条・第94条に基づいて運用されています。
衆議院小選挙区や知事選挙、市区町村長選挙では有効投票総数の10分の1未満、参議院選挙区では議員定数を考慮した8分の1未満、地方議会議員選挙では議員定数を考慮した10分の1未満が基本的な没収基準です。
また、比例代表には政党等の名簿単位で計算する独自のルールがあり、立候補辞退や届出の取り下げにも注意が必要です。
特に重要なのは、供託金没収点と法定得票数を混同しないことです。落選しても供託金が返還される場合がある一方、没収点を超えていても当選できない場合があります。
立候補を考えている人は、供託金の準備だけでなく、選挙区の有効投票数や議員定数、辞退時の扱い、法務局での返還手続まで把握しておくことが大切です。制度を正確に理解することが、選挙への適切な参加と供託金に関するトラブルの防止につながります。