【素材と重さを徹底比較】東京2020オリンピックメダルは純金製ではない

目次

東京2020オリンピックメダルの特徴を理解するうえで、最初に押さえたいのが素材の違いです。実は、金メダルは金の塊ではありません。銀をベースに金メッキを施した構造で、銀メダルは純銀、銅メダルは銅と亜鉛の合金で作られています。

【検証資料 1】東京オリンピックメダルの当時の様子・関連報道写真(出典:Yahoo!ニュース)

2019年7月24日に発表された公式仕様によると、東京大会の金メダルと銀メダルは、夏季オリンピック史上最も重いクラスのメダルでした。直径は85mmで、厚さは最も薄い部分が7.7mm、最も厚い部分が12.1mmです。

金・銀・銅メダルの素材と重量

東京オリンピックメダル



金メダル

約556g

東京オリンピックメダル

純銀ベース+金メッキ
純銀をベースに、6g以上の金を表面にコーティング。純金製ではない。


銀メダル

約550g

東京オリンピックメダル

純銀製
銀そのものを素材として使用。金メダルのベース素材とも共通する。


銅メダル

約450g


丹銅製
銅95%・亜鉛5%の合金。純銅ではなく、赤みのある金属の風合いが特徴。



金メダルはなぜ純金ではないのか

オリンピックの金メダルは、一般に想像されるような純金の円盤ではありません。東京2020の場合、約556gの本体に純銀を使用し、表面に6g以上の金を施しています。

この構造は、メダルの大きさや重量を確保しながら、金の希少性と象徴的な輝きを表現するためのものです。金メダルの価値は、単純に本体重量556gを金の相場に掛けても算出できません。

重量が重い理由にも注目

東京2020の金メダルと銀メダルは、約556gと約550g。2016年リオデジャネイロ大会の金・銀メダルが約500gだったことと比較しても、重量の大きさが際立ちます。

ただし、重さだけでメダルの価値や品質が決まるわけではありません。金属の純度、表面加工、デザイン、製造技術、そして大会の歴史的な背景が組み合わさって、東京2020ならではの記念品になっています。

【デザインの秘密】川西純市が手掛けた「光の渦」とは?

東京オリンピックメダルのデザインを手掛けたのは、大阪市のデザイナー、氏です。2019年7月24日に大会組織委員会が発表したデザインで、400件を超える応募の中から選ばれました。

デザインの中心にあるのは、原石を磨き上げて美しい輝きを生み出すイメージです。選手が日々の努力を積み重ね、競技の頂点にたどり着く姿を、磨かれた金属の輝きに重ねています。

表面と裏面で異なるデザインの意味

- 表面:ギリシャ神話の勝利の女神ニケと、パナシナイコ競技場を描いたオリンピックの伝統的な意匠。
- 裏面:東京2020大会のオリンピックエンブレムを中心に、光が渦を巻くような立体的な形状を配置。
- 全体の印象:複雑な曲面によって光を反射させ、見る角度によって異なる輝きを生み出す構造。

裏面の渦状のデザインは、単なる装飾ではありません。光が当たると複数の方向に反射し、メダル全体が輝いて見えるよう工夫されています。JOCが2019年7月24日に紹介した発表内容でも、この立体的な形状が大きな特徴として取り上げられました。

デザインに込められた3つのテーマ





光と輝き
努力を重ねた選手が勝利によって放つ輝きを表現。




アスリートのエネルギー
競技に挑む選手と、周囲で支える人々の力を象徴。




多様性と調和
世界中の人々がつながり、異なる個性が共存する姿を表現。



川西氏のデザインは、勝者だけを称えるものではなく、そこに至るまでの努力や友情、競技を支える人々の存在にも光を当てています。

また、メダルのリボンには日本の伝統的な市松模様や、着物の色を重ねる「襲の色目」の意匠が取り入れられています。メダル本体だけでなく、身に着けたときの全体的なデザインにも日本文化が反映されていました。

【都市鉱山の全貌】約5,000個のメダルはどう作られた?

東京2020のメダル製作で最も画期的だったのが、「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」です。

都市鉱山とは、使用済みの携帯電話やパソコン、デジタルカメラなどに含まれる金属を、資源として再利用する考え方です。天然の鉱山から新たに金属を採掘するのではなく、すでに社会に存在する製品から有用な金属を回収します。

東京2020大会では、この考え方を全国規模で実践しました。2017年4月から2019年3月まで回収活動が行われ、約5,000個のオリンピック・パラリンピックメダルを製作するための金属が確保されました。

プロジェクトの最終的な実績


約78,985トン


全国の自治体による小型家電などの回収量



約621万台


回収された携帯電話


1,621自治体


プロジェクト参加自治体

最終的に確保された金属量


32kg


金


3,500kg


銀


2,200kg


銅


東京都の大会関連資料および東京2020大会の持続可能性報告書に基づく実績。

全国の1,621自治体が参加したほか、NTTドコモによる携帯電話回収や企業、学校などの協力もありました。単独の自治体や企業だけではなく、全国規模で資源を集める仕組みを構築した点が特徴です。

小型家電からメダルになるまでの製造工程



① 使用済み小型家電を回収

携帯電話、スマートフォンなどを自治体の回収ボックスや協力店舗などで集める。


② 分解・選別

集めた電子機器を分解し、金属を含む部品や素材を選別する。


③ 金属を抽出・精錬

選別した部品から金・銀・銅などの金属を取り出し、精錬して原材料にする。


④ メダルの製造

確保した金属を使用してメダルを製造。金メダルには銀をベースに金メッキを施す。


⑤ 選手に授与

完成したメダルが東京2020大会の表彰式で選手に授与された。


リサイクル金属の実態で誤解しやすいポイント

ここで注意したいのは、78,985トンという数字が、そのままメダルに使われた金属の重量を示しているわけではないことです。

これは全国で回収された小型家電などの総量です。そこから分解・選別・精錬を行い、金32kg、銀3,500kg、銅2,200kgという金属量を確保しました。回収された機器のすべてがメダルに姿を変えたわけではありません。

また、約5,000個という製作数は、オリンピックとパラリンピックを合わせた規模です。オリンピックのメダルだけで5,000個という意味ではありません。

2026年現在、プロジェクトはどうなっている?

東京都の公式案内によると、メダルプロジェクトの小型家電回収は2019年3月31日に終了しています。東京2020大会に必要な金属量を確保できたためです。

ただし、小型家電リサイクルそのものが終了したわけではありません。2026年現在も自治体や認定事業者などによる回収・リサイクルの仕組みは続いています。現在、メダルプロジェクト専用の回収活動が行われていると考えるのは正確ではありません。

【関係者・素材・実績を一覧】東京2020メダルをめぐる重要な関係

東京2020メダルは、デザイナー、自治体、回収事業者、精錬事業者、製造関係者、そして日本代表選手団が関わる大規模なプロジェクトでした。主要な関係を整理すると、次のようになります。

関連エンティティ 確認できる事実 メダルとの関係 川西純市 2019年にデザインが採用されたデザイナー オリンピックメダルのデザインを担当 東京2020組織委員会 大会準備とメダルプロジェクトを推進 プロジェクトの運営主体 環境省・東京都 小型家電回収などを支援 資源循環の仕組みを支援 全国1,621自治体 小型家電などの回収に参加 原材料の確保に協力 日本貨幣製造関係 日本の造幣技術を活用 メダル製造を担当 JOC 日本代表の公式メダリスト記録を掲載 金27・銀14・銅17を記録 日本代表選手団 東京2020で58個を獲得 大会の競技面での成果を象徴

東京都、JOC、国際オリンピック関連資料に基づく関係整理。

この関係図から見えてくるのは、メダルが単に製造会社によって作られた工業製品ではないという点です。全国からの資源提供を、自治体や企業、精錬技術者がつなぎ、最後に選手の競技成果と結び付けたプロジェクトでした。

【日本の獲得数は過去最多】金27・銀14・銅17の歴史的記録

東京2020大会は、日本代表選手団にとって記録的な大会になりました。JOCの公式メダル・入賞者一覧では、金27個、銀14個、銅17個の合計58個を記録しています。


58個


東京2020 日本代表のメダル獲得数







27


金メダル


14


銀メダル


17


銅メダル


JOC公式記録。

日本の主なメダリスト

東京2020では、個人競技だけでなく団体競技でも日本選手が活躍しました。JOCの公式記録に掲載されている代表的な選手・チームには、次のような名前があります。

- :競泳女子200m・400m個人メドレーで金メダル。
- :柔道男子66kg級で金メダル。
- :柔道女子52kg級で金メダル。
- :スケートボード男子ストリートで金メダル。
- :レスリング女子50kg級で金メダル。
- :女子ソフトボールで金メダル。

阿部一二三選手と阿部詩選手が同日に金メダルを獲得したことや、大橋悠依選手が競泳で2冠を達成したことなどは、東京大会を象徴する出来事として記憶されています。

JOCのメダリスト一覧で確認できること

JOCの「東京2020 メダル・入賞者一覧」には、競技別・種目別にメダルを獲得した選手が掲載されています。個人競技だけでなく、団体競技のメンバーも確認できます。

なお、合計58個は獲得したメダルの数であり、メダリストの人数が58人という意味ではありません。リレーや団体競技では、1つのメダルを複数の選手が獲得するためです。JOCの記録では、メダル獲得者だけでなく、4位から8位までの入賞者も含めた入賞者総数は311人となっています。

歴代の夏季オリンピックと比較すると?

東京2020の58個という数字は、過去の日本代表の成績と比較しても際立っています。

- 2004年アテネ大会:金16・銀9・銅12、合計37個
- 2012年ロンドン大会:金7・銀14・銅17、合計38個
- 2016年リオデジャネイロ大会:金12・銀8・銅21、合計41個
- 2020年東京大会:金27・銀14・銅17、合計58個
- 2024年パリ大会:金20・銀12・銅13、合計45個

東京2020は、2024年パリ大会終了時点でも日本の夏季オリンピックにおける最多メダル獲得記録です。金メダル数27個も、当時の日本の夏季五輪最多記録でした。

また、東京2020の金メダル数を基準とする一般的なメダルランキングでは、日本は世界3位。アメリカが39個、中国が38個、日本が27個という結果でした。

ただし、国別メダルランキングは金・銀・銅の数を一定の順序で集計した慣例的な比較です。オリンピック憲章は大会を国家間の競争とは位置づけておらず、国ごとの総合順位を作成しないという原則も定めています。ランキングの数字を見る際には、この違いも理解しておきたいところです。

【2026年最新】東京オリンピックメダルの現在の価値はいくら?

東京2020の金メダルや銀メダルを金属として評価した場合、いくらになるのでしょうか。

2026年11月1日時点の参考相場を使えば、金属としての理論価値を概算できます。ただし、実際の買取価格やオークション価格とは異なります。

2026年11月1日の金・銀相場を使った概算

貴金属の参考買取価格として、2026年11月1日午前9時45分更新のKuka Precious Metals Japanの公表値では、金は1g当たり約22,126円、銀は約278円です。


金メダルの金属価値

約28.6万円


銀550g+金6gと仮定した単純試算

銀メダルの金属価値

約15.3万円


純銀550gとして計算

円単位の概算。金メダルは金の含有量が6g以上であるため、実際の組成・重量により変動する。

この計算から分かるのは、金メダルが純金製ではないにもかかわらず、金と銀の両方を含むため、一定の地金価値を持つということです。

銅メダルの金属価値は?

銅メダルは約450gの丹銅製です。銅95%・亜鉛5%という構成から計算すると、銅は約427.5g、亜鉛は約22.5gとなります。

ただし、実際のスクラップ買取では、素材の確認や分離・精錬の費用、買取業者の査定基準などが影響します。単純に銅の重量だけでメダルの買取額を決めることはできません。

記念品・コレクター市場での価値は別物

オリンピックメダルには、地金とは異なる価値があります。大会の公式メダルであること、獲得した選手の実績、競技の歴史、保存状態、来歴などが収集価値に影響します。

特に東京2020のメダルは、都市鉱山から回収した再生金属を使った大会史上初の取り組みと結び付いています。そのため、一般的な金銀銅製品とは異なる歴史的背景を持っています。

2026年現在、東京2020の公式メダルに一律適用される公定の中古価格や、すべてのメダルに共通する売買価格はありません。選手本人が保有する実物の査定では、本人の競技実績や証明書類、真正性なども重要になります。

つまり、地金としての価値は相場から概算できても、オリンピックメダルとしての価値は別途評価する必要があるということです。

【よくある質問】東京オリンピックメダルに関するFAQ

Q1:東京オリンピックの金メダルは純金でできていますか?

A1:いいえ。東京2020の金メダルは純銀をベースに、6g以上の金メッキを施したものです。重量は約556gですが、すべてが金というわけではありません。

Q2:東京2020のメダルは本当に使用済み携帯電話から作られたのですか?

A2:はい。使用済み携帯電話や小型家電から金・銀・銅を抽出し、メダルの製造に活用しました。2017年4月から2019年3月までに全国1,621自治体が参加し、約5,000個のオリンピック・パラリンピックメダルに必要な金属を確保しました。

Q3:東京オリンピックの金メダルは2026年現在、いくらの価値がありますか?

A3:金属価値だけなら、2026年11月1日の参考相場による単純試算で約28.6万円です。ただし、これは銀約550gと金6gを仮定した理論値であり、公式な買取価格ではありません。大会の記念品としての価値は、選手の実績や来歴などによって別途評価されます。

まとめ:東京オリンピックメダルが2026年にも残す価値とは

東京2020オリンピックメダルは、素材、デザイン、製造工程、競技結果のすべてに特徴を持つ記念品です。

金メダルは純銀に6g以上の金メッキを施した約556gのメダル、銀メダルは純銀製の約550g、銅メダルは銅95%・亜鉛5%の丹銅製で約450g。大阪市のデザイナー川西純市氏が手掛けた光の渦を思わせるデザインには、アスリートの努力や多様性、友情への思いが込められています。

さらに、約5,000個のメダルに必要な金属を全国から集めた「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」は、1,621自治体が参加した大規模な資源循環の取り組みでした。約621万台の携帯電話を含む小型家電などから金属を回収し、メダル製作に必要な量を確保した実績は、東京2020を特徴づける重要な出来事です。

日本代表は金27・銀14・銅17の合計58個を獲得し、夏季オリンピックにおける当時の国内最多記録を更新しました。2024年パリ大会終了後も、この58個という記録は日本の夏季五輪最多として残っています。

2026年に東京オリンピックメダルを調べる際は、次の3点を判断基準にすると理解しやすくなります。

- 素材を知りたい場合:金メダルは純金ではなく、銀をベースにした金メッキ製であることを確認する。
- リサイクルの実態を知りたい場合:回収された小型家電の総量と、実際に確保された金属量を区別する。
- 現在の価値を知りたい場合:金属相場による理論価値と、公式メダルとしての収集価値を分けて考える。

東京2020のメダルは、選手の勝利を称えるだけのものではありません。全国の人々が資源を提供し、技術者が金属を再生し、選手がそのメダルを手にするまでの過程そのものが、大会の歴史の一部になっています。素材の価値を超えた、その背景こそが東京オリンピックメダルの大きな魅力です。