サウジアラビアW杯2034はどうなる?5都市15会場計画と最新課題を徹底解説
サウジアラビアワールドカップ(2034 FIFAワールドカップ)は、2024年12月11日にFIFAから開催国として正式に選定された、サウジアラビア初の男子FIFAワールドカップです。大会には48カ国が参加する予定で、当初の開催計画ではリヤド、ジェッダ、アルコバール、アブハー、NEOMの5都市に15競技場を整備する構想が掲げられています。
しかし、2026年10月現在、大会準備には新たな変化が生じています。10月4日にはロイター通信がNEOMスタジアム計画の無期限棚上げを報道。さらに10月14日には、政府系ファンドの公共投資基金(PIF)が5つの新設スタジアム計画を縮小する方向で調整しているとSemaforが伝えました。壮大な建設構想はどこまで実現するのか。開催時期、競技場、建設費用、ビジョン2030との関係から、大会の実現性を検証します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 開催決定:2024年12月11日、FIFAがサウジアラビアを2034年大会の開催国に選定。
- 当初の開催計画:5都市・15競技場で48カ国を迎える構想。リヤドに8会場、ジェッダに4会場を配置。
- 開催時期:具体的な日程は未発表。酷暑を避けるため10月から翌年4月が気候面で有力な候補となる。
- NEOM計画:2026年10月、約25億ドル規模とされたスタジアム計画の無期限棚上げが報道された。
- 計画縮小:10月14日には5競技場の建設計画を取り下げ、10会場に絞る可能性が報じられた。
- 最大の課題:巨額の投資、工期、交通・宿泊インフラ、労働者の権利、気候対策を同時に解決する必要がある。
【開催決定の理由】サウジアラビアが2034年ワールドカップを獲得した経緯
.jpg?auto=webp&format=pjpg&width=3840&quality=60)
2024年12月11日にFIFAが正式決定

サウジアラビアが2034年FIFAワールドカップの開催国に決まったのは、2024年12月11日です。
FIFAはオンライン形式で臨時総会を開催し、加盟する211のサッカー協会が参加するなか、サウジアラビアを2034年大会の開催国に選定しました。決定は拍手による承認方式で行われています。
ここで押さえておきたいのは、サウジアラビアが複数の有力候補国と競争して勝ち抜いたわけではないという点です。
FIFA理事会は2023年10月4日に2034年大会の招致手続きを開始し、開催候補をアジアサッカー連盟(AFC)とオセアニアサッカー連盟(OFC)の加盟協会に限定しました。これは2030年大会の開催地域との大陸ローテーションを考慮した措置です。
その後、サウジアラビアが単独で招致を進め、2024年7月29日に正式な招致書類を提出。11月29日にFIFAの評価報告書が公表され、12月11日の臨時総会で開催国が決定しました。
つまり、開催決定の背景には、FIFAが定めた地域別の招致条件と、サウジアラビアによる大規模な招致活動がありました。
開催を目指した最大の理由は「ビジョン2030」

開催の背景にある国家戦略が、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する「サウジ・ビジョン2030」です。
ビジョン2030は、石油依存型の経済構造から脱却し、観光、エンターテインメント、スポーツ、テクノロジーなどの産業を育成する国家改革計画です。
ワールドカップは、この政策を世界に示す絶好の機会となります。
大会開催によって期待される効果は、次のようなものです。
- 海外からの観光客増加と国際観光市場での知名度向上
- ホテル、空港、鉄道、道路などのインフラ整備
- サッカーを中心としたスポーツ産業の育成
- 海外企業の投資誘致と雇用創出
- 若年層を中心とした国内スポーツ文化の発展
- 国際的なイベント開催能力の向上
サウジアラビアは、サッカーだけでなく、F1、ボクシング、ゴルフ、各種国際大会にも積極的に投資してきました。2034年大会は、こうしたスポーツ外交の集大成として位置付けられています。
ただし、開催権の獲得と計画の実現は別問題です。招致時に提示した巨大プロジェクトを、財政状況や需要に合わせて見直す動きが出ていることは、その違いを示しています。
【開催時期・試合日程】2034年の大会は冬開催になるのか?
現時点で開幕日・決勝日は正式発表されていない
2026年10月31日時点で、2034年ワールドカップの具体的な開幕日、決勝日、グループステージの日程は発表されていません。
サウジアラビアの招致書類にも、開催時期の具体的な期間は指定されていませんでした。FIFAの開催評価報告書も、気候条件や国内外のスポーツ・文化行事を考慮して最適な開催期間を調整する必要があると指摘しています。
夏開催が難しい理由は40度を超える酷暑
サウジアラビアで6月から8月に大会を開催する場合、最大の問題になるのが気温です。
FIFAの評価資料やBBCの報道では、リヤドの6月・7月の日中気温が40度を超えることが指摘されています。屋外での試合観戦だけでなく、選手の運動能力、観客の健康、審判や大会スタッフの安全にも影響する問題です。
サウジアラビアの招致資料では、比較的過ごしやすい10月から翌年4月の平均日中気温は、開催候補都市でおおむね15〜30度とされています。
そのため、気候面だけを考えれば秋から春にかけての開催が有力です。2022年のカタール大会と同様に、欧州の通常の夏開催とは異なるスケジュールになる可能性があります。
開催時期を左右する宗教行事と国際サッカーカレンダー
開催期間を決める際には、気温だけでなく、イスラム教の宗教行事も考慮しなければなりません。
特にラマダンやハッジ(大巡礼)は、国内の生活や交通、宿泊需要に大きく関係します。ハッジの時期には世界各地から巡礼者が集まるため、国際大会の観客輸送やホテル確保との調整が必要です。
また、欧州の主要リーグや国際大会の日程との調整も避けられません。大会期間を移動すれば、クラブチームのシーズンや選手のコンディション管理に影響が及ぶためです。
したがって、冬開催が既定路線と決まったわけではありません。FIFAが各国リーグ、クラブ、代表チーム、開催国と協議したうえで、最終的な開催期間を決めることになります。
【開催都市5都市・競技場15会場】リヤドとジェッダを中心とした計画一覧
当初の開催都市は5都市に分散
サウジアラビアが2024年に提出した招致計画では、開催都市は次の5都市です。
- リヤド:首都であり、8競技場を配置する最大の開催拠点。
- ジェッダ:紅海沿岸の主要都市で、4競技場を計画。
- アルコバール:東部州の都市。アラムコ・スタジアムを配置。
- アブハー:南西部の高地に位置する都市。キング・ハーリド大学スタジアムを計画。
- NEOM:北西部の未来都市開発地域。NEOMスタジアムを計画。
15会場のうち、リヤドに8会場、ジェッダに4会場を集中させ、残る3会場を東部・南西部・北西部に分散させる構成でした。
ワールドカップスタジアム15会場の名称
2024年の招致資料に掲載された15競技場の名称と都市別の配置は以下のとおりです。
| 開催都市 | 競技場名 | 計画上の特徴 |
|---|---|---|
| リヤド | キング・サルマン国際スタジアム | 約9万2000人収容予定。開幕戦・決勝戦の開催候補 |
| リヤド | キング・ファハド・スポーツシティ・スタジアム | 既存施設の大規模改修 |
| リヤド | プリンス・モハメド・ビン・サルマン・スタジアム | キディヤ地区の新設計画 |
| リヤド | プリンス・ファイサル・ビン・ファハド・スポーツシティ・スタジアム | 既存施設の改修計画 |
| リヤド | ROSHNスタジアム | 新設計画 |
| リヤド | ニュー・ムラッバ・スタジアム | ニュー・ムラッバ開発地区の新設計画 |
| リヤド | サウス・リヤド・スタジアム | 新設計画 |
| リヤド | キング・サウード大学スタジアム | 既存施設の改修計画 |
| ジェッダ | キング・アブドゥッラー・スポーツシティ・スタジアム | 既存の主要競技場 |
| ジェッダ | キング・アブドゥッラー・エコノミックシティ・スタジアム | 新設計画 |
| ジェッダ | キディヤ・コースト・スタジアム | 新設計画 |
| ジェッダ | セントラル・ジェッダ・スタジアム | 新設計画 |
| アルコバール | アラムコ・スタジアム | 約4万7000人収容予定の新設競技場 |
| アブハー | キング・ハーリド大学スタジアム | 既存施設の改修計画 |
| NEOM | NEOMスタジアム | 約4万6000人収容予定。ザ・ライン構想との連動計画 |
この15会場構想では、既存施設の改修と新設を組み合わせることで、短期間に大会規模を拡張する設計が採用されました。
リヤドは開幕戦と決勝戦の中心地
最も重要な競技場として位置付けられているのが、リヤドのキング・サルマン国際スタジアムです。
収容人数は約9万2000人とされ、招致計画では開幕戦と決勝戦を開催する会場に指定されています。完成すればサウジアラビア最大級のスタジアムとなり、代表チームの主要拠点としても活用される構想です。
また、プリンス・モハメド・ビン・サルマン・スタジアムは、トゥワイクの断崖地形を生かした設計で注目されています。単なる競技場ではなく、都市開発と観光を組み合わせるサウジアラビアらしいプロジェクトです。
ジェッダは紅海沿岸の観光拠点
ジェッダでは、キング・アブドゥッラー・スポーツシティ・スタジアムを中心に4会場を整備する計画でした。
紅海沿岸の都市という立地を生かし、サッカー観戦と海岸観光、商業施設、宿泊施設を組み合わせた観光需要の創出が期待されています。
一方、ジェッダ周辺のキング・アブドゥッラー経済都市やキディヤ・コーストの開発計画は、2026年10月に報じられた競技場計画の縮小対象にも含まれています。都市別の会場数は、今後の再編によって大きく変わる可能性があります。
アルコバールとアブハーの役割
アルコバールは東部州の産業・経済地域に位置し、アラムコ・スタジアムが大会計画の重要な施設です。
アブハーは標高の高い地域にあり、サウジアラビアの砂漠や大都市とは異なる気候・景観を持つ開催候補地です。国内の観光資源を複数地域に広げるという意味でも、両都市の存在には意義があります。
ただし、開催都市の正式な構成や各試合の割り当ては、招致時点の計画だけで確定するものではありません。特に2026年10月の会場縮小報道を踏まえると、今後のFIFAへの計画変更申請が重要になります。
【NEOMスタジアム計画の現状】2026年10月に何が起きたのか
約25億ドルの巨大競技場が無期限棚上げに
2026年のサウジアラビアW杯準備をめぐる最大のニュースが、NEOMスタジアム計画の見直しです。
2026年10月4日、ロイター通信は、関係者2人の証言を基に、サウジアラビアがNEOMスタジアムの建設計画を無期限に棚上げする方向だと報じました。
当初の計画では、約4万6000人を収容する競技場を、未来都市開発プロジェクト「ザ・ライン」の高層構造物の上部に設置する構想でした。
中東の巨大都市開発を象徴する建築物とワールドカップを融合させるという、世界的にも異例の計画です。
MEED Projectsのデータによると、NEOMスタジアムの想定事業費は約25億ドル。同プロジェクトは建設保留として扱われ、完成予定日は設定されていませんでした。
この計画が停滞した背景には、スタジアム単体の問題だけでなく、母体となるザ・ライン全体の開発規模の縮小があります。
NEOMはビジョン2030の象徴的な巨大プロジェクトでしたが、資金配分の見直しや開発の遅延が続き、公共投資基金はより短期的な収益を見込める事業に重点を移す動きを見せています。
10月14日には5競技場の計画縮小報道
NEOMの問題は、単独の施設にとどまりません。
2026年10月14日、米メディアSemaforは、サウジアラビアの政府系ファンドである公共投資基金(PIF)が、2034年大会向けに計画していた5つの新設競技場を取り下げる方向で調整していると報じました。
報道によると、対象となるのは次の5施設です。
- NEOMスタジアム
- ニュー・ムラッバ・スタジアム
- ROSHNスタジアム
- キング・アブドゥッラー経済都市スタジアム
- キディヤ・コースト・スタジアム
報道された見直し案では、15会場から10会場へと規模を縮小し、建設する新設競技場も3施設程度に絞る方向とされています。
ただし、これは関係者の証言に基づく報道段階の情報です。PIFとサウジアラビアのスポーツ省はSemaforからの問い合わせに回答しておらず、計画変更の正式決定やFIFAによる承認が確認されたわけではありません。
15会場計画が10会場になれば何が変わる?
もし報道された見直し案が実行されれば、影響は建設費用だけではありません。
NEOM、ジェッダ周辺、リヤドの一部開発計画が対象となるため、当初の5都市構成そのものにも影響が及びます。
競技場の数を減らす場合には、試合の割り当て、観客輸送、宿泊施設の配置、チームの移動計画などを再検討する必要があります。
一方、会場数を減らすこと自体が大会の失敗を意味するわけではありません。必要以上の巨大施設を建設せず、既存施設を改修して大会後も利用できる形にすることは、財政面でも合理的な判断になり得ます。
重要なのは、縮小後の会場数で48カ国の大会運営に必要な試合数、観客席、練習施設、移動時間を確保できるかどうかです。
【建設費用と総事業費】2034年W杯にいくら必要なのか
15会場関連プロジェクトの事業価値は約227億ドル
サウジアラビアW杯の費用を考えるうえで、注目されている数字が約227億ドルです。
2026年10月4日のロイター通信によると、中東の建設プロジェクトを調査するMEED Projectsは、15競技場の建設・改修関連プロジェクトの総額を約227億ドルと評価しています。
この数字は、競技場整備に関連するプロジェクトの市場推計額です。政府が正式に公表した最終予算や、大会開催に必要なすべての費用を合算した確定額ではありません。
また、NEOMスタジアムだけでも約25億ドルという推計があり、巨大建築プロジェクトの費用負担がいかに大きいかが分かります。
IMFが示した約260億ドルのインフラ投資推計
もう一つ参考になるのが、国際通貨基金(IMF)が2025年のサウジアラビア経済審査で示した分析です。
IMFの報告書では、2034年大会に向けたインフラ投資を約260億ドルと推計しています。
こちらは競技場だけでなく、リヤドの地下鉄、空港、宿泊施設などの拡張も含む、より広い範囲の投資見積もりです。
したがって、227億ドルと260億ドルを単純に比較して、どちらかが誤っていると判断することはできません。対象となる事業の範囲が異なるためです。
ワールドカップ開催による経済効果はどれほどか
IMFが紹介した民間部門の推計では、大会がサウジアラビアのGDPに与える寄与は90億〜140億ドルと見込まれています。
ただし、これは将来の経済効果に関する予測であり、確実に得られる利益ではありません。
観光客の増加、ホテルの稼働率、航空需要、飲食・小売業の売り上げ、雇用創出などが想定どおりに進めば、経済効果は広がります。
一方で、巨額の競技場を建設しても、大会終了後に利用者が少なければ維持費が財政負担として残ります。
IMFも、過去の国際スポーツ大会で発生した利用率の低いインフラ、いわゆる「ホワイトエレファント」問題を教訓として挙げています。
2034年大会の経済的な成功を判断するには、開催期間中の売り上げだけでなく、2035年以降に施設がどの程度利用されるかまで見る必要があります。
【2026年最新の開催準備状況】実現性を左右する5つの課題
1. アラムコ・スタジアムは具体的な進捗を公開
2026年の準備状況を判断するうえで、具体的な進捗が確認できる施設がアルコバールのアラムコ・スタジアムです。
同スタジアムの公式サイトでは、2026年9月時点の建設進捗写真が公開されています。収容人数は約4万7000人で、2026年の完成を予定している施設です。
ロイター通信も、同スタジアムについて2026年末までの完成を見込み、翌年1月に初試合を開催する予定だと報じています。
さらに、サウジアラビアは2027年のAFCアジアカップ開催国でもあります。2034年大会に向けて、国際大会の運営、交通、警備、宿泊、観客誘導を実際に検証できる機会になります。
NEOMのように計画の見直しが報じられるプロジェクトがある一方、アラムコ・スタジアムのように建設進捗を定期的に公開する施設もあります。すべての競技場が同じ状況にあるわけではありません。
2. 交通・宿泊インフラを短期間で整備できるか
48カ国が参加するワールドカップでは、選手、監督、スタッフ、報道関係者、観客が世界各地から訪れます。
招致計画では、15競技場に加え、134カ所のトレーニング施設、72面の練習ピッチ、約23万室のホテル客室、16の国際空港などが計画上の整備目標として示されていました。
ただし、これらは招致時点の計画値であり、2026年時点ですべて完成しているという意味ではありません。
特に、開催都市が複数の地域に分かれる場合、航空便の確保、都市間移動、鉄道・道路の接続、試合終了後の観客輸送などが重要になります。
競技場だけが完成しても、周辺交通が混雑すれば大会全体の評価は下がります。観客が安全かつ快適に移動できる仕組みを作れるかどうかが問われます。
3. 労働者の権利と人権問題
サウジアラビアW杯をめぐっては、建設労働者の待遇や人権問題も国際的な議論の対象です。
アムネスティ・インターナショナルは2024年6月と11月の報告書で、サウジアラビアの招致に関する人権保護策について重大な懸念を表明しました。
主な論点は次のとおりです。
- 移住労働者の賃金未払いと労働条件
- 建設現場における健康・安全管理
- 過酷な気温下での屋外労働
- 労働者の移動や転職に関する権利
- 大規模開発に伴う住民の立ち退き問題
- 女性や性的少数者を含む人々への差別や権利保護
- 表現の自由や人権活動家をめぐる問題
ヒューマン・ライツ・ウォッチも2024年12月の報告書で、サウジアラビアの巨大開発事業に関わる移住労働者の賃金、安全、移動の自由などについて問題を指摘しています。
こうした問題は、スタジアムの完成度だけでは評価できない大会運営の根幹に関わります。
建設工事のスピードを優先するあまり労働者の安全が犠牲になれば、国際的な批判は強まります。FIFAと開催国には、労働環境の改善、独立した監視、苦情申し立て制度、違反に対する実効性のある対応が求められます。
4. 気候変動と環境負荷への対応
サウジアラビアは高温で乾燥した地域が多く、競技場の冷房設備や給水、電力供給が重要な課題になります。
特に屋外スタジアムでは、観客席だけでなく、選手の練習環境、移動経路、スタッフの作業場所なども含めた暑熱対策が必要です。
また、大規模な建設工事に伴う資材調達、エネルギー消費、水資源の利用、廃棄物処理も無視できません。
FIFAが掲げる持続可能性の基準を満たすには、単に最新型の空調設備を導入するだけでは不十分です。大会後も維持可能なエネルギー供給と施設運営の仕組みが必要です。
5. 巨大プロジェクトの見直しと財政のバランス
NEOMやニュー・ムラッバなどの計画縮小報道が示しているのは、サウジアラビアがすべての巨大開発を当初の構想どおり進めるのではなく、優先順位を見直しているということです。
公共投資基金(PIF)は、国内の経済成長に向けて多くの大型事業を支援してきました。しかし、すべての事業を同時に進めれば、資金、人材、建設能力が分散します。
ワールドカップ開催に必要な施設を優先し、長期的な採算が見込めないプロジェクトを縮小することは、財政管理の観点から合理性があります。
ただし、開催計画の変更をFIFAや関係各国に適切に説明し、競技運営に支障が出ないようにする必要があります。
【プロの結論】サウジアラビアW杯2034は成功するのか?計画の実現性を見極めるポイント
2026年10月31日時点での評価は、開催権そのものは確定している一方、招致時の施設計画には再編の動きがあり、実行段階の課題が顕在化しているというものです。
サウジアラビアには、巨額の投資能力、国家主導のインフラ整備、スポーツ産業への強い政策的支援があります。これらは大会を実現するうえで大きな強みです。
一方、NEOMスタジアムの棚上げや5会場の計画縮小報道は、招致時に掲げた壮大な構想を、そのまま実現することが難しい可能性を示しています。
今後のニュースで注目すべき判断基準
- FIFAの公式更新:15会場構想が維持されるのか、10会場案などの新計画が承認されるのか。
- NEOMの正式な扱い:計画再開、代替会場への変更、開催都市からの除外のどれになるか。
- 主要競技場の完成:キング・サルマン国際スタジアムやアラムコ・スタジアムなどの工期が守られるか。
- 大会日程の発表:酷暑、ラマダン、ハッジ、国際サッカーカレンダーをどう調整するか。
- 交通・宿泊設備:48カ国の大会規模に対応する輸送力と宿泊供給が確保されるか。
- 労働環境の改善:移住労働者の権利や安全を守る仕組みが実際に機能するか。
とりわけ重要なのは、計画発表の華やかさではなく、完成した施設の数、建設進捗、運営体制、労働環境といった実績を確認することです。
15会場から10会場への縮小が正式に決まったとしても、十分な設備と運営能力が確保されれば大会は成立します。逆に、15会場を維持しても、交通や宿泊、労働者の安全に問題が残れば成功とは呼べません。
2034年大会の本当の評価は、開幕戦や決勝戦の華やかさだけではなく、開催国が世界中のサッカーファンを安全に迎え、大会終了後にも地域社会へ価値を残せるかどうかで決まります。
【サウジアラビアワールドカップ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:サウジアラビアワールドカップは何年に開催されますか?
A1:2034年に開催される予定です。FIFAは2024年12月11日にサウジアラビアを正式な開催国に選定しました。
Q2:2034年ワールドカップの開催都市はどこですか?
A2:当初の招致計画では、リヤド、ジェッダ、アルコバール、アブハー、NEOMの5都市です。ただし、2026年10月には5つの新設競技場を取り下げる方向との報道があり、最終的な開催都市構成は今後の計画変更に左右されます。
Q3:サウジアラビアW杯の試合日程は決まっていますか?
A3:2026年10月31日時点で、開幕日や決勝日などの具体的な日程は正式発表されていません。夏の酷暑を避ける必要があり、10月から翌年4月までの期間が気候面で有力な候補です。
Q4:2034年大会は何カ国が参加しますか?
A4:48カ国が参加する予定です。サウジアラビアは、48カ国制となったワールドカップを単独開催する初めての国となる見込みです。
Q5:NEOMスタジアムは中止になったのですか?
A5:2026年10月4日のロイター通信は、約4万6000人収容のNEOMスタジアム計画が無期限に棚上げされたと報じました。さらに10月14日には、NEOMを含む5会場の建設計画を見直す方向との報道もありました。ただし、正式な中止決定やFIFAによる会場変更の承認とは区別する必要があります。
Q6:サウジアラビアW杯の建設費用はいくらですか?
A6:MEED Projectsの推計では、15競技場の建設・改修関連プロジェクトの総額は約227億ドルです。また、IMFは競技場だけでなく空港、地下鉄、宿泊施設などを含むインフラ投資を約260億ドルと推計しています。いずれも対象範囲の異なる推計値で、最終的な大会総事業費ではありません。
Q7:サウジアラビアW杯は本当に開催できるのでしょうか?
A7:開催国の決定はすでに確定しており、大会そのものは2034年に向けて準備が進められています。ただし、競技場計画の縮小、建設工期、交通・宿泊インフラ、人権問題、気候対策などの課題があります。今後のFIFAによる正式な計画更新と、主要施設の建設実績が実現性を判断する重要な材料になります。
まとめ:サウジアラビアW杯2034の今後は会場再編と準備の実績が鍵
サウジアラビアワールドカップは2034年の開催が決まっており、48カ国が参加する大規模大会として準備が進められています。当初の計画は5都市・15競技場という壮大なものでした。
しかし、2026年10月にはNEOMスタジアムの無期限棚上げや、5つの新設競技場を取り下げる可能性が報じられました。これは、ビジョン2030を象徴する巨大開発が、実現性や投資効率を重視する段階に入ったことを示す動きです。
大会の成功を左右するのは、建築デザインの先進性や投資額の大きさだけではありません。必要な競技場を期限までに完成させ、観客が安全に移動できる交通網を整え、労働者の権利を守り、大会後にも施設を有効活用できるかどうかです。
今後はFIFAへの会場計画の再提出、NEOMの扱い、キング・サルマン国際スタジアムなど主要施設の建設状況、そして開催日程の発表が重要な焦点になります。
2034年のサウジアラビアW杯は、国家の巨大プロジェクトを実際の国際スポーツ大会として完成させられるかが問われる大会です。2026年以降の計画変更と建設実績こそ、その行方を判断する最も重要な材料となります。
主な参照資料・報道
- FIFA公式発表・2034年大会開催国決定資料
- サウジアラビア2034招致公式資料・開催都市および競技場計画
- ロイター通信・2026年10月4日 NEOMスタジアム計画の棚上げ報道
- Semafor・2026年10月14日 5競技場の計画縮小報道
- IMF・2025年サウジアラビア経済審査
- アラムコ・スタジアム公式建設進捗情報
- アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチの人権・労働問題に関する報告
- FIFA評価報告に関する開催時期・気候面の報道