【疑問を検証】新語・流行語大賞が「流行っていない」と言われる理由

目次

新語・流行語大賞が発表されるたびに、インターネット上では「その言葉は聞いたことがない」「自分の周りでは誰も使っていない」といった反応が見られます。

なぜ、毎年話題になる賞でありながら、実際の流行と選考結果にギャップが生まれるのでしょうか。主な理由は3つあります。

理由1:SNSによって流行が細分化された

新語流行語

以前は、テレビの人気番組や新聞報道が全国的な話題を作る大きな役割を担っていました。同じ番組を見て、同じニュースを聞く人が多かったため、一つの言葉が世代を超えて広がりやすい環境でした。

現在は、X、TikTok、YouTube、Instagramなど、情報を得る場所が人によって異なります。おすすめ表示も個人の興味に左右されるため、ある世代で爆発的に広まった言葉が、別の世代にはほとんど知られていないという状況が起きます。

2025年の選考委員を務めたパトリック・ハーラン氏も、選評で選考委員それぞれの情報源が異なり、全員がすべての新語を把握していたわけではないという趣旨を説明しています。

これは選考委員だけの問題ではなく、社会全体の情報環境が変わったことを示しています。

理由2:全国的な使用頻度だけで決まる賞ではない

新語・流行語大賞は、国民全員にアンケートを実施し、使用回数が多い順に選ぶ人気投票ではありません。

編集部が『現代用語の基礎知識』から候補を整理し、選考委員会が社会的な意味や時代性などを踏まえて議論します。

そのため、全国民が日常的に使用する言葉でなくても、特定の分野で大きな社会的影響を与えた言葉が選ばれることがあります。

例えば「緊急銃猟/クマ被害」は、日常会話で誰もが使うフレーズというより、野生動物による人身被害や自治体の対応など、社会問題を象徴する言葉です。

つまり、選考結果をそのまま全国民の言葉の使用頻度ランキングとして解釈すると、違和感が生じやすくなります。

理由3:選考時期と実際の流行時期にずれがある

ノミネート30語が発表されるのは11月上旬ですが、選考作業はそれより前に進められます。

2025年の選考過程について、大塚陽子編集長は、候補の絞り込みや受賞語の選考が10月末に行われるスケジュールを説明しています。

そのため、11月や12月に急速に広まった言葉は、その年の候補に入りにくくなります。年末に発表される賞であっても、必ずしも大みそかまでの流行をすべて反映しているわけではありません。

「流行っていない」という批判は正しいのか

この疑問に対する答えは、何を基準に流行を判断するかによって変わります。

日常会話での使用頻度や全国的な認知度を基準にすれば、選考語に違和感を持つ人がいるのは自然です。一方、その年のニュースや社会問題を象徴する言葉を選ぶ賞として見れば、必ずしも誰もが日常的に使う必要はありません。

新語・流行語大賞は、言葉の人気投票というより、その年の社会を象徴する言葉の記録です。

この違いを理解しておくと、自分が知らなかった言葉が選ばれた場合も、なぜその言葉が社会的に注目されたのかという視点で受賞結果を読み解けます。

【徹底比較】三省堂「今年の新語2026」と新語・流行語大賞の違い

年末に注目される言葉の賞として、もう一つ押さえておきたいのが、三省堂の「辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2026』」です。

名前が似ているため混同されやすいものの、両者は主催者も選考目的も異なります。特に、2026年は三省堂の公募期間が10月31日までとなっているため、同じ時期に検索する人が増える可能性があります。

今年の新語2026は辞書に載る言葉を選ぶ企画

三省堂は2026年9月1日から、「今年の新語2026」の一般公募を開始しました。

募集対象は、2026年を代表したり象徴したりする日本語で、今後、国語辞典に見出しとして採録されてもおかしくない言葉です。

重要なのは、2026年に新しく生まれた言葉だけが対象ではないことです。以前から存在する言葉でも、使用者や使用する場面が広がり、今年特に使われるようになった言葉であれば候補になります。

2026年の選考では、『新明解国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』『三省堂国語辞典』『大辞林』の4つの国語辞書を対象とし、辞書の編集委員や編集部などの専門家が選考します。

選ばれたベスト10には、国語辞典としての語釈が付けられる点も特徴です。

2026年の公募期間と選考委員

三省堂の公式発表によると、2026年の募集期間は9月1日から10月31日までです。

応募方法は特設サイトの応募フォーム、Xへの投稿、指定書店の応募箱です。対象となる書店には、紀伊國屋書店新宿本店や三省堂書店池袋本店などが含まれています。

2026年の選考委員として公表されている主な専門家は次のとおりです。

  • 小野正弘氏:『三省堂現代新国語辞典』編集委員。国語史、語彙、文字、意味などを専門とする日本語学者。
  • 飯間浩明氏:『三省堂国語辞典』編集委員。辞書編集や日本語の語彙・用法に詳しい国語学者。

応募者の中から抽選で50人に1,000円分の図書カードネットギフトが贈られる企画も実施されています。選考発表会の日程は、9月1日の募集開始時点では後日発表とされていました。

2つの賞を比較すると何が違う?

比較項目 新語・流行語大賞 今年の新語2026
主催 自由国民社 三省堂
主な目的 その年の世相や社会現象を記録 今後の辞書に載る可能性のある新語を選ぶ
選考対象 社会的に注目された新語・流行語 使用が広がり、定着が期待される日本語
選考主体 選考委員会 辞書編集の専門家
主な結果 ノミネート30語、トップテン、年間大賞 ベスト10
解説 世相や受賞背景を踏まえた選評 国語辞典としての語釈
2026年の候補 10月31日時点で未公表 10月31日まで一般公募

両者の最も大きな違いは、言葉を選ぶ目的にあります。

新語・流行語大賞は、言葉がその年の社会でどのような役割を果たしたかを重視します。一方、三省堂の「今年の新語」は、その言葉が今後も日本語として使われ、辞書に掲載される可能性があるかを重視します。

例えば、SNSで一時的に大きく話題になった言葉は、新語・流行語大賞では注目されても、辞書に載るほど定着するとは限りません。反対に、以前からある言葉が今年になって一般社会に広く浸透した場合は、三省堂の選考でも重要な候補になり得ます。

流行した言葉を記録する賞と、日本語として残る言葉を見極める企画。両者は競合するものではなく、異なる角度から日本語の変化を捉える取り組みです。

【よくある質問】新語流行語に関するFAQ

Q1:新語・流行語大賞2026のノミネート30語はいつ発表されますか?
A1:2026年10月31日時点では正式な発表日は未公表です。2025年は11月5日に発表されましたが、2026年も同じ日になるとは決まっていません。自由国民社の公式発表を確認してください。

Q2:新語・流行語大賞の年間大賞は一般投票で決まりますか?
A2:現在は一般投票の得票数だけで決まる仕組みではありません。『現代用語の基礎知識』に掲載された用語などを基礎に候補を絞り、選考委員会が議論と評価を重ねてトップテンと年間大賞を選びます。

Q3:ユーキャン新語・流行語大賞という名称はなくなったのですか?
A3:2025年の第42回から特別協賛社がユーキャンからT&D保険グループに変更され、賞の名称も変更されました。ユーキャン新語・流行語大賞は2004年から2024年まで使用されていた名称です。

Q4:歴代の年間大賞とトップテンはどこで確認できますか?
A4:自由国民社の新語・流行語大賞公式記録や、各年の『現代用語の基礎知識』で確認できます。1984年から1990年は新語・流行語の部門別受賞、1991年以降は年間大賞を中心に振り返ると分かりやすくなります。

Q5:三省堂の「今年の新語2026」と同じ言葉が選ばれることはありますか?
A5:選考基準が異なるため、同じ言葉が両方に選ばれる可能性はあります。新語・流行語大賞は世相や話題性を、三省堂は辞書に掲載できる日本語としての定着性を重視します。

まとめ:新語・流行語大賞2026は公式発表と選考背景に注目

新語・流行語大賞2026は、10月31日時点でノミネート30語、トップテン、年間大賞、正式な発表日がいずれも未公表です。前年の2025年は11月5日に候補30語、12月1日に年間大賞が発表されましたが、今年の日程は公式発表を待つ必要があります。

1984年に始まったこの賞は、『現代用語の基礎知識』を基礎として、時代を象徴する言葉を選び続けてきました。2004年から2024年まではユーキャンが協賛し、2025年からはT&D保険グループが特別協賛社となっています。

また、2025年の年間大賞「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」は、政治的な節目だけでなく、働き方や社会の価値観を考えるきっかけにもなりました。

【プロの結論】流行語は「知っているか」だけで判断しない

新語・流行語大賞をより深く楽しむには、次の3つの視点が役立ちます。

第一に、公式候補と予想候補を区別すること。発表前の30語一覧や年間大賞予想は、正式発表と同じ扱いにしないことが大切です。

第二に、言葉が生まれた背景を確認すること。単なるSNSの流行なのか、政治・経済・社会問題を象徴しているのかによって、その言葉が持つ意味は変わります。

第三に、歴代受賞語と比較すること。過去の言葉を振り返れば、日本社会の関心がどのように移り変わってきたかが見えてきます。

特に、2026年はSNS発のミーム、AI関連の言葉、政治・経済の表現、生活や気候に関する言葉など、異なる分野の話題を横断して見ることが重要です。ただし、話題性があることと、正式にノミネートされることは別問題です。

2026年の候補30語が発表されたら、まず公式一覧を確認し、トップテンと年間大賞が決まるまでの選考過程にも注目したいところです。受賞語だけでなく、選ばれた言葉の背景まで読み解くことが、この賞を楽しむ本当の醍醐味です。