【暴力団排除条例と2019年改正】みかじめ料を要求・支払いした場合の罰則
みかじめ料をめぐる法律上のポイントは、要求する側と支払う側では、適用される規制や責任が異なるということです。
「暴力団員が要求することは禁止されている」という話と、「支払った事業者も処罰される場合がある」という話は、別々の法律・条例の仕組みとして理解する必要があります。
暴力団対策法では要求する行為が禁止されている

「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」、いわゆる暴力団対策法では、指定暴力団員が所属組織の威力を示して不当な金品を要求する行為を禁止しています。
同法第9条では、暴力的要求行為を27類型に分けて規制しています。
その中には、次の行為が含まれます。
- 縄張り内で営業する事業者へのみかじめ料の要求
- 用心棒料などの不当な要求
- 寄付金や賛助金を名目とした不当な金品要求
- 物品購入やサービス提供の強要
違反行為が確認された場合、公安委員会などは中止命令や再発防止命令を出すことができます。命令に違反した場合には刑事罰の対象となります。
支払う側も処罰される?暴力団排除条例の仕組み
各都道府県では、暴力団排除条例によって、事業者が暴力団員などに不当に利益を与える行為を規制しています。
ただし、すべての都道府県で、すべての支払いに直ちに刑事罰が科されるわけではありません。
一般的な規制では、違反の疑いがある場合に調査を行い、是正勧告や公表などの行政措置を実施する仕組みがあります。
一方、特定の繁華街や業種を対象とする特別強化地域では、支払う側にも直接的な罰則を設けている条例があります。
2019年の東京都暴力団排除条例改正で何が変わった?
大きな転換点となったのが、2019年の東京都暴力団排除条例の改正です。
2019年6月19日、東京都議会で改正案が可決・成立し、同年10月1日に施行されました。
改正の背景には、繁華街で飲食店や風俗店などが暴力団員にみかじめ料や用心棒料を支払っている実態がありました。
東京都は、暴力団員による徴収行為だけでなく、事業者側からの利益供与も取り締まるため、特別な規制を導入しました。
主な変更点は次のとおりです。
1. 都内の主要な繁華街を「暴力団排除特別強化地域」に指定。
2. 対象地域の特定営業者が暴力団員にみかじめ料や用心棒料を渡す行為を禁止。
3. 暴力団員がその金品を受け取る行為も禁止。
4. 違反者に対する刑事罰を新設。
対象となるのは、歌舞伎町、銀座、六本木などを含む、都内22区市の繁華街に設けられた特別強化地域です。地域内の対象となる飲食店、風俗営業、性風俗関連特殊営業などが規制対象になります。
対象となる特定営業者が違反した場合、改正時に定められた罰則は1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。2025年6月1日から刑法上の刑名が変更されたため、2026年現在の表現では1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となります。
暴力団員側にも対応する罰則が設けられています。また、事業者が自ら違反を申告した場合、刑の減軽または免除が可能となる自首減免規定もあります。
なお、2019年に全国一律で、すべての事業者に同じ刑罰が導入されたわけではありません。東京都以外にも類似の規制を設けた自治体がありますが、対象地域、対象業種、行政措置、刑事罰の範囲は条例によって異なります。
みかじめ料をめぐる関係者と法律の関係
ここまでの内容を整理すると、みかじめ料をめぐる主な関係は次のようになります。
| 関係する主体・制度 | 主な関係・行為 | 法的な位置付け |
|---|---|---|
| 暴力団・指定暴力団員 | 営業者に金品を要求する | 暴力団対策法による規制 |
| 飲食店・風俗店 | 営業を認めてもらう名目で金品を渡す | 暴力団排除条例による利益供与の規制 |
| 用心棒を提供する者 | 店舗のトラブル解決などを請け負う | 用心棒料の要求・利益供与として規制対象となる場合がある |
| 暴力追放運動推進センター | 相談、助言、被害回復などを支援する | 暴力団排除活動を支える公的な連携機関 |
| 警察・公安委員会 | 不当要求の捜査、調査、中止命令などを行う | 法律・条例に基づく取締り |
この関係から分かるのは、みかじめ料問題が単なる店舗と個人の金銭トラブルではないということです。暴力団への資金流入を防ぎ、事業者が安心して営業できる環境を守るための社会的な取り組みでもあります。
過去に支払った場合も罰則の対象になる?
過去にみかじめ料を支払った経験があるからといって、すべての事業者が自動的に逮捕されるわけではありません。
適用される条例、営業地域、支払った経緯、相手が暴力団関係者であることの認識、要求を受けた状況などによって判断が異なります。
特に、脅迫や威圧によって支払いを強制されていた場合には、その事情が重要になります。
東京都の条例には、自主的な申告によって刑の減軽・免除を受けられる制度があります。福岡県などでも、過去の利益供与を自ら申告し、関係を断ち切ろうとする事業者への支援策が設けられています。
支払いを続けている場合も、隠し続けるのではなく、警察や暴力追放運動推進センターに早期相談することが大切です。
【みかじめ料を警察に相談する方法】窓口・証拠・対応の流れ
みかじめ料の要求を受けた場合、警察への相談は、実際に暴力や営業妨害が発生してからでなければできないものではありません。
警察庁も、暴力団問題では早期相談や通報が重要であり、警察や暴力追放運動推進センターなどへの相談を呼び掛けています。
相談できる主な窓口
1.最寄りの警察署・都道府県警察本部
みかじめ料の要求、脅迫、嫌がらせ、営業妨害などについて相談できます。
相手が暴力団員を名乗っている場合や、組織の名前を出して金銭を要求している場合は、その情報も伝えてください。
2.警察相談専用電話「#9110」
緊急の事件・事故ではないものの、警察に相談したい場合に利用できる窓口です。
身の危険が迫っている場合や、暴力行為が発生している場合は、相談電話ではなく110番通報をしてください。
3.暴力追放運動推進センター
各都道府県には、暴力団排除活動を支援する暴力追放運動推進センターがあります。
相談内容に応じて、専門的な助言や弁護士との連携、被害回復に向けた支援などを受けられる場合があります。
4.弁護士・弁護士会
すでに支払いを続けている場合や、契約・金銭の返還・損害賠償などの問題がある場合は、民事介入暴力に詳しい弁護士への相談も有効です。
東京弁護士会では、みかじめ料の徴収や支払いを拒否した事業者への嫌がらせに関する支援を行っています。
警察に相談する前に準備したい情報
相談するときは、分かる範囲で次の情報を整理しておくと、状況を説明しやすくなります。
- 要求された日時と場所
- 相手の氏名や特徴、名乗った組織名
- 要求された金額や名目
- 支払いを求められた頻度
- 脅迫や嫌がらせの内容
- 電話、メッセージ、請求書などの記録
- 過去に支払った場合は金額と支払い履歴
すべての情報を揃えるまで相談を待つ必要はありません。手元にある資料だけでも、まず警察に相談してください。
また、証拠を集めるために危険な場所へ行ったり、相手を刺激するような行動を取ったりすることは避けましょう。
相談した後はどうなる?
相談内容や状況によって対応は異なりますが、警察では、要求行為の違法性や相手の組織的な関係を確認し、必要に応じて捜査や行政命令などを検討します。
例えば、指定暴力団員による不当要求については、暴力団対策法に基づく中止命令などが発出される場合があります。
また、危害を受けるおそれがある場合には、警察による保護措置や警戒活動が検討されます。
東京都の暴力団排除条例にも、暴力団排除活動を行う事業者などへの保護措置が定められています。
大切なのは、店舗だけで問題を抱え込まないことです。経営者だけでなく、従業員の安全も含めて組織的に対応する必要があります。
【みかじめ料とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:みかじめ料を1回だけ支払っても違法になりますか?
A1:1回だけでも、暴力団員に対する不当な利益供与に該当する場合があります。継続的な支払いでなければ問題ないというわけではありません。適用される条例や支払いの経緯によって法的な判断は異なります。
Q2:みかじめ料を支払うと必ず逮捕されますか?
A2:必ず逮捕されるわけではありません。一般的な暴力団排除条例では、勧告や公表などの行政措置が中心となる場合があります。一方、東京都などの特別強化地域では、対象となる営業者に刑事罰が設けられています。地域や業種、支払いの事情を確認する必要があります。
Q3:みかじめ料の相場は月額いくらですか?
A3:全国共通の相場はありません。店舗の所在地や業態、要求の名目などによって異なります。警視庁の相談事例には月額5万円を要求されたケースがありますが、平均額を示す数字ではありません。
Q4:みかじめ料を拒否したら報復されますか?
A4:嫌がらせや営業妨害、脅迫などを受ける可能性はあります。ただし、拒否したすべての事業者が被害に遭うわけではありません。安全を優先し、拒否の方法や今後の対応を警察と相談してください。
Q5:過去に支払ったみかじめ料を返してもらえますか?
A5:状況によっては、損害賠償請求などによって被害回復を図れる可能性があります。過去の支払い記録や要求の証拠を保存し、警察や民事介入暴力に詳しい弁護士に相談してください。
Q6:飲食店以外の一般企業もみかじめ料を要求されますか?
A6:要求の対象は飲食店や風俗店に限りません。小売店や一般企業などでも、場所代、協賛金、広告費、物品購入などの名目で不当な要求を受ける可能性があります。名目ではなく、要求の実態で判断することが大切です。
まとめ:みかじめ料を支払わないための判断基準と今後の対応
みかじめ料とは、暴力団などが縄張り内で営業する事業者に対して、場所代や用心棒代、営業を認める対価などの名目で要求する金品です。
語源には諸説ありますが、現在の社会問題として重要なのは、営業上の付き合いや保護を装った不当要求が、暴力団の資金源になっているという点です。
今回解説した重要事項を整理します。
- 意味: 営業を認める対価や用心棒代などの名目で要求される不当な金品。
- 語源: 「三日締め」や「見ヶ〆」に関連する説があるものの、確定していない。
- 相場: 全国共通の金額はなく、個別の要求事例を一般的な料金として扱うことはできない。
- 拒否した場合: 嫌がらせや脅迫などのリスクがあるため、単独で交渉しない。
- 法律: 暴力団対策法と各都道府県の暴力団排除条例によって規制されている。
- 支払う側の責任: 地域や業種によって勧告・公表・刑事罰などの対象になる場合がある。
- 相談先: 警察、暴力追放運動推進センター、民事介入暴力に詳しい弁護士。
【プロの結論】金額の大小ではなく、要求の実態で判断する
みかじめ料問題で見落とされやすいのは、要求される金額が少額でも、事業者と反社会的勢力との関係が継続するきっかけになり得ることです。
「少しだけなら問題ない」「一度だけ付き合えば済む」という判断は、結果的に継続的な要求につながる可能性があります。
また、2019年の東京都暴力団排除条例改正に象徴されるように、暴力団への資金流入を防ぐ取り組みは、要求する側だけでなく利益を提供する側にも規制を及ぼす方向で進められてきました。
2026年現在、事業者に求められるのは、不当要求を個人の交渉力だけで解決しようとしないことです。
過去に支払ってしまった場合でも、今後の関係を断ち切るための相談や支援制度があります。要求を受けた時点で警察や暴力追放運動推進センターに相談し、従業員と店舗の安全を確保しながら対応することが、被害の拡大を防ぐための現実的な方法です。
暴力団に資金を提供しないことは、個々の店舗を守るだけでなく、地域の健全な経済活動と安全な商業環境を守ることにもつながります。