紅の豚の飛行機は実在した?サボイアS.21とマッキM.33のモデルの真相を2026年徹底解剖
映画『紅の豚』でポルコ・ロッソが操縦する真紅の飛行艇「サボイアS.21」。水面を滑るように離陸し、アドリア海の上空を駆け抜ける姿に、実際に存在した飛行機なのかと疑問を持った人も多いのではないだろうか。
実は、サボイアS.21には興味深い秘密がある。イタリアには同じ名前の実在する飛行艇が存在したものの、映画に登場する機体とは外観が大きく異なるのだ。劇中のデザインに強い影響を与えたのは、1925年のシュナイダー・トロフィーに出場した実在のレーシング飛行艇「マッキM.33」だった。さらに、カーチスとの戦いで破損した後、フィオによって改修される後期型にも、航空技術を踏まえた細かな変化が盛り込まれている。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
サボイアS.21の正体: 同名の実在機は存在するが、ポルコの愛機そのものは宮崎駿監督がデザインした架空の飛行艇。 本当のデザインモデル: 単葉機のマッキM.33が外観の重要なモチーフ。実在するサボイアS.21は複葉機だった。 後期型の秘密: フィオの改修によってエンジンや主翼が変更され、サボイアS.21Fとして模型でも区別されている。 ライバル機との関係: カーチスR3C-0にも1925年のシュナイダー・トロフィー優勝機という実在のモデルがある。 2026年最新情報: ファインモールドの模型シリーズが現在も展開され、11月1日にはジブリパークで『紅の豚』の野外上映も予定されている。
【実在する?】ポルコの愛機サボイアS.21と本物の飛行機の意外な関係

最初に答えを整理すると、ポルコが乗るサボイアS.21は、実在した機体をそのまま再現したものではない。実在する航空機の名称と、別の飛行艇を参考にしたデザインを組み合わせた架空の機体である。
この混同が生まれた背景には、宮崎駿監督の航空機への深い関心と、少年時代に目にした飛行艇の記憶がある。
実在したSIAI S.21とは?
イタリアの航空機メーカーSIAIが1921年のシュナイダー・トロフィーに向けて開発したのが、実在するSIAI S.21だ。
こちらは上下2枚の主翼を持つ複葉飛行艇で、映画のサボイアとはシルエットが大きく違う。胴体の上に支柱を設け、その上部にエンジンを搭載する構造を採用していた。
エンジンにはアンサルド・サン・ジョルジョ4E-14が使用され、出力は約300馬力。推進式プロペラを備えた、当時としては意欲的な高速競技機だった。
しかし、実機は操縦が難しく、シュナイダー・トロフィーの本番ではパイロットのグイド・ジャンネッロが病気になったこともあり、出場を取りやめている。つまり、映画のようにレースで華々しい活躍をした機体ではない。
この実在機と映画の機体の違いは、三鷹の森ジブリ美術館が掲載した模型製作者へのインタビューでも紹介されている。製作者の矢野雅幸氏も、本物のS.21は二枚翼で、宮崎監督が描いた機体とは印象が違うと説明している。
ポルコの飛行艇に近いのはマッキM.33
では、劇中のサボイアS.21は何をモデルにしているのか。
その答えが、イタリアの航空機メーカー、マッキが製造した「マッキM.33」である。
マッキM.33は1925年のシュナイダー・トロフィーに出場した実在の競技用飛行艇。実在するSIAI S.21とは違い、主翼が1枚の単葉機で、胴体上部にエンジンを配置する独特のシルエットを持っていた。
この機体の外観は、映画のサボイアS.21とよく似ている。特に、低い船体、上部に配置されたエンジン、操縦席周辺の形状などに共通する特徴が見られる。
米国の航空専門誌『スミソニアン・エア&スペース』も、宮崎監督が少年時代の記憶に残っていたマッキM.33をもとに、ポルコの飛行艇をデザインした経緯を紹介している。
つまり、名前は実在するS.21、姿はマッキM.33を参考にしたもの。この二つの機体の関係こそ、紅の豚の飛行機を理解する最大のポイントだ。
【実機比較】サボイアS.21・マッキM.33・カーチスR3C-0の違い
『紅の豚』に登場する飛行艇を実在機と照らし合わせると、宮崎監督が当時の航空技術をどのように作品へ取り込んだのかが見えてくる。
特に重要なのが、ポルコの愛機、実在するマッキM.33、そしてライバルのカーチスR3C-0の関係だ。
実在機と劇中機の関係一覧
シュナイダー・トロフィーで何が起きたのか
ここで重要になるのが、1920年代の航空技術を競ったシュナイダー・トロフィーだ。
この大会は1913年に創設された水上機の国際速度競技会で、各国の航空機メーカーが最新技術を投入する舞台となった。水上から離陸し、水面を飛行するという条件があるため、陸上機とは異なる設計上の工夫が必要だった。
1925年10月26日に米国ボルティモアで開催された大会では、カーチスR3C-2が優勝。操縦したのは米陸軍航空隊のジミー・ドーリットルで、平均速度は約374km/hに達した。
一方、イタリアから出場したマッキM.33は、ジョバンニ・デ・ブリガンティの操縦で平均271km/hを記録し、3位に入った。イタリア空軍の公式機体解説にも、この結果が記録されている。
実在するS.21は1921年の大会に出場できず、マッキM.33は1925年に3位、カーチスR3C-2は同年に優勝した。この歴史を知ると、映画のポルコとカーチスの対決に、当時のイタリアとアメリカの航空技術競争が重ねられていることが分かる。
なお、劇中のカーチスR3C-0は、実在したR3C-2をそのまま再現した機体ではない。作品の世界観に合わせて戦闘機としてアレンジされている点も押さえておきたい。
実在するR3C-2は、陸上機と水上機の両方に変更できる構造を持ち、主翼に冷却用ラジエーターを組み込むなど、当時の先進技術を取り入れていた。スミソニアン国立航空宇宙博物館の資料にも、1925年の優勝記録と機体の特徴が掲載されている。
【航空技術を解説】飛行艇と水上機の違い・構造と仕組み
『紅の豚』の飛行シーンが印象的なのは、単に飛行機が美しく描かれているからではない。水面を走り、波を切り、機体が浮き上がるまでの動きに、実際の飛行艇の仕組みが反映されているからだ。
まず理解したいのは、「飛行艇」と「水上機」は同じ意味ではないということだ。
飛行艇と水上機は何が違う?
水上機は、水面から離着水できる航空機の総称として使われる言葉だ。その中には飛行艇とフロート水上機がある。
飛行艇は、機体の胴体そのものが船のような形になっている。つまり、胴体が浮力を生み出す船体の役割を果たす。
一方、フロート水上機は通常の飛行機の胴体の下に、独立した浮き(フロート)を取り付けた構造だ。飛行機本体ではなく、下部の浮きによって水面に浮かぶ。
この違いは、米国のスミソニアン国立航空宇宙博物館が紹介する飛行艇の歴史でも解説されている。
飛行艇はなぜ水面から飛び立てるのか
飛行艇の底面には、船のような形状が採用されている。水面に接する部分は、離水時に水の抵抗を受けながら機体を前進させる役割を担う。
特に重要なのが、船底に設けられる段差構造「ステップ」だ。
飛行艇が高速で水面を滑走するとき、船底と水面の間に発生する水の吸着や抵抗を減らし、機体が水面から離れやすくするために設けられている。
離陸までの流れは次のとおりだ。
エンジンを始動する
プロペラが回転し、機体を前進させる推力を生み出す。
水面を滑走する
船体が水面を走り、速度を上げていく。
揚力が増加する
主翼の周囲に生まれる空気の流れによって揚力が増し、機体が浮き上がる。
水面から離れる
船体が水面から離れ、通常の飛行状態へ移行する。
この一連の動きは、劇中のサボイアが水面を滑走する場面にも表現されている。
1920年代の飛行艇が魅力的な理由
1920年代は、航空機の速度と性能が急速に進歩していた時代だった。
まだ空港や滑走路が十分に整備されていない地域では、水面を滑走路として利用できる飛行艇は大きな可能性を持っていた。
ただし、飛行艇は船体を持つ分、重量や水の抵抗への対応が必要になる。高速競技機では、船体の形状、主翼の設計、エンジンの冷却方法など、複数の技術を組み合わせる必要があった。
宮崎監督が描いた飛行艇の魅力は、こうした技術的な制約を感じさせながら、飛行機を単なる機械ではなく、自由を象徴する存在として描いているところにもある。
【前期型・後期型を比較】サボイアS.21Fはフィオの改造でどう変わった?
サボイアS.21には、映画前半に登場するオリジナルの試作戦闘飛行艇と、後半に登場するフィオの改修後の機体という2つの姿がある。
この違いは単なる外観上の演出ではない。カーチスとの戦闘で損傷した機体を、フィオが設計者として再構築するという、物語上の大きな転換点でもある。
前期型はどんな飛行艇?
前期型は、ポルコが空中海賊を相手に賞金稼ぎとして活動していた頃の愛機だ。
真紅の塗装と単葉の主翼、胴体上部に配置されたエンジンが特徴。作品の中では、扱いの難しい試作機でありながら、ポルコの卓越した操縦技術によって性能を発揮している。
この機体はカーチスとの空中戦で大きな損傷を受け、ミラノのピッコロ社へ運ばれることになる。
後期型ではエンジンと主翼を刷新
修理を担当するのは、ピッコロ親父の孫娘フィオ・ピッコロだ。
フィオは若い設計者ながら、ポルコの飛行艇を大胆に改修する。エンジンを換装し、エンジンナセルや主翼の形状を変更。さらに、主翼の取り付け角度にも手を加えている。
ファインモールドの公式製品説明でも、映画後半のサボイアS.21Fについて、エンジンと主翼の刷新、フィオ専用の特設コクピットが再現ポイントとして紹介されている。
後期型の特徴は、単純に新品の部品へ交換しただけではなく、機体全体の設計を見直したことにある。
前期型と後期型の見分け方
S.21Fの「F」はフィオの頭文字?
後期型を調べると、必ずといってよいほど話題になるのが「S.21F」という名称だ。
ファンの間では、改修を担当したフィオの名前から「F」が付けられたという解釈が知られている。
ただし、ファインモールドの公式製品説明では、後期型をS.21Fと表記しているものの、アルファベットFの由来までは説明していない。
少なくとも、実在したイタリアのSIAI S.21に存在する歴史的な正式派生型という意味ではない。映画の設定に基づく改修後の機体を識別する名称として理解するのが適切だ。
また、エンジンの換装も注目ポイントだ。映画では新しいエンジンのシリンダーヘッドに「GHIBLI」の刻印が描かれている。現実の航空機技術を思わせる細かな演出であり、機体の改修を単なる修理ではなく、本格的な性能向上として見せている。
【2026年最新情報】紅の豚の飛行機プラモデルと関連イベント
2026年10月時点でも、『紅の豚』の飛行機は航空機ファンや模型愛好家から関心を集めている。
特に人気なのが、ファインモールドがスタジオジブリとの企画で展開するサボイアS.21シリーズだ。映画の前期型と後期型をそれぞれ立体化しているため、実際のデザインの違いを確認する資料としても役立つ。
紅の豚のプラモデルはどれを選ぶべき?
主な製品は1/72と1/48の2種類のスケールで展開されている。
それぞれの特徴を整理すると次のとおりだ。
サボイアS.21試作戦闘飛行艇
1/72・FJ1
映画前半のポルコの愛機を再現。初めて模型を作る人や、オリジナルの赤い飛行艇を楽しみたい人に向いている。
公式希望小売価格:2,200円(税込)
サボイアS.21F後期型
1/72・FJ3
フィオによるエンジン換装や主翼変更、特設コクピットを再現。映画後半の機体を再現したい人向け。
公式希望小売価格:2,640円(税込)
サボイアS.21 1/48
1/48・FG1
1/72より大きなスケールで、機体内部やエンジンも再現。細部の工作や塗装を楽しみたい人におすすめ。
公式希望小売価格:3,850円(税込)
サボイアS.21F 1/48
1/48・FG3
映画後半の改修型を大きなスケールで再現。換装エンジンや主翼の変更をじっくり観察できる。
公式希望小売価格:3,850円(税込)
このほか、カーチスR3C-0の模型や、宮崎監督の原作漫画『飛行艇時代』に登場するフォルゴーレ号も商品化されている。
ファインモールドは2025年5月にもサボイア関連のプラモデル4製品の再生産を発表している。2026年10月時点では、メーカーの公式ラインアップに各種キットが掲載され、販売店でも取り扱いが確認できる。ただし、商品ページへの掲載と実際の在庫状況は異なるため、購入前の確認が必要だ。
模型選びで失敗しないためのポイント
サボイアの模型を選ぶ際は、次の3点を確認したい。
- 映画前半の姿を再現したい人: FJ1またはFG1。
- フィオの改修後を再現したい人: FJ3またはFG3。
- 大きなサイズで細部を楽しみたい人: 1/48シリーズ。
特に注意したいのは、同じサボイアという商品名でも、前期型と後期型では主翼やエンジン周辺の形状が異なること。パッケージの名称と製品番号を確認すると、購入間違いを防げる。
2026年11月1日にはジブリパークで映画上映も
2026年の『紅の豚』関連情報として注目したいのが、ジブリパークの野外上映会&コンサートだ。
ジブリパークの公式発表によると、2026年11月1日(日)に、愛・地球博記念公園の大芝生広場ステージで『紅の豚』が上映される。
このイベントで同作が上映されるのは初めて。主題歌を担当し、劇中でジーナを演じた加藤登紀子さんのコンサートも予定されている。
当日の予定は次のとおりだ。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 16:00 | 開場 |
| 17:00〜17:30 | 加藤登紀子さんのコンサート |
| 17:30〜19:05 | 『紅の豚』上映 |
入場無料の事前抽選制で、申し込み期間は9月20日から28日までだった。10月時点では受付を終了している。
作品公開から長い年月が経過しても、映画館やイベントで改めて鑑賞できる機会が生まれている。飛行艇の描写を大画面で楽しみたいファンにとっても、注目の企画だ。
【よくある質問】紅の豚の飛行機に関するFAQ
Q1:紅の豚のサボイアS.21は本当に実在した飛行機ですか?
A1:同じS.21という名称の飛行艇は実在した。ただし、実在するSIAI S.21は複葉機で、映画に登場する赤い単葉飛行艇とは形状が異なる。ポルコの機体は、実在機の名前とマッキM.33を参考にしたデザインを組み合わせた架空の飛行艇だ。
Q2:サボイアS.21の本当のモデルはマッキM.33ですか?
A2:そうだ。マッキM.33は1925年のシュナイダー・トロフィーに出場したイタリアの実在機である。宮崎監督が少年時代に見た飛行艇の記憶が、劇中のサボイアのデザインにつながっている。
Q3:サボイアS.21の前期型と後期型は何が違いますか?
A3:後期型はフィオの改修によってエンジンが換装され、主翼の形状や取り付け角度も変更されている。さらにフィオが乗るための特設コクピットが設けられた。模型ではS.21F後期型として区別されている。
Q4:カーチスR3C-0も実在する飛行機ですか?
A4:劇中のR3C-0という機体設定は、実在するカーチスR3C-2をもとにしたものだ。実在するR3C-2は1925年のシュナイダー・トロフィーで優勝し、ジミー・ドーリットルが操縦した。
Q5:飛行艇と水上機は同じものですか?
A5:厳密には異なる。飛行艇は船のような胴体そのものが水に浮く構造。一方、フロート水上機は通常の飛行機の胴体に独立した浮きを取り付けている。水上機はこれらを含む広い呼び方だ。
Q6:サボイアS.21のプラモデルは2026年も購入できますか?
A6:ファインモールドの公式ラインアップには、1/72と1/48の前期型・後期型が掲載されている。2026年10月時点でも販売店で取り扱いが確認できるが、在庫や価格は店舗によって異なる。特に塗装済み完成品と組み立て式キットは区別して探したい。
まとめ:紅の豚の飛行機は実在機の歴史と宮崎駿の想像力が融合した傑作
ポルコ・ロッソの愛機サボイアS.21は、実在した飛行艇の名前を持ちながら、その姿は宮崎駿監督が独自に生み出した架空の航空機だ。
実在するSIAI S.21は複葉機であり、劇中の単葉機に近いデザインを持つのはマッキM.33。さらに、ライバルのカーチスR3C-0にも、シュナイダー・トロフィーを制したカーチスR3C-2という実在のモデルが存在する。
そして、フィオが改修したサボイアS.21Fには、エンジン換装や主翼の再設計など、機械としての進化が盛り込まれている。
この作品の飛行艇が特別なのは、史実の航空機を忠実にコピーしたからではない。1920年代の航空技術や競技機の歴史を土台にしながら、実在機にはない美しさと物語性を与えているからだ。
飛行機の歴史に興味があるなら、実在するSIAI S.21、マッキM.33、カーチスR3C-2を見比べてほしい。模型を楽しみたいなら、前期型と後期型を並べるのも面白い。
「飛ばねぇ豚はただの豚だ」というポルコの生き方を象徴する真紅の飛行艇。その魅力は、現実の航空史と宮崎監督の想像力が交差するところにある。