コレオシークエンスとは?2026-27年のルール・採点方法とステップとの違いを徹底解説
フィギュアスケートを観戦していると、選手が大きく脚を広げたり、片脚を高く伸ばしたり、氷上すれすれの姿勢で滑ったりする場面があります。こうした複数の動きを音楽に合わせて組み合わせ、プログラムの表現力を引き立てる振付要素が「コレオシークエンス」です。主にフリースケーティング(フリー)で使用され、スパイラル、イナバウアー、スプレッドイーグル、ハイドロブレーディングなどが代表的な動きとして挙げられます。
2026-27年シーズンは、国際スケート連盟(ISU)の採点基準や振付要素に関する規定にも変更があります。特に、コレオシークエンスの基礎点が3.50点になったことや、新たにコレオスピンが導入されたことは、観戦するうえで押さえておきたいポイントです。ステップシークエンスとの違いからGOEの評価基準まで、最新ルールを踏まえて整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 意味: コレオシークエンスは、2種類以上の異なるスケーティング動作を組み合わせる振付要素。
- 採点: 2026-27年の基礎点は3.50点。難易度レベルではなく、GOE(出来栄え点)によって評価される。
- 最新ルール: 2026-27年からコレオスピンが新設され、振付要素の評価体系が拡充された。
【基本知識】コレオシークエンスとは?意味とフリースケーティングでの役割

コレオシークエンス(Choreographic Sequence)とは、フィギュアスケートのプログラムに振付上の見せ場を作るための技術要素です。
ISUのシングルスケーティング規則612では、音楽やプログラムのコンセプトに調和する要素として位置付けられています。
最大の特徴は、少なくとも2種類の異なるスケーティング動作を組み合わせることです。
具体的には、次のような動作が使用されます。
- スパイラル
- アラベスク
- スプレッドイーグル
- イナバウアー
- ハイドロブレーディング
- 2回転以下のジャンプ
- スピン
これらの動作をステップやターンでつなぎ、一連の振付として構成します。
フリースケーティングにおける位置付け
シングル競技のフリースケーティングでは、シニアの男女ともにコレオシークエンスが必要な要素の一つです。
ISUが公表する2026-27年シーズンのプログラム構成では、シニアの男女はジャンプ6要素、スピン3要素、ステップシークエンス1要素、コレオシークエンス1要素を組み合わせて演技します。
ジュニアではステップシークエンスが構成要素から外れる一方、コレオシークエンスは引き続き含まれます。
また、コレオシークエンスには決められた滑走パターンがありません。直線、円形、蛇行など、選手や振付師がプログラムに合わせて構成できます。
ステップシークエンスのように特定のパターンを満たすことよりも、異なる動きを一つの流れとして見せることが特徴です。
技術審判員はどこからどこまでを認定する?
コレオシークエンスは、技術審判員(テクニカルパネル)が振付動作の始まりと終わりを識別します。
最初の振付動作から最後の振付動作までが、一つの要素として扱われます。
また、シークエンス内に含まれる規定上のジャンプやスピンなどは、通常の独立した要素としてコールされず、別の要素枠も消費しません。
ここが、ジャンプやスピンを単独の技術要素として実施する場合との大きな違いです。
【徹底比較】コレオシークエンスとステップシークエンス・コレオスピンの違い
観戦中に混同しやすいのが、コレオシークエンスとステップシークエンスです。
どちらも氷上を移動しながら複数の動作を組み合わせますが、採点の仕組みと技術的な目的が異なります。
2026-27年シーズンの規則を基準に比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | コレオシークエンス | ステップシークエンス | コレオスピン |
|---|---|---|---|
| 英語表記 | Choreographic Sequence | Step Sequence | Choreographic Spin |
| 略号 | ChSq1 | StSq | ChSp1 |
| 主な目的 | 振付・表現 | ステップやターンの技術 | 音楽に合わせた振付的な回転 |
| 主な動作 | スパイラル、イナバウアーなど | ターン、ステップ、方向転換 | 連続した回転 |
| 主な条件 | 2種類以上の異なる動き | 規定のステップ・ターンと特徴 | 3回以上の連続回転 |
| 難易度レベル | なし | レベル1〜4など | なし |
| 評価方法 | 固定基礎点+GOE | レベル別基礎点+GOE | 固定基礎点+GOE |
| 2026-27年基礎点 | 3.50点 | レベルにより異なる | 3.50点 |
※シングルスケーティングの2026-27年シーズンを基準とした比較です。基礎点はISUのスケール・オブ・バリューに基づきます。
ステップシークエンスは技術的な難しさを評価する
ステップシークエンス(StSq)は、ターンやステップを組み合わせて滑る技術要素です。
難しいターンを正確に実施できるか、左右両方向の回転を取り入れているか、身体の動きを効果的に使用しているかなどが評価されます。
2026-27年シーズンでは、難易度レベルが基礎点に反映され、レベル4を獲得すれば4.10点の基礎点になります。
つまり、ステップシークエンスは技術的な特徴を積み重ねることで、より高い基礎点を得られる仕組みです。
コレオスピンは2026-27年に登場した新要素
コレオスピン(Choreographic Spin)は、2026-27年シーズンから導入された新しい振付要素です。
通常のスピンのように回転するだけでなく、音楽やプログラムのコンセプトに合った振付として演技を彩ります。
主な条件は次のとおりです。
- 片方または両方のブレードを使用する。
- 3回以上の連続した回転を行う。
- 基本姿勢・非基本姿勢のどちらも認められる。
- 足替えは任意で、複数回行うこともできる。
- 固定基礎点が設定され、GOEのみで評価される。
コレオシークエンスが複数の異なる滑走動作を組み合わせる要素なのに対し、コレオスピンは回転動作そのものを振付として成立させる要素です。
【代表的な動き】スパイラル・イナバウアー・スプレッドイーグル・ハイドロブレーディング
コレオシークエンスを見分けるうえで重要なのが、実際に使用される動きの特徴です。
それぞれの技を知っておくと、演技の見どころが格段に増えます。
スパイラル:片脚を高く伸ばして滑る
スパイラルは、片脚で滑りながら、もう一方の脚を後方や側方などに高く伸ばす動作です。
上体の柔軟性や脚の保持力、滑走中のバランスが求められます。
脚の高さだけでなく、姿勢を崩さずに滑り続けられるか、エッジのコントロールが安定しているかも見どころです。
イナバウアー:上体の反りと両脚の開きが特徴
イナバウアーは、両脚を前後に開き、足のエッジを異なる方向に使いながら滑る動作です。
上体を大きく後方に反らせる表現が有名ですが、上体を反らすこと自体が必須条件ではありません。
脚の開き方とエッジワークによって成立するため、背中を反らす姿勢だけで判断しないことがポイントです。
スプレッドイーグル:両脚を横に開く滑走姿勢
スプレッドイーグルは、両脚を左右に開き、つま先を外側に向けた状態で滑る動作です。
両足のエッジを使いながら、身体を安定させて滑る必要があります。
音楽の盛り上がりに合わせて取り入れられることもあり、演技のダイナミックさを演出する動きとして知られています。
ハイドロブレーディング:氷面すれすれの低い姿勢
ハイドロブレーディングは、身体を大きく傾け、膝を深く曲げながら低い姿勢で滑る動作です。
片手を氷面に近づけたり、身体全体を横方向に倒したりするため、非常に印象的な見せ場になります。
高度なエッジコントロールと身体のバランスが求められます。
ただし、これらの技は一つだけでコレオシークエンスになるわけではありません。少なくとも2種類の異なる動作を組み合わせ、一つの振付要素として成立させる必要があります。
【採点方法を解説】コレオシークエンスの基礎点とGOEはどう決まる?
コレオシークエンスの採点で押さえたいのが、基礎点とGOE(Grade of Execution)の関係です。
通常のステップシークエンスやスピンとは違い、コレオシークエンスには難易度レベルによる基礎点の変化がありません。
2026-27年の基礎点は3.50点
ISU Communication No.2786で示された2026-27年シーズンのスケール・オブ・バリューでは、コレオシークエンスの基礎点は3.50点です。
前シーズンの2025-26年は3.00点だったため、0.50点の引き上げとなりました。
この変更は、コレオシークエンスの採点を理解するうえで重要です。
また、ChSq1という表記の末尾にある「1」は、ステップシークエンスのレベル1を意味するものではありません。コレオシークエンスにはレベル1〜4の区分がないためです。
GOEはマイナス5からプラス5まで
GOEは、実施した技の出来栄えを評価する仕組みです。
評価は−5から+5までの11段階で、プラス評価なら基礎点に加点され、マイナス評価なら減点されます。
2026-27年のコレオグラフィック要素では、GOEの1段階につき0.50点が加算または減算されます。
コレオシークエンスの基礎点3.50点を例にすると、次のような計算になります。
| GOE | 計算 | 要素の得点 |
|---|---|---|
| +5 | 3.50+2.50 | 6.00点 |
| +3 | 3.50+1.50 | 5.00点 |
| +1 | 3.50+0.50 | 4.00点 |
| 0 | 3.50+0 | 3.50点 |
| -1 | 3.50-0.50 | 3.00点 |
| -3 | 3.50-1.50 | 2.00点 |
| -5 | 3.50-2.50 | 1.00点 |
※GOEの数値は説明用の計算例です。実際の得点は審判員の評価を集計して決定されます。
この仕組みから分かるのは、コレオシークエンスでは難しい技を何種類入れたかだけでは得点が決まらないということです。
音楽との調和や動作の流れ、演技全体の完成度が評価を左右します。
2026-27年のGOE評価基準は6つ
ISU Communication No.2769では、コレオグラフィック要素のプラスGOE評価について、次の6項目が示されています。
1. 音楽に合致し、プログラムのコンセプトや性格を反映している。
2. 創造性がある。
3. エネルギー、流れ、実施の質を保ちながら、無理なく動作できている。
4. 方向や滑走パターンに変化がある。
5. 動作が明確で、正確性が高い。
6. 全身を十分に使い、優れた集中力とコントロールを示している。
原則として、評価項目を1つ満たせばGOE+1、2つなら+2、3つなら+3という形で、プラス評価の出発点が決まります。
+4や+5を得るためには、最初の2つの重要項目を満たすことも求められます。
さらに、実施中に減点対象となるミスがあれば、開始時点のGOEは+4を超えられません。
つまり、難しい姿勢を取り入れるだけでなく、音楽に合わせて自然につなぎ、全身を使って表現することが高評価への鍵です。
プログラムコンポーネンツとの違いにも注目
フィギュアスケートでは、技術要素の得点(TES)とは別に、プログラム全体の表現や構成を評価するプログラムコンポーネンツ(PCS)があります。
2026-27年のシングルでは、次の3項目が評価対象です。
- Composition(構成)
- Presentation(表現)
- Skating Skills(スケーティング技術)
コレオシークエンス自体のGOEと、プログラム全体のPCSは別の採点です。
そのため、コレオシークエンスの出来栄えが優れていても、それだけでプログラム全体の評価が決まるわけではありません。
【2026-27年最新ルール】ISUの変更点と今シーズンの注目ポイント
2026-27年シーズンは、振付要素に関する規定が拡充されました。
ISUの公式資料を時系列で整理すると、変更の流れが分かります。
| 時期 | 公式資料・変更 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2026年3月18日 | ISU Communication No.2769 | 振付要素のプラスGOE評価基準を公表 |
| 2026年5月5日 | ISU Communication No.2788 | 難易度・GOE評価に関する2026-27年の基準 |
| 2026年6月2日 | ISU Communication No.2786 | 2026-27年の基礎点一覧を公表 |
| 2026年7月15日 | Technical Panel Handbook | 技術審判員向けの2026-27年ハンドブックを公開 |
| 2026年10月8日 | ISU Q&A 3 | ジャンプコンビネーションなどの追加説明 |
※公表日と適用開始日は資料によって異なります。2026-27年の公式資料はISUおよび各国連盟の規則資料で確認できます。
注目点1:コレオスピンが新設された
今シーズンの大きな変化は、コレオスピンという新しい振付要素が登場したことです。
従来のスピンとは別に、音楽に調和した振付的な回転を独立した要素として評価できるようになりました。
3回以上の連続回転が条件で、基礎点は3.50点です。
これにより、振付を評価する要素の幅が広がっています。
注目点2:コレオシークエンスの基礎点が上昇
2025-26年の3.00点から、2026-27年は3.50点へ変更されました。
ただし、基礎点が上がったからといって、演技の質に関係なく高得点になるわけではありません。
最終的な得点はGOEによって上下します。
注目点3:振付の質をより具体的に評価
Communication No.2769では、音楽との一致、創造性、滑走の流れ、方向の変化、全身のコントロールなど、プラス評価の判断材料が整理されました。
特に、音楽とプログラムのコンセプトを反映しているかどうかは、重要な評価項目です。
単に難しい姿勢を連続して見せるのではなく、動作そのものが演技の物語や音楽の流れに結び付いていることが求められます。
【観戦ガイド】コレオシークエンスの見分け方と注目すべきポイント
実際の演技でコレオシークエンスを見分けるには、いくつかのポイントがあります。
1. 複数の異なる動きが連続しているか
最初に注目したいのは、動作の種類です。
例えば、スプレッドイーグルからイナバウアーへ移行し、その後スパイラルに入るような構成なら、異なる動作が組み合わされていることが分かります。
一つの姿勢を長く保持するだけでは、コレオシークエンスの条件を満たしません。
2. 動作の間に不自然な停止がないか
コレオシークエンスは、複数の動きをつないで一つの流れを作る要素です。
動作と動作の間に大きな途切れがなく、滑らかに次の姿勢へ移行できているかを確認しましょう。
3. 音楽の盛り上がりと動作が一致しているか
音楽の強弱に合わせて動きの大きさや速度を変えたり、印象的なフレーズで大きな姿勢を見せたりする構成は、注目したいポイントです。
2026-27年のGOE評価でも、音楽との一致は重要な項目になっています。
4. プロトコルの「ChSq1」を確認する
演技後に公開される採点表(プロトコル)を見ると、コレオシークエンスは「ChSq1」と表示されます。
ここに記載されている基礎点、GOE、最終得点を確認すれば、実際にどのような評価を受けたのかが分かります。
特に、基礎点が3.50点であること、GOEがプラスかマイナスかを確認すると、採点の仕組みを理解しやすくなります。
【FAQ】コレオシークエンスに関するよくある質問
Q1:コレオシークエンスには必ずスパイラルが必要ですか?
A1:必須ではありません。スパイラル、イナバウアー、スプレッドイーグル、ハイドロブレーディングなどは代表例ですが、少なくとも2種類の異なるスケーティング動作を組み合わせれば、ほかの認められた動作も使用できます。
Q2:コレオシークエンスにはレベル4がありますか?
A2:ありません。コレオシークエンスには難易度レベルの区分がなく、固定基礎点とGOEで評価されます。ステップシークエンスのレベル4とは採点方法が異なります。
Q3:2026-27年のコレオシークエンスの基礎点はいくつですか?
A3:3.50点です。2025-26年の3.00点から0.50点引き上げられました。さらに、GOEによって得点が増減します。
Q4:コレオシークエンスとコレオスピンは同じものですか?
A4:違います。コレオシークエンスは複数の異なる滑走動作を組み合わせる要素で、コレオスピンは3回以上の連続回転を取り入れた振付要素です。2026-27年から両者は別々に評価されます。
Q5:コレオシークエンスはショートプログラムにもありますか?
A5:シニアのシングルスケーティングでは、通常のショートプログラムの必須要素ではありません。主にフリースケーティングに組み込まれる要素です。
まとめ:コレオシークエンスは技術と芸術性をつなぐ重要な要素
コレオシークエンスは、スパイラルやイナバウアー、スプレッドイーグル、ハイドロブレーディングなど、複数の異なるスケーティング動作を組み合わせる振付要素です。
ステップシークエンスのように難易度レベルを獲得する仕組みではなく、固定基礎点にGOEを加減して評価されます。
2026-27年シーズンは、基礎点が3.50点に引き上げられたほか、コレオスピンの新設やGOE評価基準の整理など、振付要素をめぐる変更がありました。
【プロの結論】
コレオシークエンスを観戦するときは、難しい技を何回披露したかだけでなく、次の3点に注目すると採点の意味が見えてきます。
1. 技の組み合わせ: 異なる動作をどれだけ豊かに取り入れているか。
2. 音楽との調和: 動作が曲のリズムやプログラムの世界観に合っているか。
3. 滑走の完成度: 途切れのない流れ、エッジのコントロール、全身の表現ができているか。
コレオシークエンスは、ジャンプのように回転数だけで優劣を判断できる要素ではありません。選手の個性や振付師の創造性が表れ、プログラム全体の印象を大きく左右する見どころです。
2026-27年の新ルールを理解しておけば、演技の美しさだけでなく、なぜその要素が高く評価されたのかまで楽しめるようになります。
主な参照資料: ISU公式「Figure Skating Rules」、ISU Communication No.2769・2788・2786、U.S. Figure Skatingの2026-27年規則・採点資料。