【区間新記録の年度別推移】2020年から2026年までの記録更新を検証
歴代区間記録の更新年度を追うと、特定の大会だけで記録が集中して動いたわけではないことが分かる。
2020年以降の主な記録更新は次のとおりだ。
- 2020年・第96回大会: 東京国際大学のイェゴン・ヴィンセントが3区で59分25秒を記録。
- 2022年・第98回大会: 青山学院大学の中村唯翔が9区で1時間07分15秒を記録。
- 2023年・第99回大会: イェゴン・ヴィンセントが4区で1時間00分00秒を記録。
- 2025年・第101回大会: 青山学院大学の野村昭夢が6区で56分47秒、駒澤大学の佐藤圭汰が7区で1時間00分43秒を記録。
- 2026年・第102回大会: 1区・2区・5区・8区・10区で新記録が誕生。
この推移を見ると、2025年から2026年にかけて、往路・復路ともに記録更新の動きが活発になっている。
2026年はどれだけ記録が短縮されたのか

第102回大会で更新された5区間について、従来の記録と比較してみよう。
| 区間 | 更新前 | 2026年新記録 | 短縮時間 |
|---|---|---|---|
| 1区 | 1:00:40 | 1:00:28 | 12秒 |
| 2区 | 1:05:31 | 1:05:09 | 22秒 |
| 5区 | 1:09:11 | 1:07:16 | 1分55秒 |
| 8区 | 1:03:49 | 1:03:45 | 4秒 |
| 10区 | 1:07:50 | 1:07:31 | 19秒 |
特筆すべきは5区だ。
従来の記録は、2025年に青山学院大学の若林宏樹が樹立した1時間09分11秒だった。これを同じ青山学院大学の黒田朝日が1分55秒も短縮した。
5区は山上りという特殊な条件があるため、数秒の短縮でも価値が大きい。まして約2分の更新は、歴代記録の中でも際立つ成果だ。
一方、8区の短縮は4秒。更新幅の大小だけで選手の能力を評価するのではなく、各区間の距離や地形、従来記録の水準を踏まえて見る必要がある。
【区間賞と大学別ランキング】歴代記録を持つ大学・選手の関係
箱根駅伝では、歴代区間記録と区間賞の両方が注目される。
区間賞は、その大会で各区間を最も速く走った選手に与えられる。一方、歴代区間記録は過去の大会も含めた最速タイムだ。
この違いを理解すると、2026年の結果もより興味深くなる。
歴代区間記録を大学別に整理
2026年大会終了時点の10区間の記録保持者を大学別に数えると、次のようになる。
- 青山学院大学:4区間(5区・6区・8区・9区)
- 東京国際大学:2区間(3区・4区)
- 駒澤大学:2区間(7区・10区)
- 國學院大學:1区間(1区)
- 城西大学:1区間(2区)
青山学院大学が4区間で最多となっている。
特に5区の黒田朝日、6区の野村昭夢という、山上りと山下りの両方に歴代記録保持者を送り出している点は興味深い。
ただし、これは現時点での区間記録保持者の所属大学を集計したものであり、大学の歴代区間賞獲得数とは異なる。
複数区間の記録を持つ注目選手
イェゴン・ヴィンセント(東京国際大学)
3区で59分25秒、4区で1時間00分00秒を記録。異なる2区間で歴代最速記録を保持する選手だ。3区の記録は2020年、4区の記録は2023年に樹立された。
佐藤圭汰(駒澤大学)
7区で1時間00分43秒、10区で1時間07分31秒を記録。2025年に7区、2026年に10区の歴代最速記録を樹立した。
この2人は、単一区間のスペシャリストという枠を超え、複数の区間で歴代トップに立った選手として注目できる。
区間賞の歴代記録も見逃せない
東京箱根間往復大学駅伝競走の公式サイトには、第102回大会だけでなく、過去の大会ごとの区間賞選手リストも掲載されている。
2026年の区間賞は次の10人が獲得した。
- 1区:青木瑠郁(國學院大學)
- 2区:キムタイ(城西大学)
- 3区:本間颯(中央大学)
- 4区:鈴木琉胤(早稲田大学)
- 5区:黒田朝日(青山学院大学)
- 6区:小池莉希(創価大学)
- 7区:高山豪起(國學院大學)
- 8区:塩出翔太(青山学院大学)
- 9区:佐藤有一(青山学院大学)
- 10区:佐藤圭汰(駒澤大学)
ここで注目したいのが、6区の小池莉希だ。
小池は第102回大会で56分48秒の区間賞を獲得したが、歴代最速記録は野村昭夢の56分47秒。わずか1秒差で区間賞と歴代記録の保持者が分かれている。
また、7区の区間賞は高山豪起、歴代記録保持者は佐藤圭汰。9区も区間賞は佐藤有一、歴代記録保持者は中村唯翔となっている。
このように、区間賞は大会ごとの勝者を知る指標であり、歴代記録は長年にわたる競技水準の変化を知る指標だ。両方を確認することで、箱根駅伝の記録をより立体的に楽しめる。
【コース変更と記録比較】昔の区間記録を単純に比べてはいけない理由
箱根駅伝の歴代記録を調べる際、特に注意したいのがコース変更だ。
現在の区間記録と過去のタイムを比較するとき、同じ区間番号であっても、走った距離やルートが異なる場合がある。
第91回大会で箱根のコースが変更
2015年の第91回大会では、函嶺洞門の通行禁止に伴い、新たなバイパスが競走路に採用された。
関東学生陸上競技連盟の距離変更に関する発表では、コースの一部変更を受けて全距離を再計測し、5区・6区については第91回大会以降の記録を新しい記録として扱うことが示された。
つまり、第90回大会以前の5区・6区の記録は、現在の記録とは別の扱いになる。
第93回大会では4区・5区もコース変更
さらに第93回大会からは4区・5区のコースが変更された。
公式コース紹介によれば、4区はコース延長により最後の約3kmに緩やかな上りが加わり、5区も現在のルートを基準に歴代記録が整理されている。
このため、4区・5区は第93回大会以降の記録を基準に比較することが大切だ。
歴代記録を比較するときのチェックポイント
箱根駅伝の記録を正確に読み取るなら、次の3点を確認したい。
1. 区間距離が同じか: 距離の違う記録をタイムだけで比較しない。
2. コース変更があったか: 特に4区・5区・6区は変更時期に注意する。
3. 公式記録か参考記録か: 関東学生連合などのオープン参加によるタイムは、公式の歴代記録と区別する。
特に3つ目は見落とされやすい。
2026年の1区では、関東学生連合の川﨑楓が1時間00分38秒を記録したが、オープン参加のため参考記録となった。通常の出場大学の選手が樹立した公式記録と同じランキングには含まれない。
タイムだけを見て歴代順位を判断すると、こうした違いを見落とす可能性がある。
【箱根駅伝の歴代区間記録】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:箱根駅伝で最も短い区間記録は何分ですか?
6区の野村昭夢(青山学院大学)が2025年に樹立した56分47秒が、10区間の中で最も短い所要時間の歴代記録だ。ただし、区間距離や高低差が異なるため、単純なタイム比較だけで最も速い区間を決めることはできない。
Q2:箱根駅伝で複数の区間記録を持つ選手は誰ですか?
2026年大会終了時点では、東京国際大学のイェゴン・ヴィンセントが3区・4区、駒澤大学の佐藤圭汰が7区・10区の歴代記録を保持している。
Q3:2026年の箱根駅伝では何区間で新記録が出ましたか?
第102回大会では1区・2区・5区・8区・10区の5区間で区間新記録が誕生した。1区では複数の選手が従来記録を上回り、参考記録を含めると7人が記録更新を達成している。
まとめ:箱根駅伝の歴代区間記録はコースと年度を合わせて確認しよう
2026年10月時点の箱根駅伝歴代区間記録を見ると、第102回大会は1区・2区・5区・8区・10区で新記録が生まれた、記録更新の多い大会だった。
特に注目すべき選手は次のとおりだ。
- 青木瑠郁(國學院大學): 1区の歴代最速記録保持者。
- キムタイ(城西大学): 2区の歴代最速記録保持者。
- イェゴン・ヴィンセント(東京国際大学): 3区・4区の歴代最速記録保持者。
- 黒田朝日(青山学院大学): 5区の歴代最速記録保持者。
- 野村昭夢(青山学院大学): 6区の歴代最速記録保持者。
- 佐藤圭汰(駒澤大学): 7区・10区の歴代最速記録保持者。
- 塩出翔太(青山学院大学): 8区の歴代最速記録保持者。
- 中村唯翔(青山学院大学): 9区の歴代最速記録保持者。
箱根駅伝の記録を楽しむうえで大切なのは、区間賞、歴代最速記録、大学別記録を混同しないこと。そして、コース変更や参考記録の有無を確認することだ。
第103回大会は2027年1月に開催される。2026年に生まれた5つの区間記録が守られるのか、それとも新たな選手が歴史を書き換えるのか。次回大会では、今回の記録更新を基準に各校のエースや山上り・山下りのスペシャリストの走りを見比べると、箱根駅伝をさらに深く楽しめる。
主な資料:東京箱根間往復大学駅伝競走公式サイト「過去の記録」「コース紹介」、日本テレビ「箱根駅伝 大会記録」、日刊スポーツ第102回大会報道、関東学生陸上競技連盟の距離変更に関する発表。