【結論】江別大学生殺人事件で死刑判決は出たのか?

目次

最初に押さえておきたいのは、死刑と無期懲役はまったく異なる刑罰であり、この事件では主犯格とされた川口侑斗被告に無期懲役が言い渡されたという点です。

2026年10月31日現在、札幌地方裁判所で一審判決が出た5人のうち、最も重い刑は川口被告の無期懲役です。川村葉音被告と当時17歳だった少年には、それぞれ懲役30年が言い渡されています。

事件の罪名は、報道や判決文では主に強盗致死、詐欺、詐欺未遂、窃盗などです。一般に「江別大学生殺人事件」と検索されていますが、裁判で中心となったのは強盗致死罪です。

刑法240条の強盗致死罪は、被害者を死亡させた場合、死刑または無期刑を法定刑とする重大犯罪です。ただし、具体的な刑罰は、犯行への関与、主導性、暴行の程度、死亡結果への寄与、犯行時の年齢などを考慮して判断されます。

今回の裁判では、検察側が川口被告に無期懲役を求刑し、札幌地裁も同じ刑を言い渡しました。死刑が言い渡されたわけではありません。

【事件の経緯】長谷知哉さんはなぜ集団暴行を受けたのか

江別大学生殺人事件死刑

事件が発生したのは、2024年10月25日夜から26日未明にかけてです。

北海道江別市の公園で、千歳市に住む大学生の長谷知哉さん(当時20歳)が、男女6人から集団暴行を受けました。

事件の背景には、長谷さんと交際相手だった八木原亜麻被告との関係をめぐるトラブルがありました。報道された公判内容によると、別れ話をめぐって八木原被告が川村葉音被告に相談し、その後、川村被告が長谷さんを公園に呼び出す流れになりました。

事件当日の主な流れ

裁判で明らかになった経緯を整理すると、次のようになります。



交際関係をめぐるトラブル

長谷さんと八木原被告の別れ話が事件の発端となりました。


川村被告への相談

八木原被告が友人の川村被告に相談し、長谷さんを呼び出すまでの経緯につながりました。


江別市内の公園に6人が集まる

川口被告らも加わり、長谷さんに対する暴行が始まりました。


金品の要求と暴行の継続

現金やクレジットカード、キャッシュカードなどが奪われました。暴行は約2時間に及びました。


カードの不正利用と現金の引き出し

奪ったカードを使用して商品を購入し、キャッシュカードから現金も引き出しました。


10月26日、長谷さんが死亡

長谷さんは外傷性ショックにより死亡しました。

2026年5月に始まった裁判では、長谷さんのスマートフォンに残された音声や、被告らが撮影した映像なども証拠として扱われました。

また、判決文には、長谷さんが受けた暴行の深刻さや、金品を要求する行為が長時間続いたことが記されています。死亡後のカード利用や現金の引き出しについても、刑事責任を判断する重要な事情となりました。

この事件を単なる交際トラブルの延長として理解することはできません。裁判で問われたのは、複数人が加わった暴行と金品の強奪、そして被害者の命が奪われた結果に対する、それぞれの刑事責任です。

【判決一覧】5人の刑期と控訴状況を完全整理

この事件で強盗致死などの罪に問われたのは、男女合わせて6人です。そのうち2026年10月31日までに5人の一審判決が言い渡されました。

5人の刑期と、その後の控訴状況を一覧にすると次のとおりです。

被告 一審判決 判決日 控訴状況 川口侑斗 無期懲役 2026年8月7日 本人が控訴 川村葉音 懲役30年 2026年6月25日 被告側・検察側双方が控訴 滝沢海裕 懲役20年 2026年6月25日 双方控訴せず確定 当時16歳の少年 懲役9年以上13年以下 2026年6月25日 双方控訴せず確定 当時17歳の少年 懲役30年 2026年8月7日 控訴せず確定

出典:札幌地裁判決、共同通信、北海道文化放送、北海道放送などの2026年報道。

1.川口侑斗被告:無期懲役

川口侑斗被告は、事件当時18歳だった特定少年です。

2026年8月7日、札幌地裁は川口被告に対し、検察側の求刑どおり無期懲役を言い渡しました。

判決では、川口被告が自ら暴行を加えただけでなく、ほかの共犯者に暴行を促し、動画撮影や残忍な行為を提案するなど、犯行全体を主導したと認定されました。

「本件の主犯であるとの評価が相当である」

これは札幌地裁の判決理由に示された評価です。裁判所は、川口被告の行為が暴行をエスカレートさせ、長谷さんの死亡結果にも大きく寄与したと判断しました。

一方、弁護側は一審で、事件当時18歳になったばかりだったことや反省、更生の可能性を考慮し、懲役25年が相当だと主張していました。

判決後、川口被告本人が2026年8月10日付で控訴しました。したがって、無期懲役は一審判決であり、確定した刑ではありません。

2.川村葉音被告:懲役30年

川村葉音被告は、八木原亜麻被告の友人で、事件のきっかけとなった交際トラブルの相談を受けていた人物です。

札幌地裁は2026年6月25日、川村被告に懲役30年を言い渡しました。検察側は無期懲役を求刑していました。

裁判所は、川村被告が事件の発端を作り、暴行や金品要求に加わって犯行を進める役割を担ったと認定しました。一方で、川口被告のように犯行全体を主導したわけではなく、死亡結果への直接的な寄与も限定的だったと判断しています。

つまり、事件のきっかけを作った責任は重いものの、犯行全体を主導した人物と同じ評価にはならなかったということです。

判決を不服として、2026年7月9日に被告側と検察側の双方が控訴しました。被告側は一審で懲役13年が妥当と主張し、検察側は無期懲役を求めていました。

そのため、川村被告の懲役30年も確定していません。

3.滝沢海裕被告:懲役20年

滝沢海裕被告は、事件当時18歳だった特定少年です。報道では「瀧澤海裕」と表記されることもあります。

2026年6月25日、札幌地裁は滝沢被告に懲役20年を言い渡しました。これは検察側の求刑どおりです。

裁判所は、滝沢被告について、暴行を助長する行動を取ったことを認めながらも、犯行全体を主導したわけではなく、死亡結果への直接的な寄与は限定的だったと評価しました。

検察側は、犯行時18歳だったことや、ほかの共犯者との役割の違いなどを踏まえて懲役20年を求刑。弁護側は懲役15年が相当と主張していました。

被告側と検察側の双方が控訴期限までに控訴しなかったため、2026年7月10日に懲役20年の判決が確定しました。

4.当時16歳だった少年:懲役9年以上13年以下

事件当時16歳だった少年には、2026年6月25日、懲役9年以上13年以下の不定期刑が言い渡されました。

検察側の求刑は懲役10年以上15年以下でしたが、札幌地裁は少年の年齢や犯行への関与、ほかの共犯者との立場の違いなどを考慮し、求刑より軽い刑を選択しました。

裁判所は、犯行を主導した立場ではないものの、集団暴行に加わった責任は重いと判断しています。

この判決についても双方が控訴せず、2026年7月10日に確定しました。

5.当時17歳だった少年:懲役30年

2026年8月7日には、川口被告とともに裁判を受けた当時17歳の少年にも、懲役30年が言い渡されました。

札幌地裁は、この少年について、川口被告に次いで多数回の激しい暴行を加えたこと、頭部や顔面への暴行、金品の要求、被害者を全裸にするきっかけを作ったことなどを重く評価しました。

犯行全体を主導したとは認めなかったものの、死亡結果への寄与が大きく、責任は重いと判断しています。

この少年は判決を不服として控訴せず、2026年8月25日までに刑が確定しました。

【量刑の理由】なぜ無期懲役と懲役30年に分かれたのか

同じ公園で起きた集団暴行事件でありながら、判決は無期懲役から不定期刑まで分かれました。

その理由は、裁判所が被告全員を一括りにせず、それぞれの行為と責任を個別に評価したことにあります。

強盗致死罪の重さ

強盗致死罪は、金品を奪うための暴行や脅迫などによって被害者が死亡した場合に成立する犯罪です。

重要なのは、最初から殺害を目的としていたかどうかだけで判断されるわけではないという点です。強盗の過程で加えた暴行が死亡結果につながった場合にも、強盗致死罪が成立し得ます。

この事件では、長谷さんに対する暴行と金品の要求が一連の犯行として認定されました。裁判所は暴行の長さ、態様、金品の要求、死亡という結果を総合的に評価しています。

川口被告と川村被告の判決が違った理由

特に注目されるのが、川口被告の無期懲役と川村被告の懲役30年の違いです。

川村被告は事件の発端を作り、暴行や金品要求を進める役割を担いました。しかし、札幌地裁は犯行全体を主導した人物とは評価しませんでした。

対して川口被告については、暴行を開始し、ほかの共犯者に指示を出し、暴行をエスカレートさせたと判断しています。

この犯行全体に対する主導性と死亡結果への寄与度が、両者の刑の違いを説明する大きなポイントです。

死刑と無期懲役の違い

「無期懲役なら死刑とほぼ同じなのでは」と考える人もいますが、法律上は明確に異なります。

比較項目 死刑 無期懲役
刑罰の内容 生命を奪う刑罰 期間を定めず拘禁する刑罰
釈放 釈放制度はない 法律上、仮釈放の制度がある
執行 死刑が執行される 刑事施設で刑が執行される
刑の確定 判決確定後に執行手続へ 判決確定後に刑の執行

無期懲役は、刑期が20年や30年と決まっている刑罰ではありません。一定期間が経過しただけで自動的に出所できるわけでもありません。

仮釈放が認められる可能性はありますが、審査を経る必要があり、無期刑の受刑者が必ず釈放されるわけではありません。

一方、死刑は生命そのものを奪う刑罰です。両者を単純に「長い刑期と短い刑期」という関係で比較することはできません。

【特定少年と死刑】18歳・19歳には適用されるのか

今回の事件を理解するうえで、もう一つ重要なのが改正少年法における「特定少年」という区分です。

特定少年とは、18歳と19歳の少年を指します。2022年4月に施行された改正少年法によって、18歳・19歳も少年法の対象でありながら、17歳以下とは異なる扱いを受けるようになりました。

18歳・19歳の特定少年に死刑は適用される?

法律上、特定少年だからという理由だけで死刑が禁止されるわけではありません。

少年法51条は、犯罪を行った時点で18歳未満だった者について、死刑に相当する場合には無期刑を科すと定めています。

つまり、基準になるのは判決時の年齢ではなく、原則として犯行時の年齢です。

18歳または19歳で犯罪を行った特定少年については、重大犯罪で検察官送致・起訴された場合、成人と同様の刑事裁判で刑罰が判断されます。強盗致死罪の法定刑には死刑も含まれます。

したがって、川口被告は犯行当時18歳だったため、少年法51条による「18歳未満の者への死刑の緩和」の対象ではありません。ただし、今回の事件で検察側が求めたのは無期懲役であり、札幌地裁も無期懲役を言い渡しています。

なぜ当時17歳の少年に懲役30年が言い渡されたのか

もう一つ、今回の判決で大きな疑問を呼んだのが、犯行時17歳だった少年への懲役30年です。

少年法51条2項には、18歳未満の者について、無期刑に相当する場合でも10年以上20年以下の有期刑を選択できるという規定があります。

しかし、この少年は判決時には19歳でした。少年法52条の不定期刑に関する特例は、特定少年には適用されません。

さらに、今回の判決では刑法上の酌量減軽が行われ、有期刑の上限である懲役30年が選択されました。少年法51条2項の20年という枠を単純に当てはめるだけでは説明できない、複雑な法的判断が含まれています。

札幌地裁の判決文には、犯行時17歳だったことなどを考慮して酌量減軽した一方、犯行の悪質さや死亡結果への寄与を踏まえ、懲役30年が相当とした理由が記されています。

この点は、少年事件における年齢の基準と、刑事裁判での量刑判断を考えるうえで重要な論点です。

【2026年10月最新】札幌高裁の控訴審と八木原亜麻被告の現在

2026年10月31日時点で、5人の一審判決のうち3人は確定しています。一方、残る2人は控訴しており、もう1人はまだ公判が始まっていません。

川口侑斗被告の控訴

川口被告は2026年8月10日付で一審判決を不服として控訴しました。

一審で弁護側が主張したのは、犯行時の年齢が18歳になったばかりだったこと、反省していること、更生の可能性があることなどです。懲役25年が適正という主張でした。

ただし、これらは一審での弁護側の量刑主張です。控訴審に提出された正式な控訴理由の詳細とは区別する必要があります。

川村葉音被告の控訴

川村被告については、2026年7月9日に被告側と検察側の双方が控訴しています。

一審で弁護側は懲役13年が妥当と主張し、検察側は無期懲役を求めました。札幌地裁の懲役30年という判断を双方が不服とした形です。

川村被告の裁判は、犯行の発端を作ったことと、主犯格として全体を主導したことの違いが争点を考えるうえで重要になります。

札幌高等裁判所の控訴審はどうなっている?

川口被告と川村被告の事件は、札幌高等裁判所で控訴審の対象となる段階にあります。

2026年10月31日までに確認できる報道では、両被告の控訴審判決や具体的な審理日程について、新たな公表情報は確認できません。

したがって、現時点で無期懲役や懲役30年を最終的な確定刑として扱うことはできません。控訴審では、一審の量刑判断が維持されるのか、変更されるのかが注目点になります。

八木原亜麻被告の裁判はいつ始まる?

八木原亜麻被告は、長谷さんの交際相手だった人物です。ほかの5人とともに強盗致死などの罪で起訴されています。

しかし、2026年8月7日の時点で、八木原被告の初公判の日程は決まっていないと報じられました。2026年10月31日までに初公判が開かれたとの確かな続報も確認できません。

このため、八木原被告については、ほかの5人のような一審判決や刑期はまだありません。

事件の発端に関わる人物であるだけに、今後の公判で何が明らかになるのかも注目されています。

【よくある質問】江別大学生殺人事件の死刑・判決・控訴について

Q1:江別大学生殺人事件で死刑判決は出ましたか?

A1:2026年10月31日現在、死刑判決は出ていません。主犯格とされた川口侑斗被告には無期懲役が言い渡されました。

Q2:川口侑斗被告はなぜ死刑ではなく無期懲役なのですか?

A2:検察側が求刑したのは無期懲役であり、札幌地裁も犯行の主導性や死亡結果への寄与を重く評価して、求刑どおり無期懲役を言い渡しました。

Q3:川村葉音被告の懲役30年は確定していますか?

A3:確定していません。2026年7月9日に被告側と検察側の双方が控訴しており、控訴審の判断が残っています。

Q4:5人のうち刑が確定したのは誰ですか?

A4:滝沢海裕被告の懲役20年、当時16歳だった少年の懲役9年以上13年以下の不定期刑、当時17歳だった少年の懲役30年が確定しています。

Q5:八木原亜麻被告の判決はいつ出ますか?

A5:2026年10月31日時点で初公判の日程は確認できず、判決日も決まっていません。

Q6:特定少年には死刑が適用されることがありますか?

A6:あります。犯行時18歳・19歳の特定少年には、重大犯罪について成人と同様の刑事処分が適用される場合があります。犯行時18歳未満の少年には、少年法51条による死刑の緩和規定があります。

まとめ:江別大学生暴行死事件の今後を左右する3つのポイント

江別大学生集団暴行死事件は、2026年に入って5人の被告に一審判決が言い渡され、裁判は大きな節目を迎えました。

あらためて重要な事実を整理すると、次のとおりです。

- 死刑判決は出ていない。
- 川口侑斗被告には無期懲役。
- 川村葉音被告と当時17歳だった少年には懲役30年。
- 滝沢海裕被告には懲役20年。
- 当時16歳だった少年には懲役9年以上13年以下の不定期刑。
- 川口被告と川村被告は控訴中。
- ほかの3人は刑が確定。
- 八木原亜麻被告の公判は未開廷。

今後の注目点は、第一に川口被告と川村被告の控訴審、第二に八木原被告の初公判、第三に各被告の役割や量刑について上級審がどのような判断を示すかです。

今回の事件では、同じ集団による犯行であっても、主導した人物、暴行を助長した人物、従属的な立場で加担した人物という違いが刑期に反映されました。

また、特定少年の年齢と少年法の適用関係も、判決を理解するうえで見落とせないポイントです。

「死刑判決が出た」という情報と「無期懲役が言い渡された」という事実は明確に区別する必要があります。さらに、一審判決と確定判決も同じではありません。今後の札幌高等裁判所の判断と八木原被告の裁判が、この事件の全容を理解するうえで重要な焦点になります。