外国人に生活保護を出す国は日本だけ?米英独仏の受給条件を2026年最新比較
2026年現在、外国人に公的扶助を支給している国は日本だけではない。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにも、外国人が一定の条件を満たした場合に生活費や住宅費などの公的支援を受けられる制度が存在する。ただし、どの国でも外国人なら無条件で受給できるわけではない。在留資格、滞在期間、就労履歴、難民認定、所得や資産などによって対象者が細かく区分されている。
日本の場合、生活保護法第1条・第2条は原則として日本国民を対象としている一方、昭和29年の厚生省社会局長通知に基づき、一定の在留資格を持つ外国人に対して行政措置として保護を実施している。この仕組みは、2014年7月18日の最高裁判所判決でも重要な論点となった。さらに、令和5年度の外国籍世帯主の被保護世帯に属する人員は6万5683人と報告されている。
日本と海外では、外国人への公的扶助を認める法的根拠も、受給までに必要な滞在年数も異なる。2026年10月31日時点の各国政府資料と日本の公的統計を基に、制度の実態と数字の正しい読み方を整理する。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:外国人に公的扶助を支給する国は日本だけではなく、米英独仏にも該当制度がある。
- 要点2:日本では外国人に生活保護法上の受給権は認められていないが、一定の在留資格を持つ人には行政措置による保護が実施されている。
- 要点3:令和5年度の6万5683人は外国人だけの人数ではない。2024年度の最新公表値は6万4993人である。
【結論】外国人に生活保護を出す国は日本だけではない!米英独仏にも制度がある

「外国人に生活保護を出すのは日本だけ」という認識は正確ではない。各国には、外国人の生活困窮を対象とする公的扶助制度があり、一定の在留資格や居住条件を満たせば支援を受けられる。
ただし、海外の制度を日本の生活保護と同一視することにも注意が必要だ。各国の制度は、最低所得保障、失業者向け給付、食料支援、難民支援など、目的や給付内容が異なる。
代表的な制度を挙げると、次のとおりだ。
- 日本:生活保護法に準じた行政措置
- アメリカ:SNAP(食料支援)、SSI(低所得の高齢者・障害者などへの所得保障)
- イギリス:Universal Credit(ユニバーサル・クレジット)
- ドイツ:Grundsicherungsgeld(2026年7月からの新名称。旧Bürgergeld)
- フランス:RSA(積極的連帯所得)
ここで押さえておきたいのは、外国人への支給を認めることと、外国人全員に受給資格を認めることは別問題だという点である。
たとえば、長期居住者には一定の支援を認める一方、短期滞在者や就労目的だけで入国した人には給付を制限する国がある。また、難民として認定された人と、難民申請の審査を待っている人とでは、利用できる制度が異なる場合もある。
したがって、国際比較では「外国人に支給しているか」という二択ではなく、「どの在留資格の人に、どの制度を、どの条件で支給しているか」を見る必要がある。
【日本の制度を検証】生活保護法第1条・第2条と昭和29年通知の関係
日本の外国人向け生活保護を理解するには、生活保護法の条文と、行政機関が運用している通知を区別する必要がある。
生活保護法第1条・第2条は日本国民を対象としている
生活保護法第1条は、憲法第25条の理念に基づき、生活に困窮する国民に必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに自立を助長することを目的としている。
第2条は、法律で定められた要件を満たす国民が、無差別平等に保護を受けられることを規定している。
つまり、両条文の「国民」は日本国民を意味し、外国人は生活保護法の直接的な適用対象には含まれないというのが最高裁判所の判断である。
一方、第4条では保護の補足性が定められている。本人が利用できる資産、能力、その他の手段を生活維持のために活用することが基本となる。
この考え方は、外国人に対する行政措置でも重要だ。外国人だからという理由だけで無条件に給付される制度ではなく、生活困窮の状況や世帯の収入、資産などが審査される。
昭和29年5月8日の厚生省社会局長通知が現在の運用の出発点
外国人への生活保護の取り扱いを定めた重要な行政文書が、1954年(昭和29年)5月8日付の厚生省社会局長通知「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」(社発第382号)である。
この通知は、生活保護法上、外国人は適用対象にならないことを前提としながら、生活に困窮する外国人に対して、一般国民に対する生活保護の決定・実施に準じた保護を行うよう自治体に示したものだ。
通知には、申請時の在留カードや特別永住者証明書の提示、本人確認、生活実態の調査などの手続きも定められている。
また、急迫した状況では、通常の手続きを完了する前に必要な保護を実施できる取り扱いも示されている。
現在の厚生労働省の説明では、対象となる外国人は主に次のように整理されている。
- 永住者:入管法上の永住者の在留資格を持つ人
- 定住者:定住者の在留資格を持つ人
- 日本人の配偶者等:日本人の配偶者や子など、該当する在留資格を持つ人
- 永住者の配偶者等:永住者の配偶者や子など、該当する在留資格を持つ人
- 特別永住者:特別永住者の地位を持つ人
- 認定難民:入管法上の難民認定を受けた人
さらに、特定活動など、国内での活動に制限を受けない在留資格を持つ人についても、個別の事情によって対象となる場合がある。
したがって、外国人という属性だけで受給の可否が決まるわけではない。在留資格が行政措置の対象に該当するかどうかが、最初の重要な判断材料になる。
最高裁判所平成26年7月18日判決で何が決まったのか
この問題をめぐる重要な司法判断が、2014年(平成26年)7月18日の最高裁判所第二小法廷判決である。
事件は、永住者の在留資格を持つ外国人が生活保護の申請を却下されたことを受け、その取り消しなどを求めた訴訟だった。
最高裁は、生活保護法第1条・第2条にいう「国民」は日本国民を意味し、外国人は含まれないと判断した。昭和29年通知は行政機関の通達であり、それによって外国人に生活保護法上の受給権が生じるわけではないとした。
「外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり、生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、同法に基づく受給権を有しない」
この判断の意味は大きい。
永住者であっても、生活保護法に基づく日本国民と同じ法的な受給権を取得するわけではない。一方、行政措置による保護そのものが否定されたわけでもない。
つまり、日本の制度は「法律上の受給権」と「行政上の保護措置」という二つの異なる仕組みで成り立っている。
【国際比較】米英独仏は外国人にどこまで公的扶助を認めているのか
2026年の制度を比較すると、日本以外の国でも外国人への公的支援は存在する。ただし、受給資格には国ごとの明確な違いがある。
| 国 | 代表的な制度 | 外国人の主な受給条件 | 滞在期間・難民の扱い |
|---|---|---|---|
| 日本 | 生活保護に準じた行政措置 | 永住者、定住者、特別永住者、日本人・永住者の配偶者等、認定難民など | 制度自体に一律の5年要件はない。対象となる在留資格が重要 |
| アメリカ | SNAP・SSI | SNAPは原則としてLPR、Cuban and Haitian Entrant、COFA市民などに限定 | SNAPではLPRの原則5年要件。SSIは難民・亡命認定者などに別の条件がある |
| イギリス | Universal Credit | NRPF制限がなく、その他の給付要件を満たすこと | 一時滞在者の多くは制限対象。認定難民は公的給付を申請できる |
| ドイツ | Grundsicherungsgeld(旧Bürgergeld) | 適法な滞在資格、就労能力、困窮状態などの条件を満たすこと | 難民認定者などは資格に応じて対象になり得る。庇護申請者には別制度がある |
| フランス | RSA | 安定した居住、年齢、所得条件、適格な在留資格などを満たすこと | 原則5年以上の就労可能な滞在許可、または居住者カード・難民認定など |
アメリカ:SNAPは2025年の法改正で外国人の対象を縮小
アメリカでは、低所得世帯向けの食料支援制度SNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)や、低所得の高齢者・障害者などを対象とするSSI(Supplemental Security Income)が存在する。
ただし、これらは日本の生活保護と同じ制度ではない。
特に注目すべきなのが、2025年7月4日に成立したOne Big Beautiful Bill ActによるSNAPの外国人受給資格の変更だ。
米国農務省(USDA)の2025年12月9日付ガイダンスによれば、外国人については、SNAPの対象が原則として次の区分に限定された。
- 合法的永住者(LPR、いわゆるグリーンカード保持者)
- Cuban and Haitian Entrant(キューバ・ハイチからの特定の入国者)
- 自由連合盟約(COFA)に基づく対象国の市民
LPRについては、原則として資格を取得してから5年間の待機期間が設けられている。ただし、18歳未満、一定の就労実績がある人、障害者、米軍との関係がある人などには例外がある。
さらに重要なのは、難民認定者や亡命認定者についても、2025年の法改正後は、その資格だけを根拠にSNAPを受給できなくなった点だ。後に合法的永住者へ資格変更した場合には、過去の資格によって5年間の待機期間が免除されるケースがある。
一方、SSIは別制度である。2026年版の米国社会保障局(SSA)の説明では、難民や亡命認定者など一定の資格を持つ外国人は、所得・資産などの条件を満たせば、原則として資格付与から最長7年間の給付対象になり得る。
アメリカでは、同じ外国人であっても、食料支援と所得保障で受給条件が異なる。外国人に対する福祉を一括して語ることはできない。
イギリス:NRPFによって一時滞在者の給付を制限
イギリスのUniversal Creditは、失業中の人や低所得者などを対象とする公的給付制度である。
外国人の受給資格を考える際に欠かせないのが、NRPF(No Recourse to Public Funds)という仕組みだ。
NRPFは、在留許可に付される「公的資金へのアクセス不可」という条件を意味する。この制限を受けている人は、Universal Creditを含む多くの公的給付や住宅支援を利用できない。
学生ビザや就労ビザなど、一時的な在留資格を持つ外国人の多くは、この条件の対象になる。
一方、永住に相当するIndefinite Leave to Remain(無期限滞在許可)を取得した人などは、NRPFの制限がない場合、公的扶助を利用できる可能性がある。
また、難民認定を受けた人は、一般的な一時滞在者とは異なる扱いになる。英国政府の2026年3月9日更新の案内では、難民認定後に給付を申請できることが説明されている。
難民認定後は、それまで利用していた庇護申請者向け支援が通常42日後に終了するため、その間にUniversal Creditなどの申請や住居の確保を進める仕組みとなっている。
つまり、イギリスでは国籍だけではなく、NRPFの有無と難民認定の有無が重要な判断材料になっている。
ドイツ:Bürgergeldは2026年7月から新制度名へ移行
ドイツでは、これまでBürgergeld(市民手当)が、就労可能な低所得者や失業者などを対象とする代表的な公的扶助として知られていた。
しかし、2026年7月1日から制度名称がGrundsicherungsgeldへ変更された。したがって、2026年10月時点では、旧称のBürgergeldと新名称を区別する必要がある。
根拠となるのは、求職者向け基礎保障を定める社会法典第2編(SGB II)だ。
基本的な対象条件には、15歳以上で年金受給年齢に達していないこと、就労能力があること、生活に困窮していること、ドイツ国内に通常の居住地があることなどが含まれる。
外国人については、さらに滞在資格に関する条件が加わる。
ドイツ連邦雇用庁の2026年10月時点の申請案内では、外国人について、就労・自営業の状況、EU・EEA・スイスの市民である場合の就労履歴、第三国出身者の場合の適格な滞在許可などが判断材料として示されている。
また、滞在資格がない人や、単に求職する目的だけで入国した人は原則として対象外となる。庇護申請者給付法(Asylbewerberleistungsgesetz)の対象者も、SGB IIの給付を重複して受けることはできない。
難民申請中の人と、難民として認定された人とでは利用する制度が異なる点も重要だ。庇護申請中は原則としてAsylbewerberleistungsgesetzによる別の支援制度が適用される。
フランス:RSAは原則5年以上の就労可能な滞在許可が必要
フランスのRSA(Revenu de solidarité active)は、所得が一定水準に満たない人を対象とする最低所得保障制度である。
フランス政府の行政情報サイトService Publicが2026年4月1日に確認した受給条件によると、25歳以上の外国人は、フランスに安定的かつ継続的に居住していることに加え、次のいずれかの条件を満たす必要がある。
- 原則として、フランスで就労できる在留許可を5年以上保有していること。
- 居住者カード、またはそれに相当する在留許可を保有していること。
- 難民として認定されていること。
- 無国籍者として認定されていること。
- 補完的保護の受益者であること。
なお、5年間の在留許可に関する条件にはアルジェリア国籍者についての例外がある。
難民認定者や補完的保護の対象者については、一般的な5年間の就労可能な滞在許可という条件とは別の資格要件が設けられている。
RSAは原則25歳以上が対象だが、一定のひとり親などには25歳未満でも受給できる例外がある。
フランスの制度から分かるのは、外国人への支援を認めながらも、長期居住者としての社会的な結びつきや保護資格を重視しているということだ。
【受給条件を徹底比較】在留資格・滞在年数・難民認定で何が変わる?
ここまでの制度を比較すると、外国人の公的扶助を左右する要素は大きく分けて4つある。
1.在留資格:日本では資格の種類が重要
日本の場合、生活保護に準じた行政措置の対象となるかどうかは、在留資格が大きな判断材料になる。
永住者や定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、特別永住者などは代表的な対象区分だ。
これに対して、観光目的の短期滞在者や、一般的な留学・就労目的の在留資格を持つ人が、外国人であるという理由だけで同じ行政措置の対象になるわけではない。
なお、厚生労働省は一定の特定活動などについても個別に対象となるケースがあるとしている。したがって、在留資格の名称だけで機械的に判断するのではなく、実際の法的地位と行政上の取り扱いを確認する必要がある。
2.滞在年数:日本・アメリカ・フランスでは基準が異なる
滞在年数に関するルールは、国によって大きく異なる。
日本では、外国人への行政措置そのものに、全対象者共通の「日本に5年以上住んでいなければならない」という条件が設けられているわけではない。重要なのは、適法な在留資格が行政措置の対象に該当するかどうかだ。
ただし、永住者という在留資格を取得するためには、原則として引き続き10年以上日本に在留することなどの条件がある。これは永住許可の要件であり、生活保護の行政措置そのものの一律の滞在年数要件とは別の話である。
アメリカでは、SNAPのLPRに対する5年間の待機期間が代表的だ。フランスでは、一定の外国人に5年以上の就労可能な滞在許可が求められる。
ドイツにもSGB II第7条に一定の外国人を対象とする5年間の通常居住期間に関する規定があるが、すべての外国人に一律に適用される条件ではない。
イギリスは、単純な滞在年数よりもNRPFの有無や在留資格の種類を重視する。
3.難民認定:申請中と認定後では扱いが違う
外国人への公的扶助を比較する際、特に誤解されやすいのが難民認定者の扱いだ。
難民申請をしている人と、正式に難民として認定された人は、法的な立場が異なる。
日本では、厚生労働省が入管法上の認定難民を行政措置の対象として整理している。難民申請中であるという事情だけで、認定難民と同じ受給資格が自動的に生じるわけではない。
フランスでは難民認定者や補完的保護の受益者にRSAの特別な資格要件が設けられている。
イギリスでは難民認定後に公的給付を申請できる一方、認定前の庇護申請者は別の支援制度を利用する。
ドイツでも、庇護申請中の人は原則としてAsylbewerberleistungsgesetzの対象となり、難民認定後などに在留資格が変わるとSGB IIの対象となる可能性が出てくる。
アメリカは2025年のSNAP改正によって、難民や亡命認定者の扱いが厳格化された。これは、難民認定者を自動的にあらゆる公的給付の対象とするわけではないことを示す例だ。
4.所得・資産・就労能力:在留資格だけでは決まらない
各国に共通するのは、在留資格を満たしていても、それだけで給付が決まるわけではないという点だ。
日本では世帯単位で生活困窮の状況を確認し、収入や資産、扶養関係などを調査する。
ドイツのGrundsicherungsgeldでは就労能力と困窮状態が重要であり、フランスのRSAでは世帯構成や所得が給付額に反映される。
アメリカのSNAPやSSIでも、対象となる在留資格に加えて、所得や資産などの基準を満たす必要がある。
したがって、外国人の公的扶助を検証するときは、在留資格、滞在期間、保護資格、所得・資産の4項目を分けて確認することが適切だ。
【最新統計】令和5年度の外国籍世帯主の被保護人員6万5683人は何を意味する?
日本の外国人生活保護をめぐる議論で、頻繁に取り上げられる数字が「6万5683人」だ。
この数字は、2025年5月23日の衆議院厚生労働委員会で厚生労働省の政府参考人が説明した、令和5年度における「世帯主が日本国籍を有しない生活保護受給世帯に属する被保護人員数」である。
ここで注意したいのは、6万5683人が外国人だけの受給者数ではないことだ。
生活保護は世帯単位で決定・実施される。そのため、外国籍の世帯主と暮らす日本人の配偶者や子どもも、この統計に含まれる場合がある。
2024年度の最新公表値は6万4993人
2026年時点で確認できる厚生労働省の資料では、令和6年度(2024年度)の同じ指標は6万4993人となっている。
年度別の推移を見ると、次のとおりだ。
- 2015年度:7万2995人
- 2018年度:6万8967人
- 2020年度:6万7729人
- 2022年度:6万6339人
- 2023年度:6万5683人
- 2024年度:6万4993人
2023年度から2024年度にかけて690人減少している。2015年度と比較しても、減少傾向が確認できる。
2024年度の被保護人員全体は200万8061人であり、外国籍世帯主の世帯に属する人員が占める割合は3.24%だった。
ただし、この3.24%も外国人だけの受給率ではない。あくまでも、世帯主が日本国籍を有しない世帯に属する人員が、全被保護人員に占める割合である。
外国人の受給率を正確に計算できない理由
2025年5月23日の国会答弁では、外国人だけを区分した受給者数は把握していないと説明されている。
同答弁では、令和5年度の6万5683人を、2023年12月末時点の在留外国人数341万992人で割ると、機械的な計算では約1.9%になるとの説明もあった。
しかし、これは外国人だけの実際の受給率ではない。
分子には日本人の配偶者や子どもが含まれる場合がある一方、日本人が世帯主である世帯に暮らす外国人は、この数字に含まれない場合があるからだ。
分子と分母の対象が一致していないため、約1.9%という数字をそのまま「外国人の生活保護受給率」と紹介するのは適切ではない。
外国人への公的扶助を議論するなら、外国籍世帯主の世帯数、実際の外国籍受給者数、日本人を含む世帯員数、給付総額を区別する必要がある。
数字の定義を正しく理解することが、制度の規模や財政的影響を判断する出発点となる。
【なぜ外国人に支給するのか】人道的理由と制度上の誤解を検証
外国人への生活保護に対しては、「なぜ自国民以外に公的資金を使うのか」という疑問が生じることがある。
この疑問を考えるには、制度を設ける目的と、実際の受給条件を分けて考える必要がある。
理由1:人道上の観点から最低限度の生活を守る
日本の昭和29年通知では、生活に困窮する外国人に対して、一般国民に対する生活保護の取り扱いに準じた保護を行う仕組みが設けられた。
厚生労働省も、一定の外国人への行政措置について、人道上の観点から実施していると説明している。
永住者や特別永住者、定住者など、日本で継続的な生活基盤を持つ人が深刻な生活困窮に陥った場合、生活を維持するための支援が必要になることが背景にある。
また、難民認定者のように、出身国に戻ることが困難な人に対しては、保護資格に応じた公的支援が設けられている。
理由2:長期居住者を社会保障制度の中で扱うため
海外の制度を見ると、長期間その国で生活し、社会との結びつきを持つ外国人に対して、公的扶助へのアクセスを認める考え方が見られる。
フランスのRSAにおける5年以上の就労可能な滞在許可、アメリカのSNAPにおけるLPRの待機期間、イギリスのNRPF制度などは、その国が外国人の居住資格と社会保障へのアクセスをどう結びつけているかを示している。
つまり、外国人への公的扶助は、国籍だけで判断する仕組みではなく、居住実態や法的地位、社会的な結びつきを踏まえた制度設計の一部となっている。
理由3:難民や保護対象者には一般の移住者とは異なる事情がある
難民認定者は、迫害のおそれなどから出身国に戻れない事情を持つ人たちだ。
そのため、各国では一般的な就労移民や短期滞在者とは異なる制度を設けている。
ただし、難民認定を受けたからといって、すべての公的給付を無条件で受けられるわけではない。アメリカのSNAPのように、2025年以降の法改正で対象資格が縮小された例もある。
この違いを理解せず、「難民ならどの国でも生活保護を受けられる」と考えるのは正確ではない。
よくある誤解:外国人なら誰でも生活保護を受けられるわけではない
外国人への公的扶助については、次のような誤解がある。
誤解1:日本に住んでいる外国人は全員生活保護を申請できる。
実際には、行政措置の対象となる在留資格などの条件がある。短期滞在者や一般的な留学生などが一律に対象になるわけではない。
誤解2:永住者には日本人と同じ生活保護法上の受給権がある。
最高裁判所は2014年7月18日、永住者であっても生活保護法上の受給権を有しないと判断している。実際の保護は行政措置によるものだ。
誤解3:外国人への生活保護は日本独自の制度である。
アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにも外国人向けの公的扶助制度がある。ただし、日本と同じ法的構造や受給条件ではない。
誤解4:6万5683人は全員外国人である。
この統計は外国籍世帯主の世帯に属する人員数であり、日本人の家族も含まれる場合がある。
【プロの結論】外国人への生活保護を判断する4つの基準
外国人に対する公的扶助を正しく評価するには、次の4つの視点が欠かせない。
第一に、法的根拠を確認すること。日本のように法律上の受給権と行政措置を分けている国もあれば、外国人を一定の条件で法律上の給付対象とする国もある。
第二に、対象となる在留資格を確認すること。永住者、長期居住者、難民認定者、短期滞在者では、利用できる制度が異なる。
第三に、滞在年数の条件を確認すること。日本の行政措置、フランスの5年要件、アメリカのSNAPの待機期間などを混同してはいけない。
第四に、統計の分母と分子を確認すること。外国籍世帯主の世帯員数と外国人本人の受給者数は同じではない。国際比較でも、給付制度の対象者や集計方法をそろえる必要がある。
外国人への公的扶助をめぐる議論は、賛成か反対かという単純な対立だけでは制度の実態を捉えられない。法的な権利、行政措置、居住資格、人道的保護、財政負担を分けて検討することが重要だ。
【外国人に生活保護を出す国】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:外国人に生活保護を出している国は日本だけですか?
A1:いいえ。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにも外国人が一定の条件で利用できる公的扶助があります。ただし、制度の内容や在留資格、滞在年数などの受給条件は国ごとに異なります。
Q2:日本では永住者や定住者なら生活保護を受けられますか?
A2:永住者や定住者などは、一定の条件の下で生活保護法に準じた行政措置の対象となります。ただし、最高裁判所平成26年7月18日判決により、外国人には生活保護法上の受給権が認められていません。実際の支給には生活困窮の状況などの審査も必要です。
Q3:外国人が日本で生活保護を受けるために5年以上の滞在が必要ですか?
A3:外国人への行政措置には、すべての対象者に共通する一律の5年間の滞在要件はありません。対象となる在留資格が重要です。ただし、永住許可そのものには原則10年以上の在留など、別の条件があります。
Q4:難民申請中の外国人も生活保護を受けられますか?
A4:難民申請中であることと、難民認定を受けていることは異なります。日本では認定難民が行政措置の対象として整理されていますが、申請中の人が認定難民と同じ条件で自動的に対象になるわけではありません。
Q5:令和5年度の外国人生活保護受給者は6万5683人ですか?
A5:正確には、外国籍世帯主の生活保護受給世帯に属する被保護人員数が6万5683人です。外国人本人だけの人数ではありません。厚生労働省の2024年度公表値では同じ指標が6万4993人となっています。
まとめ:外国人への生活保護は日本独自ではない、2026年は制度の違いに注目
2026年現在、外国人に公的扶助を提供する国は日本だけではない。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにも、それぞれ外国人の在留資格や滞在期間、難民認定などに応じた支援制度が存在する。
一方、日本の制度には独自の法的構造がある。生活保護法第1条・第2条は日本国民を対象とし、外国人への保護は昭和29年の厚生省社会局長通知に基づく行政措置として実施されている。最高裁判所平成26年7月18日判決も、この区別を明確にした。
統計面では、令和5年度の6万5683人という数字だけでなく、2024年度の最新公表値である6万4993人も確認する必要がある。いずれも外国籍世帯主の世帯に属する人員数であり、外国人だけの受給者数とは異なる。
今後の議論で重要になるのは、外国人への支給を一律に論じるのではなく、対象となる在留資格、行政措置の法的根拠、受給審査、給付実績を透明化することだろう。
国際比較から見えてくるのは、外国人への公的扶助を認めるか否かという単純な問題ではなく、どのような条件で社会保障へのアクセスを認め、国民の生活保障と人道的な保護を両立させるかという各国共通の政策課題である。
主な公的根拠資料
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