【検証】スキルス胃がんが完治した人はいる?実際の長期生存例
結論からいえば、スキルス胃がんでも、長期間再発せずに生活している人や、臨床報告で治癒例と位置づけられた患者さんは存在します。ただし、早期胃がんと同じ感覚で「完治しやすい」と考えることはできません。
特に注目したいのが、2026年7月発行の医学専門誌「臨床雑誌 外科」に掲載された、スキルス胃がんの腹膜播種に対する包括的治療の報告です。
同報告では、過去20年間に腹膜播種を伴うスキルス胃がん320例に対して、腹膜切除と周術期化学療法を組み合わせた治療を実施。そのうち、14例が5年以上の無再発生存を達成した症例として紹介されています。
単純計算では約4.4%に相当しますが、これは特定の治療方針を採用した施設の症例集積であり、一般のスキルス胃がん患者全体に当てはまる治癒率ではありません。
また、同じ報告では、包括的治療を受けた場合でも約80%の症例で再発・死亡が生じたとされています。腹膜切除や腹腔内温熱化学療法を組み合わせる高度な治療にも、依然として大きな課題が残っています。
この研究が示しているのは、スキルス胃がんの腹膜播種が必ずしも絶対的な治療不可能を意味するわけではない一方、長期無再発を実現できる患者さんは限られているという現実です。なお、腹膜切除や術中温熱化学療法を組み合わせる治療は、一般的な標準治療として確立されたものではなく、専門施設での適応判断が必要です。
10年以上の無再発生存を達成した胃がん症例も報告

もう一つ参考になるのが、2023年2月の日本胃癌学会総会記事に掲載された症例報告です。
帝京大学の研究成果として公開された報告には、胃がんの腹膜播種が化学療法後に消失し、その後に胃切除術を受けて、10年以上の無再発生存を達成した症例が記録されています。
この症例は、薬物療法によって病変が縮小・消失した後、手術でがんを取り切れる状態になったことが大きなポイントです。ただし、この報告だけからスキルス胃がんに限定した成績を判断することはできません。
重要なのは、治療開始時点で手術が難しいと判断された胃がんでも、その後の治療反応によって状況が変化する患者さんがいることです。
長期生存を実現した人に共通する医学的条件
個々の症例は異なりますが、長期生存につながる可能性を考えるうえで、次の要素が重要です。
- がんの進行範囲が限定されている。
- 化学療法によって腫瘍が十分に縮小している。
- 腹膜播種や腹腔内のがん細胞が消失、または十分に制御されている。
- 手術によって肉眼的・病理学的にがんを取り切れる可能性がある。
- 患者さんの全身状態が良好で、必要な治療を継続できる。
- がんの性質に適合した薬物療法を選択できている。
特に注目したいのが、R0切除です。これは手術でがんを取り切り、切除断端にがんが残っていないと判断される状態を指します。
ただし、R0切除が実現しても、体内に残った画像では確認できない微小ながん細胞まで完全になくなったとは限りません。そのため、術後補助化学療法や定期的な経過観察が重要になります。
【病気の正体】スキルス胃がんはなぜ進行しやすく、腹膜播種を起こすのか
スキルス胃がんの予後を考えるには、まず一般的な胃がんとの違いを理解する必要があります。
スキルス胃がんは、胃の壁が硬く厚くなりながら、周囲との境界がはっきりしない形で広がっていくタイプの胃がんです。臨床的には4型胃がん、びまん浸潤型胃がんなどと関連づけて説明されます。
国立がん研究センターのがん情報サービスによると、胃の壁を硬く厚くさせながら広がるタイプがスキルス胃がんと呼ばれます。粘膜に目立った変化が出にくいため、進行していない段階で発見することが難しい場合があります。
腹膜播種が予後に与える影響
スキルス胃がんで特に注意される合併病態が腹膜播種です。
腹膜播種とは、胃の壁を越えて広がったがん細胞が腹腔内に散らばり、腹膜や腸の表面などに定着して増殖する状態を指します。
胃がんが漿膜を越えて進行すると、腹膜播種を起こすことがあります。腹膜播種が認められると、原則として遠隔転移を伴うステージIVに分類され、治療の考え方も大きく変わります。
腹膜播種が問題になる理由は、通常のCT検査などでは非常に小さな病変をすべて確認することが難しい点にもあります。画像上で明らかな転移が見つからなくても、腹腔内にがん細胞が存在する可能性があります。
そのため、腹膜播種が疑われる進行胃がんでは、腹腔鏡を使って腹腔内を直接確認する審査腹腔鏡や、腹腔洗浄細胞診が治療方針の決定に役立つ場合があります。
CY1とP1は同じではない
腹膜播種に関連して、診断書や検査結果で見かけることがあるのがCY1とP1です。
- CY1: 腹腔内を洗浄した液からがん細胞が検出された状態。
- P1: 腹膜に転移病変が確認された状態。
CY1は目に見える腹膜転移がなくても、腹腔内にがん細胞が存在することを意味します。P1は実際に腹膜転移が確認されている状態です。
日本胃癌学会の胃癌治療ガイドライン第7版では、腹膜表面への転移やCY1はM1に分類されます。ただし、CY1と腹膜に多数の転移結節がある状態では、病変の広がりや治療戦略に違いがあります。
したがって、腹膜播種の有無だけでなく、転移の範囲、細胞診の結果、他臓器への転移、薬物療法への反応を総合的に確認することが必要です。
【データ検証】スキルス胃がんの5年生存率とステージ別生存率
「スキルス胃がんの5年生存率は何%なのか」という疑問は非常に多くあります。
しかし、ここで注意したいのは、一般的な胃がん全体の生存率とスキルス胃がんだけの生存率は同じではないことです。
国立がん研究センターが公開する院内がん登録の生存率集計では、胃がんの病期別データを確認できます。一方、以下の数値はスキルス胃がんだけを抽出した統計ではありません。
胃がん全体のステージ別5年生存率
2014~2015年に診断された胃がん患者を対象とした院内がん登録の集計では、病期別の5年ネット・サバイバルは次のとおりです。
出典:国立がん研究センター「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」2014~2015年診断、男女合計、全年齢、手術の有無を問わない集計。
胃がんの病期別5年ネット・サバイバル
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{item.s}{item.v}%
{/each}
胃がん全体の集計値であり、スキルス胃がん個別の予測値ではありません。
同じ集計における5年実測生存率は、ステージIが82.0%、ステージIIが60.2%、ステージIIIが37.4%、ステージIVが5.8%です。
ネット・サバイバルは、がん以外の死因による影響を統計的に調整した生存指標です。実測生存率とは算出方法が異なります。
ステージ別に見る治療と予後の考え方
この数字から分かるのは、胃がんの予後において病期が大きな意味を持つということです。
ただし、ステージIのスキルス胃がん患者さんが必ず92.8%の確率で5年生存できるという意味ではありません。スキルス胃がん固有の組織型や進展の仕方は、この集計だけでは反映されません。
スキルス胃がんだけの5年生存率が分かりにくい理由
生存率は、診断された患者さんの年齢、病期、組織型、治療内容、観察期間などによって変わります。
スキルス胃がんは胃がんの一つの形態的特徴を表す呼称であり、独立した全国統計としてすべての患者さんを同じ条件で比較できるデータが十分に整っているわけではありません。
また、2014~2015年の患者データと2026年に治療を受ける患者さんでは、薬物療法の選択肢にも違いがあります。古い統計を現在の治療成績としてそのまま当てはめることは適切ではありません。
生存率は治療の見通しを考えるための資料であり、個人の余命や治癒可能性を決める数字ではないのです。
【治療の現実】スキルス胃がんの手術と化学療法はどこまで効果がある?
スキルス胃がんの治療では、手術、抗がん剤治療、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを、病期や患者さんの状態に応じて組み合わせます。
治療の目的は大きく分けて二つあります。がんを取り切って治癒を目指す治療と、進行・再発したがんを抑えて生存期間や生活の質を改善する治療です。
手術でがんを取り切れる場合
遠隔転移や腹膜播種がなく、手術でがんを取り切れると判断された場合には、胃切除とリンパ節郭清が治療の中心になります。
切除した組織の病理検査で再発リスクを評価し、必要に応じて術後補助化学療法を実施します。
特にステージII・IIIでは、手術だけで治療を終わらせず、目に見えない微小ながん細胞による再発を防ぐための薬物療法が検討されます。
スキルス胃がんでは、手術時に明らかな腹膜播種がなくても、後から腹膜再発が見つかることがあります。そのため、手術後も継続的な経過観察が欠かせません。
腹膜播種がある場合は抗がん剤治療が中心
腹膜播種が確認され、最初からがんを完全に取り切ることが難しい場合は、全身化学療法を中心に治療を進めるのが基本です。
抗がん剤治療には、がん細胞の増殖を抑える細胞障害性抗がん薬、特定のタンパク質を標的とする分子標的薬、免疫の働きを利用する免疫チェックポイント阻害薬があります。
薬物療法によって腫瘍が縮小したり、腹膜播種が画像上確認できなくなったりする患者さんもいます。しかし、画像で病変が見えなくなったことと、体内からがん細胞が完全に消失したことは同じではありません。
治療効果はCTや内視鏡、血液検査、必要に応じた腹腔鏡や腹腔洗浄細胞診などを組み合わせて判断します。
2026年10月に公表された注目の多施設研究
2026年10月27日、静岡県立静岡がんセンターは、腹腔洗浄細胞診陽性または限局性腹膜転移を有する胃がんの治療成績に関する研究を公表しました。
この研究は、日本全国の胃がん専門48施設で、2016~2022年に治療を受けたCY1またはP1aの患者さん1,181人を対象にしたものです。
その他の遠隔転移がない患者さんについて、手術と化学療法の組み合わせ方を比較しています。
2026年研究で報告された5年全生存率
化学療法後に胃切除39.9%
胃切除後に化学療法31.4%
化学療法が奏効し、腹膜転移・洗浄細胞診が陰性化した後に胃切除50.5%
対象はCY1またはP1aの胃がん患者。スキルス胃がんだけの数値ではありません。
この結果で特に目を引くのは、化学療法がよく効き、腹膜転移が認められなくなり、腹腔洗浄液からもがん細胞が検出されなくなった後に胃切除を受けた患者さんの5年全生存率が50.5%だった点です。
一方、胃切除のみの群は10.3%、化学療法のみの群は3.2%でした。
ただし、これらは過去の診療記録を分析した観察研究です。治療が奏効した患者さんは、もともと手術に進める状態だった可能性があり、治療順序による効果だけを証明したものではありません。
したがって、この研究を根拠に、腹膜播種があれば誰でも手術を受けたほうがよいと判断することはできません。
それでも、化学療法への反応を慎重に見極めたうえで、手術を含む集学的治療を検討する意義を示した、2026年の重要な研究です。
コンバージョン手術とは?
コンバージョン手術とは、当初は切除不能と判断された進行胃がんに対して、化学療法などで十分な効果が得られ、手術によって根治切除できる可能性が出てきた段階で行う手術です。
一般的な手術とは異なり、薬物療法の効果を確認してから手術の適応を再評価する点が特徴です。
ただし、日本胃癌学会の2025年改訂第7版では、ステージIVに対するコンバージョン手術について、現時点ではエビデンスが不足しており、明確な推奨を示すことは難しいとされています。
手術を行う場合は、がんを完全に切除できる見込み、腹膜播種の消失、他の転移の有無、患者さんの体力などを慎重に検討する必要があります。
【2026年最新】スキルス胃がんの薬物療法とバイオマーカー検査
2026年の胃がん治療で押さえておきたい変化は、患者さんのがんの性質を検査し、その結果に応じて薬剤を選ぶ個別化医療です。
以前は抗がん剤の組み合わせが中心でしたが、現在はHER2、PD-L1、CLDN18.2、MSI/MMRなどの検査結果によって、分子標的薬や免疫療法を組み合わせる選択肢があります。
日本胃癌学会のガイドラインは2026年にどう変わった?
2026年10月時点で、ガイドラインの位置づけを整理すると次のとおりです。
患者さんのための胃がん治療ガイドライン2026年版
日本胃癌学会編・2026年2月刊行
検査、手術、薬物療法などを患者さんと家族向けに解説した改訂版です。
胃癌治療ガイドライン第7版
2025年3月改訂
手術、化学療法、臨床的な疑問に対する推奨などをまとめた医療者向けの指針です。
切除不能進行・再発胃癌バイオマーカー検査の手引き第3版
薬物療法の選択に必要なバイオマーカー検査について、最新の情報をまとめています。
ここで重要なのは、「2026年版のガイドライン」という表現を一括りにしないことです。患者向けの2026年版と、医療者向けの2025年改訂第7版は別の刊行物です。
また、日本胃癌学会は2026年7月にバイオマーカー検査の手引き第3版を公開しています。
HER2・PD-L1・CLDN18.2検査で何が分かる?
進行・再発胃がんでは、一次化学療法を始める前に、複数のバイオマーカーを確認することが勧められています。
国立がん研究センターによると、胃がん患者さんのうちHER2陽性は約15~20%、MSI-Highは約5%とされています。
HER2陽性ならHER2を標的とする薬剤を含めた治療、HER2陰性でCLDN18.2陽性ならゾルベツキシマブを含めた治療など、検査結果に応じて薬剤の選択肢が変わります。
PD-L1の発現やMSI/MMRの状態も、免疫チェックポイント阻害薬を使用するかどうかの判断材料になります。
ただし、これらの検査結果が良好だからといって必ず治癒できるわけではありません。検査結果、病期、体の状態、過去の治療歴などを合わせて判断することが必要です。
抗がん剤治療の効果はどのように判断する?
薬物療法の効果は、CTや内視鏡などの画像検査を使い、治療前と治療後の状態を比較して評価します。
腫瘍の大きさが小さくなった場合だけでなく、病変が増えていない状態を維持できていることも治療上の意味があります。
一方、腹膜播種は小さな病変が画像に映りにくいこともあるため、CTだけで完全な消失を判断することはできません。
また、抗がん剤の副作用が強い場合は、薬の減量や変更、投与間隔の調整などを検討します。無理に同じ治療を続けることだけが最善ではありません。
2026年の治療では、一次治療だけでなく、二次・三次治療以降の選択肢も含めて、患者さんの状態に応じた治療計画を立てることが大切です。
【再発リスクと判断基準】5年無再発なら完治?セカンドオピニオンは必要?
長期生存を目指す患者さんにとって、治療が終わった後の再発リスクも大きな問題です。
特にスキルス胃がんでは、手術によって肉眼的にがんを取り切れた場合でも、腹膜再発などが起こる可能性があります。
5年生存と5年無再発は意味が違う
混同されやすいのが「5年生存率」と「5年無再発生存率」です。
- 5年生存率: 診断から5年後に生存している人の割合。再発の有無は問わない。
- 5年無再発生存率: 治療後5年間、再発が確認されずに生存している人の割合。
- 臨床的な治癒: がんが認められず、再発の可能性が十分に低くなったと判断される状態。
5年生存したからといって、必ずしも完治したとは限りません。再発しながら治療を継続して5年以上生存している人も含まれるためです。
一方、5年以上無再発で生活している患者さんは、長期生存の重要な実例です。
ただし、5年という期間を過ぎれば再発の可能性が完全にゼロになるという医学的な保証はありません。がんの種類や治療内容によっては、さらに長い期間の経過観察が必要になります。
スキルス胃がんの再発リスクを左右する要素
再発の可能性を考える際には、次の項目を確認することが大切です。
1. 手術前の病期と腹膜播種の有無
2. リンパ節転移や他臓器への転移の状況
3. 手術でがんを取り切れたかどうか
4. 病理検査で確認されたがんの広がり
5. 術後補助化学療法を実施できたか
6. 治療後の画像検査や血液検査の推移
7. 腹腔洗浄細胞診などの結果
特にスキルス胃がんでは、腹膜播種や腹腔内の微小転移が再発リスクを考えるうえで重要です。
治療後に腹痛、腹部膨満、食欲低下、体重減少、吐き気などの症状が続いたり、新たに現れたりした場合は、早めに担当医へ相談してください。症状だけで再発を判断することはできません。
スキルス胃がんでセカンドオピニオンを検討したいケース
スキルス胃がんでは、手術の適応や薬物療法の組み合わせ、腹膜播種への対応など、専門的な判断が必要になる場面があります。
次のような場合には、胃がんを専門的に診療する別の医師の意見を聞くことが役立つ可能性があります。
- ステージIVと診断され、治療の選択肢を詳しく知りたい。
- 腹膜播種があるが、手術の可能性を確認したい。
- 抗がん剤治療が効いているため、コンバージョン手術の適応を相談したい。
- HER2・PD-L1・CLDN18.2などの検査が実施されているか確認したい。
- 現在の治療方針以外に、臨床試験などの選択肢があるか知りたい。
国立がん研究センターのがん情報サービスでは、セカンドオピニオンを、現在の担当医とは別の医師から診断や治療について助言を受ける仕組みと説明しています。
セカンドオピニオンは必ずしも転院を意味しません。現在の担当医のもとで治療を継続しながら、別の専門医の意見を聞くこともできます。
受診する際には、紹介状、病理診断の結果、CTやMRIなどの画像データ、これまでの治療内容を準備すると、具体的な検討につながります。
なお、セカンドオピニオンは原則として保険適用外の自費診療です。治療開始を不必要に遅らせないよう、受診時期も担当医と相談しましょう。
【プロの結論】スキルス胃がんで希望を持つために知っておきたいこと
スキルス胃がんの治療を考えるうえで、最も避けたいのは「スキルスだから完治しない」と最初から可能性を閉ざしてしまうことです。
反対に、長期生存例だけを見て「抗がん剤が効けば必ず治る」「腹膜播種が消えれば手術で完治する」と考えるのも危険です。
2026年の医療情報から見えてくるのは、治療の可能性を判断するには、病期、転移の範囲、薬物療法への反応、手術による完全切除の見込みを一つずつ確認する必要があるということです。
希望を持つために確認したい5つのポイント
1.現在の病期を正確に把握する。
ステージだけでなく、腹膜播種、CY1、リンパ節転移、遠隔転移の有無まで確認することが大切です。
2.抗がん剤治療の効果を定期的に評価する。
腫瘍の縮小や病変の変化だけでなく、腹膜播種や腹腔内のがん細胞の状態も確認します。
3.バイオマーカー検査の結果を把握する。
HER2、PD-L1、CLDN18.2、MSI/MMRの検査結果によって、使用できる薬剤や治療戦略が変わる場合があります。
4.手術の可能性を適切なタイミングで再評価する。
最初に切除不能と判断されても、薬物療法の効果によって手術を検討できる状態に変化することがあります。ただし、手術がすべての患者さんに適しているわけではありません。
5.必要に応じて専門医の意見を聞く。
スキルス胃がんや腹膜播種の診療経験が豊富な医療機関で、現在の治療方針や臨床試験の可能性について相談することも選択肢です。
治療の目標は、必ずしも一度に「完治」という結果だけを目指すことではありません。がんを小さくする、進行を抑える、手術の可能性を広げる、症状を和らげるなど、一つずつ達成できる目標を積み重ねていくことにも意味があります。
スキルス胃がんが完治した人に関するよくある質問(FAQ)
Q1:スキルス胃がんが完治した人は本当にいるのでしょうか?
A1:います。2026年7月の専門誌に掲載された報告では、腹膜播種を伴うスキルス胃がん320例に包括的治療を行い、14例が5年以上無再発生存したとされています。ただし、専門施設の症例報告であり、一般的な治癒率を示す数字ではありません。
Q2:スキルス胃がんのステージ4でも長期生存できますか?
A2:長期生存例は報告されています。化学療法が奏効した後に完全切除を目指す治療などが検討される場合もあります。ただし、ステージIVの治療成績は厳しく、すべての患者さんに手術が適応になるわけではありません。
Q3:腹膜播種が消えれば完治したと考えてよいですか?
A3:必ずしもそうではありません。画像検査で腹膜播種が確認できなくなっても、微小ながん細胞が残っている可能性があります。腹腔洗浄細胞診や病理検査、手術の結果などを総合的に評価する必要があります。
Q4:スキルス胃がんの抗がん剤治療は効果がありますか?
A4:効果が得られる患者さんはいます。腫瘍の縮小や進行の抑制が期待でき、薬物療法によって手術の可能性が生まれる場合もあります。効果には個人差があり、バイオマーカー検査などを踏まえた薬剤選択が重要です。
Q5:スキルス胃がんは5年生存すれば完治ですか?
A5:5年生存と5年無再発は異なります。5年生存は再発の有無を問いません。5年以上無再発であれば長期生存の重要な目安になりますが、再発リスクが完全になくなることを意味するわけではありません。
Q6:2026年の最新治療では何を検査すべきですか?
A6:進行・再発胃がんでは、HER2、PD-L1、CLDN18.2、MSI/MMRなどのバイオマーカー検査が治療選択に関係します。実施する検査や薬剤の適応は病状によって異なるため、担当医に検査結果と治療への反映方法を確認してください。
Q7:スキルス胃がんと診断されたらセカンドオピニオンを受けるべきですか?
A7:必須ではありませんが、手術の適応や薬物療法の選択に迷う場合、腹膜播種がある場合などには有益なことがあります。現在の担当医に相談し、胃がんの専門医から別の意見を聞くことを検討できます。
まとめ:スキルス胃がんでも長期生存・治癒を目指す道はある
スキルス胃がんが完治した人はいるのかという問いに対する答えは、医学的な報告に照らせば「いる」です。腹膜播種を伴う症例でも、化学療法と手術を組み合わせて長期間無再発で生活している患者さんが報告されています。
2026年7月の専門誌に掲載されたスキルス胃がん320例の報告では、14例が5年以上無再発で生存しました。また、2026年10月には、腹膜播種に関連する胃がん1,181例を対象とした国内48施設の研究も公表され、薬物療法が奏効した患者さんに対する手術を含む治療の可能性が示されています。
一方で、これらの研究はすべての患者さんに同じ治療効果を保証するものではありません。特に腹膜播種を伴う場合は、再発リスクや治療の負担も含めて慎重な判断が必要です。
日本胃癌学会の患者向け2026年版ガイドライン、医療者向け第7版、国立がん研究センターのがん情報サービスを参考にしながら、現在の病期、転移の範囲、薬物療法への反応、バイオマーカー検査の結果を確認することが、治療方針を考える第一歩になります。
スキルス胃がんという診断だけで、将来の可能性がすべて決まるわけではありません。 長期生存例から希望を見いだしつつ、医学的な根拠に基づいて治療の選択肢を一つずつ検討していくことが大切です。
治療の判断に迷ったときは、主治医との話し合いや専門医へのセカンドオピニオンを通じて、納得できる治療計画を立ててください。
主な参照資料:日本胃癌学会「患者さんのための胃がん治療ガイドライン2026年版」「胃癌治療ガイドライン第7版」「切除不能進行・再発胃癌バイオマーカー検査の手引き第3版」、国立がん研究センター「がん情報サービス」、静岡県立静岡がんセンターの2026年10月研究発表、2026年7月発行「臨床雑誌 外科」。