スイス安楽死の実態を2026年解説!刑法115条・費用・日本人の利用条件を徹底解剖
スイスでは、一定の法的・医学的条件を満たした場合、第三者が本人の自殺を支援する「自殺ほう助」が認められています。世界的に知られるディグニタス(DIGNITAS)やEXITなどの団体が関わっており、外国人が利用できる制度も存在します。ただし、日本で一般的に使われる「安楽死」という言葉と、スイスで認められている制度は、法律上まったく同じものではありません。
2026年11月現在、制度の根拠となるのはスイス刑法115条を中心とした法的枠組みです。本人の判断能力、自己決定の自由、医師による医学的評価などが関係し、積極的安楽死とは明確に区別されています。日本人の利用実績、団体ごとの役割、費用、2026年の法規制をめぐる議論まで、知っておきたい事実を整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】 - 制度の法的根拠: スイス刑法115条は、利己的な動機による自殺の教唆・ほう助を処罰する規定であり、一定の条件下では自殺ほう助が処罰されない仕組みになっている。 - 利用条件: 本人の判断能力と自由意思が不可欠。医療倫理指針では、耐え難い苦痛や代替手段の検討なども求められる。 - 外国人の利用: ディグニタスは外国人にも対応している。日本人についても過去の利用報告があるが、国籍だけで利用が認められるわけではない。 - 費用と団体: ディグニタスの公表料金は7,500~11,000スイスフランが目安で、別途税金や渡航費などが関係する。 - 2026年の動向: 制度の包括的な法規制や医療従事者の責任、判断能力を失った場合の扱いなどが議論されている。
【制度の基本】スイス安楽死とは?刑法115条と自殺ほう助の法律を解説

制度を理解するうえで最初に押さえたいのは、「安楽死」と「自殺ほう助」の違いです。
スイスでは安楽死そのものが全面的に認められているわけではない
スイスの制度を理解する際、最も重要なのが「自殺ほう助」という考え方です。
日本語ではスイス安楽死と呼ばれることが多いものの、法律上認められている中心的な仕組みは、本人が自分の意思で最終行為を行う自殺ほう助です。
つまり、医師や支援団体が本人に代わって死亡させる制度ではありません。
本人の判断能力が保たれ、自由意思に基づく決定であることなどが前提となり、最終的な行為も本人自身が行わなければなりません。
この点は、スイス連邦法務省が2026年3月5日に公表した「The various forms of euthanasia and their position in law」でも整理されています。
スイス刑法115条が定める内容
スイス刑法115条は、自殺の教唆・ほう助について規定しています。
条文の中心的な考え方は、利己的な動機で他人の自殺を教唆したり、実行を助けたりした場合に処罰するというものです。
該当する場合、最高5年の自由刑または罰金刑が科される可能性があります。
ここで注意したいのは、115条が「安楽死を積極的に認める法律」ではないという点です。
同条は、一定の動機による自殺ほう助を犯罪として規定しています。その反対解釈によって、利己的な動機がなく、ほかの法的要件も満たしている場合には、自殺ほう助が直ちに犯罪とはならない仕組みになっています。
また、本人の意思に反して第三者が死亡させる行為や、本人に代わって死亡を実現する行為は別の犯罪として扱われます。
刑法114条との違いも重要
スイス刑法には114条もあります。
これは、本人から真摯かつ強い希望があったとしても、第三者が本人を直接死亡させる行為を対象とする規定です。
慈悲や同情を理由とした場合でも、本人の依頼を受けて第三者が死亡させれば、原則として処罰の対象になります。
したがって、115条と114条の違いは、単純に本人が死を望んでいたかどうかではありません。
最終的に誰が死亡に至る行為を行ったのかが、法律上の重要な区別になります。
スイスには自殺ほう助を包括的に定める連邦法があるのか
2026年11月現在、スイスには自殺ほう助の手続き全体を統一的に規定する独立した連邦法はありません。
刑法、麻薬法、医療関係法令、医師の職業倫理、各団体の規約などが組み合わさって制度を支えています。
さらに、ジュネーブ、ヴォー、ヌーシャテル、ヴァレーなど一部の州では、病院や公的医療施設における自殺ほう助について独自の規定があります。
このように、連邦法と州の制度、医療専門職の規範が重なっていることがスイスの特徴です。
【利用条件】判断能力と自己決定権はどこまで求められる?
スイスの自殺ほう助をめぐって、特に慎重に扱われるのが本人の判断能力です。
本人が死を望んでいるという事実だけでは、医学的・倫理的に十分な条件を満たしたことにはなりません。
判断能力とは何を意味するのか
判断能力とは、自分の置かれた状況や選択肢を理解し、その結果を認識したうえで、自分の意思を形成・表明できる能力を指します。
単に意思表示ができることとは異なります。
医療関係者は、本人が次のような点を理解できているかを慎重に評価します。
- 自分の病状や身体的な状況を理解しているか。
- 選択によって生じる結果を認識しているか。
- 他人の圧力や経済的事情に左右されていないか。
- 自分の意思を継続的かつ一貫して説明できるか。
認知機能の低下や精神疾患がある場合には、特に慎重な医学的評価が必要です。
精神疾患があるという理由だけで一律に判断能力がないとされるわけではありませんが、精神疾患に伴う自殺念慮には治療可能な症状もあるため、専門的な検討が欠かせません。
スイス医療倫理指針が示す4つの要件
スイス医学アカデミー(SAMS)は、医療従事者向けに「Management of dying and death」という医療倫理指針を定めています。
自殺ほう助の倫理的な判断では、次の4項目が重要です。
1. 判断能力: 本人が自分の意思決定について十分な判断能力を有していること。
2. 自己決定: 死を望む意思が自律的で、十分に考えられ、外部からの圧力によるものではないこと。
3. 深刻な苦痛: 医学的に確認できる重い症状や機能障害に伴い、本人が耐え難い苦痛を経験していること。
4. 代替手段の検討: 緩和ケアなどの選択肢について検討され、適切ではない、または本人が受け入れないと判断されていること。
さらに、判断能力と自己決定については、医師以外の独立した第三者による確認も求められます。
健康な人や精神疾患のある人も対象になるのか
この問題は、スイスの法制度をめぐる議論で特に誤解されやすい部分です。
刑法115条の条文自体には、終末期であることや余命が一定期間以内であることを一律に定める規定はありません。
しかし、それは健康な人が希望すれば自由に医療的支援を受けられるという意味ではありません。
SAMSの医療倫理指針では、医学的に定義できる重い疾患や機能障害による耐え難い苦痛が重視されています。2021年に明確化された指針では、健康な人への自殺ほう助は倫理的に正当化されないとされています。
また、スイス連邦最高裁判所の判例を踏まえ、健康な人への医療用薬剤の処方については、医師が医薬品法や麻薬法、職業上の義務に基づく責任を問われる可能性があります。
つまり、刑法上の処罰対象にならないことと、医師が医学的に処方できることは別問題です。
【関係団体を比較】EXITとディグニタスの役割・法律上の位置づけ
スイスの自殺ほう助をめぐる議論では、民間の非営利団体が大きな役割を担っています。
代表的なのがEXITとディグニタスです。
ただし、両者は同じ利用条件を採用しているわけではありません。
主な団体・法律・関係機関の比較
EXITとはどのような団体なのか
自殺ほう助だけでなく、事前指示書の作成支援、病気や高齢期の相談、自殺予防なども活動に含まれています。
EXITドイツ語圏の公式情報によると、2025年末時点の会員数は195,836人でした。
同年の実績は以下のとおりです。
- 年間の相談・申請件数:3,500件超
- 審査後の承認件数:1,783件
- 実際に実施された自殺ほう助:1,421件
申請数と実施数には大きな差があり、会員になったからといって必ず支援を受けられるわけではありません。
ディグニタスはなぜ世界的に知られているのか
EXITとは異なり、スイス国外に住む人々からの相談や会員登録にも対応していることが、国際的に知られる理由の一つです。
ディグニタスの活動は、自殺ほう助だけに限られません。
- 終末期の選択肢についての情報提供
- 自殺予防に関する相談
- 緩和ケアや事前指示書に関する情報提供
- 自己決定権に関する法的・政治的活動
- 医療・法律関係者への情報提供
2025年11月29日には、創設者のミネリ氏が亡くなりました。同団体の2026年発表によると、後継体制は以前から準備されており、組織としての活動は継続されています。
【日本人は利用できる?】外国人の自殺ほう助と費用・手続きの実態
日本人がスイスの制度を利用できるのかという疑問には、制度上の可能性と個別の審査を分けて考える必要があります。
日本人の利用は過去に報告されている
2017年4月、朝日新聞系メディアのwithnewsは、ディグニタスへの取材結果を報道しました。
それによると、2015~2016年に同団体の支援を受けた人の中に、日本人1人と日本在住の外国籍の人2人が含まれていたとされています。
当時、ディグニタスは3人のうち日本生まれの人は1人で、残る2人は日本生まれではなく別の国籍だったと説明しました。
ただし、性別、年齢、病状などの詳細は公表されていません。
この報道は、日本人にも過去の利用事例が存在したことを示す資料ですが、2026年現在の日本人利用者数を示すものではありません。
ディグニタスが2026年3月に公表した2025年の活動報告にも、日本人の利用件数を独立して示す統計は掲載されていません。
EXITとディグニタスでは外国人への対応が異なる
ここは非常に重要な違いです。
EXITドイツ語圏の公式会員規定では、会員資格は原則として成人したスイス国民、またはスイスに居住する人に限定されています。
一方、ディグニタスは外国在住者にも対応する団体です。
したがって、日本に住んでいる日本人がスイスの団体について調べる場合、EXITとディグニタスを同じ条件の組織として扱うことはできません。
ただし、外国人を受け入れていることは、希望すれば誰でも利用できることを意味しません。医学的評価、判断能力、自由意思などの審査が別途関係します。
ディグニタスの費用はどれくらいなのか
費用については、ディグニタスが公式に公表している料金情報が参考になります。
同団体の公表額は、サービス内容に応じて次のように構成されています。
| 費用項目 | 公表額 |
|---|---|
| 事前準備に関する費用 | 4,000CHF |
| 医師の診察・関連事務費 | 1,000CHF |
| 団体の支援サービスに関する費用 | 2,500CHF |
| 葬儀・火葬関連費用 | 約2,500CHF |
| 死亡後の行政手続き関連費用 | 1,000CHF |
ディグニタスの公表する総額の目安は、関連手続きを含めて11,000スイスフラン、葬儀や行政手続きを団体が担当しない場合は7,500スイスフランです。
いずれも付加価値税は含まれず、変更される可能性があります。また、会費、渡航費、滞在費、医療資料の準備にかかる費用などは別に考える必要があります。
経済的に困難な会員については、団体の規約に基づき費用の減額や免除が認められる場合もあります。
なお、これらは公表料金の説明であり、支払えば審査に通る、あるいは利用が保証されるという意味ではありません。
自殺ほう助の手続きはどのような仕組みなのか
スイスの自殺ほう助は、単純な申込みだけで成立するものではありません。
制度上は、医療専門家による医学的評価、本人の意思決定能力の確認、代替手段に関する検討、法的書類の確認などが関係します。
医師には医学的・倫理的な判断責任があり、医師自身が支援に同意する義務もありません。
さらに、実際に死亡が発生した場合は、不自然死として当局に届け出られ、必要な調査が行われます。
つまり、民間団体が独自の判断だけで制度を運営しているわけではなく、医療、法律、行政による複数の確認が存在します。
日本の法律との関係も確認しておきたい
日本では、刑法202条に「自殺関与及び同意殺人」の規定があります。
他人を教唆・ほう助して自殺させる行為や、本人の嘱託・承諾を受けて殺害する行為が処罰対象となります。
したがって、スイスで一定の条件下において自殺ほう助が認められているからといって、日本国内でも同様の行為が合法になるわけではありません。
また、日本人が海外で関係する場合の法的責任は、行為の場所、関係者の行為、適用される法律などによって検討する必要があります。国籍だけを理由に一律の結論を出すことはできません。
【2026年最新動向】スイス安楽死の統計と法規制をめぐる議論
2026年のスイスでは、自殺ほう助の利用状況だけでなく、既存の法制度で十分な保護と監督ができているのかという議論も続いています。
2025年の利用実績から見える制度の変化
2026年に公表された団体の年次報告では、利用実績の増加や国際化が確認できます。
特にEXITとディグニタスの数字は、スイスの制度が国内利用者だけを対象にしたものではないことを示しています。
| 年・時期 | 組織・統計 | 公表された実績 |
|---|---|---|
| 2023年 | スイス全体 | 自殺ほう助による死亡1,729人 |
| 2024年 | スイス全体 | 自殺ほう助による死亡1,774人 |
| 2025年 | EXITドイツ語圏・イタリア語圏 | 1,421人 |
| 2025年 | ディグニタス | 263人 |
| 2025年末 | ディグニタス会員数 | 15,968人 |
| 2025年末 | EXIT会員数 | 195,836人 |
ここで注意したいのは、統計の対象範囲です。
2024年の1,774人はスイス全体の統計ですが、EXITの1,421人は2025年のドイツ語圏・イタリア語圏における団体実績です。単純に数字を並べて増減率を計算することはできません。
また、ディグニタスの2025年実績は263人で、会員数は15,968人でした。同団体によれば、会員のうち実際に自殺ほう助を利用するのは3%未満です。
会員登録と実際の利用は別のものであり、制度に関心を持つことと、実際に利用することを混同してはなりません。
2026年の法規制議論で注目される3つの問題
2026年には、スイス議会で自殺ほう助の法的な枠組みを見直す動きがありました。
主な論点は次の3つです。
1.民間団体への監督を強化するべきか
現在の制度では、刑法や医療関係法令、団体の規約などによって運営されています。
一方、団体の活動内容や判断基準、情報公開、第三者による監督をどこまで法的に統一するべきかについては意見が分かれています。
2026年には包括的な枠組み規制を求める動議25.3944が審議されましたが、連邦議会の上院に相当する全州議会で否決されたことが、議会資料で確認できます。
2.医師の責任と健康な人への対応
もう一つの重要な問題は、医師がどこまで自殺ほう助に関与できるのかという点です。
2026年の議会資料では、健康な人への薬剤処方をめぐる連邦最高裁判所の判断や、医師の職業上の義務が取り上げられています。
刑法115条だけを読めば明確に見える問題でも、医薬品法、麻薬法、医療倫理指針などを合わせて考えると、医師に求められる責任はより複雑になります。
3.判断能力を失った人の事前意思をどう扱うか
2026年8月に提出された終末期の法制度に関する議会案件26.3652では、事前に自殺ほう助を希望していた人が、その後に判断能力を失った場合の扱いなどが論点になりました。
また、判断能力があっても身体的な事情で本人が最終行為を行えない場合についても、法的な整理が必要とされています。
これは、本人の自己決定権を尊重することと、本人が実際に意思を表明・実行できる状態にあることを、どのように両立させるかという問題です。
連邦政府はこの案件について、ポストラートの却下を提案しており、2026年時点でも議論が続いています。
2026年に問われているのは自己決定権と弱者保護のバランス
この議論の根底にあるのは、本人の自由を尊重するだけで制度を設計してよいのかという問題です。
スイス医学アカデミーは、制度の一般化によって、本人が周囲に負担をかけていると感じたり、経済的な事情から死を選ばなければならないと考えたりする危険性にも注意を促しています。
一方で、自己決定権を重視する立場からは、深刻な苦痛を抱える人の選択肢を過度に制限するべきではないという意見もあります。
2026年の議論は、単純な賛成・反対ではなく、本人の意思を尊重しながら、社会的な圧力や不適切な介入をどう防ぐかという制度設計の問題に移っています。
【積極的安楽死との違い】スイスの制度を正しく理解するための判断基準
スイスの自殺ほう助が国際的に注目される理由の一つは、積極的安楽死とは異なる法的な仕組みを採用していることです。
自殺ほう助・積極的安楽死・消極的安楽死の違い
| 分類 | 内容 | スイスでの法的な位置づけ |
|---|---|---|
| 自殺ほう助 | 本人が自ら最終行為を行い、第三者が一定の支援をする | 条件付きで認められる |
| 積極的安楽死 | 医師など第三者が直接、本人を死亡させる | 原則禁止 |
| 消極的安楽死 | 延命措置を開始しない、または中止する | 一定の条件下で認められる |
| 間接的安楽死 | 苦痛緩和を目的とした治療の結果、寿命が短くなる可能性がある | 一般に許容される |
積極的安楽死が認められない理由
スイスでは、本人が強く希望していても、第三者が直接死亡させる行為は刑法114条などによって処罰対象になります。
これは、本人の自己決定権を認めることと、他人が本人の生命を直接奪うことを法律上区別しているためです。
本人の意思が尊重されるとしても、医療従事者が無条件に死亡を実現できるわけではありません。
消極的安楽死や緩和ケアとは何が違うのか
消極的安楽死は、延命措置を開始しない、または本人の意思に基づいて中止することを指します。
また、緩和ケアは、病気に伴う痛みや身体的・精神的な苦痛を軽減し、生活の質を維持することを目的としています。
これらは自殺ほう助とは異なる医療上の選択肢です。
スイス連邦法務省も、延命措置の中止、苦痛を軽減するための治療、本人による自殺ほう助を、それぞれ別の概念として説明しています。
制度に関する情報を判断するときの3つの基準
スイス安楽死に関する情報を調べる場合は、次の3点を確認することが大切です。
- 法律と団体の規約を区別する: 刑法115条に明記された内容と、団体独自の審査基準は同じではありません。
- 外国人の利用資格と医学的適格性を区別する: 国籍や居住地の条件を満たすことは、医学的な審査を通過することを意味しません。
- 自己決定権と社会的圧力を区別する: 本人の意思が、孤立、経済的不安、介護負担、周囲への遠慮などによって左右されていないかという視点も欠かせません。
特に、病気や障害を持つ人、高齢者が、自分の存在を周囲の負担と感じてしまうような社会環境を生まないことは、制度の持続可能性を考えるうえで重要です。
【よくある質問】スイス安楽死に関するよくある質問(FAQ)
Q1:スイスでは外国人でも自殺ほう助を受けられますか?
A1:ディグニタスは外国在住者にも対応しています。ただし、本人の判断能力や医学的条件、自由意思などについて審査があり、外国人であることだけで利用が認められるわけではありません。EXITドイツ語圏は原則としてスイス市民またはスイス居住者を対象としています。
Q2:スイス安楽死の費用はいくらですか?
A2:ディグニタスの公表料金では、関連サービスを含めて7,500~11,000スイスフランが目安です。付加価値税、会費、渡航費などは別途考慮する必要があります。金額は変更される可能性があります。
Q3:スイス刑法115条は安楽死を合法化する法律ですか?
A3:厳密には違います。115条は利己的な動機による自殺の教唆・ほう助を処罰する規定です。本人の判断能力や最終行為、医療関係法令などの条件を満たす場合に、自殺ほう助が処罰されない仕組みになっています。
Q4:健康な人でもスイス安楽死を利用できますか?
A4:刑法115条には終末期や余命に関する一律の規定はありませんが、医療倫理指針では医学的に確認できる重い症状や機能障害に伴う耐え難い苦痛が重視されます。健康な人への医療的支援が自由に認められているわけではありません。
Q5:スイスの自殺ほう助と日本の安楽死制度は同じですか?
A5:同じではありません。日本には刑法202条があり、自殺の教唆・ほう助や同意殺人を処罰対象としています。スイスの刑法115条を中心とした制度とは法的な仕組みが異なります。
Q6:2026年にスイスの安楽死制度は大きく変更されましたか?
A6:2026年11月現在、自殺ほう助を包括的に規制する新たな連邦法が成立したという状況ではありません。ただし、民間団体の監督、医師の責任、判断能力を失った場合の事前意思の扱いなどが議会で議論されています。
【プロの結論】まとめ:スイス安楽死の本質と2026年以降の注目点
スイス安楽死の実態を理解するうえで、最も重要なのは、一般に使われる「安楽死」という言葉と、法律上の「自殺ほう助」を混同しないことです。
スイス刑法115条は、利己的な動機による自殺の教唆・ほう助を処罰する規定であり、積極的安楽死を合法化した法律ではありません。本人の判断能力、自己決定権、医学的評価、最終行為の主体など、複数の条件が制度を支えています。
また、EXITとディグニタスは同じ団体ではありません。EXITは主としてスイス国内の人々を対象とする一方、ディグニタスは国際的な相談や外国人への対応で知られています。日本人についても過去の利用報告はありますが、現在の利用者数を示す十分な公的統計はありません。
2026年の大きな焦点は、自己決定権を尊重しながら、弱い立場に置かれた人々をどのように保護するかという点です。
今後、議論の中心になると考えられるのは、次の3点です。
- 自殺ほう助団体に対する監督と情報公開のあり方
- 医師の医学的・倫理的責任と判断能力の評価
- 事前意思と本人の身体的・精神的状態が変化した場合の法的な扱い
【プロの結論】スイスの制度は、単に「安楽死が認められている国」という一言では説明できません。本人の自己決定権、医療倫理、生命の保護、社会的な弱者への配慮が複雑に交差する制度です。
日本でこの問題を考える際にも、海外の制度をそのまま導入するかどうかという二択ではなく、緩和ケアへのアクセス、患者の意思決定支援、家族や医療従事者の負担、本人の尊厳をどう守るかという視点が欠かせません。
2026年以降のスイスの法制度を追ううえでも、刑法115条だけでなく、医療倫理指針や連邦議会の議論を合わせて確認することが、制度の実態を理解するための重要な判断基準になります。
主な参考資料:スイス連邦法務省、スイス医学アカデミー(SAMS)、スイス連邦議会、EXIT公式年次情報、ディグニタス2025年活動報告、スイス連邦保健統計関連資料、朝日新聞系withnewsの2017年報道。