【掛け声の歴史】「最初はグー、またまたグー」の意味と広がり

目次

「最初はグー」が全国的に知られるようになると、子どもたちの間では、その後に続く独特の掛け声も使われるようになった。

代表的なのが、次のフレーズだ。


じゃんけんの長い掛け声

最初はグー

最初はグー!


またまたグー!


いかりや長介、頭はパー!


正義は勝つ!


じゃんけんぽん!


子どもたちの間で親しまれた長い掛け声の一例

「またまたグー」は何を意味している?

「またまたグー」は、最初に出したグーをもう一度確認するような、リズムを整えるための掛け声として使われる。

じゃんけんのルールそのものが変わるわけではない。

「最初はグー」で全員の手をそろえ、「またまたグー」で言葉のリズムをつくり、最後の「じゃんけんぽん」で勝負する。

つまり、勝敗を決めるためのルールというより、遊びを盛り上げる唱え歌の一部だ。

金沢大学教育学部が2007年に公開した方言学習教材『みんなで学ぼう!金沢ことば』にも、この長い掛け声がじゃんけんの唱え方の一例として掲載されている。

同資料では、「いんじゃんほい」「ちっけった」「じっけった」など、地域によって異なる掛け声も紹介されている。じゃんけんの掛け声が、土地や世代によって多様に発展してきたことが分かる。

「いかりや長介、頭はパー」は誰が考えた?

このフレーズにも興味深いエピソードがある。

2018年12月の『有吉弘行のダレトク!?』で、アンタッチャブルの山崎弘也さんが、志村さんに「いかりや長介、頭はパー」という言い回しについて質問した。

これに対して志村さんは、子どもたちが勝手に作ったもので、自分は言っていないという趣旨の説明をしている。

つまり、「最初はグー」を広めた志村さんが、後に続くすべてのフレーズまで考案したわけではない。

テレビで使われた言葉を子どもたちが自分たちなりにアレンジし、新しい遊びの文化に変えていったのだ。

そもそも「じゃんけんぽん」はいつからある?

ここで、「最初はグー」とじゃんけんそのものの歴史を分けて考える必要がある。

日本文化いろは事典では、現在のじゃんけんにつながる遊びについて、江戸時代中期に中国から長崎へ伝わった拳遊びを起源の一つとして紹介している。

その後、酒席の大人の遊びなどを通じて広まったとされるが、起源には複数の説がある。

また、じゃんけんには昔から地域独自の唱え歌があり、昭和20年代後半にも「じゃんけんほかほかほっかいどう、あいこでアメリカ、ヨーロッパ」という言い回しが流行したと紹介されている。

この歴史を踏まえると、志村けんさんがじゃんけんそのものを考案したわけではないことは明らかだ。

志村さんが広めたのは、じゃんけんの前にグーを出すという、現在の遊び方における重要な合図だった。

【2026年現在】なぜ「最初はグー」は今でも使われ続けているのか?

1980年代にテレビから広まった掛け声が、なぜ2026年になっても使われているのだろうか。

その理由は、単なる懐かしさだけでは説明できない。

理由1:じゃんけんのタイミングを合わせやすい

最も大きな理由は、実用性にある。

じゃんけんでは、参加者全員が同時に手を出さなければ公平な勝負にならない。

しかし、複数人が参加すると、声を出すタイミングや手を出す速度に差が生まれる。

そこで「最初はグー」と言えば、一度全員が同じ手の形をつくれる。

このワンクッションがあることで、勝負の開始を合わせやすくなる。

理由2:子どものころに覚えた習慣が残っている

じゃんけんは、幼いころから学校や家庭、友達同士の遊びで繰り返し使うものだ。

一度身についた掛け声は、大人になっても自然に口から出る。

親から子へ直接教えられなくても、学校や友人関係を通じて次の世代に伝わっていく。

テレビ番組で生まれた流行が、家庭や学校という日常の場に定着したことが、長く使われる理由の一つだ。

理由3:飲み会やグループの会計決めにも便利

志村さんの誕生秘話と現在の使われ方が、最も分かりやすくつながる場面だ。

飲み会で誰が支払うかを決めるとき、複数人でじゃんけんをすることがある。

また、宴会の余興やイベントの順番決めなど、全員が同じタイミングで参加する必要がある場面でも役立つ。

最初に全員でグーを出すという単純な仕組みは、大人数のじゃんけんにも向いている。

理由4:世代や地域を越えて通じる言葉になった

かつては地域ごとに異なるじゃんけんの掛け声が使われていた。

しかし、テレビで広まった「最初はグー」は、特定の地域の方言や複雑な言い回しに依存しない。

誰でも意味を理解しやすく、短く、覚えやすい。

その結果、世代が異なる人同士でも共通の合図として使えるようになった。

「最初はグー」が残っている最大の理由は、テレビ発の流行でありながら、実際の生活でも役立つ言葉だったことにある。

【プロの結論】「最初はグー」の真相から分かるテレビ文化の影響力

今回の由来を整理すると、単純な発明者探しだけでは見えてこない、3つの重要なポイントがある。

1. 発案者と普及者は必ずしも同じではない

志村けんさんは、2018年のテレビ番組で飲み会の会計決めに使ったことを説明している。

一方、2002年の朝日新聞記事には、番組以前から使用していた人の証言が掲載されている。

この2つを合わせると、志村さんを「最初はグー」の全国的な普及に貢献した人物と評価するのが、最も資料に沿った理解になる。

言葉や流行の歴史では、最初に使った人、広めた人、定着させた人を区別することが大切だ。

2. テレビは日常の遊びを全国共通の文化に変えた

『8時だョ!全員集合』は、16年間にわたり放送された人気番組だった。

公開生放送という特徴もあり、出演者と観客の一体感が番組の魅力になっていた。

志村さんと仲本工事さんの「ジャンケン決闘」は、見ているだけでも分かりやすく、子どもたちがすぐにまねできる内容だった。

このような仕組みが、テレビの中の言葉を学校や家庭へ広げたと考えられる。

3. 長く残る流行には実用性がある

一時的なギャグは、時代とともに忘れられることも多い。

しかし「最初はグー」は、笑いの要素だけでなく、じゃんけんの開始を合わせるという実用的な役割を持っていた。

そのため、テレビを見ていなかった世代にも受け継がれ、現在まで残っている。

情報を見極める際には、次の3つを基準にすると、由来に関する誤解を避けやすい。

- 本人が直接語った内容なのか、第三者が紹介した説なのか。
- 発案したという話なのか、全国に普及させたという話なのか。
- 当時の新聞記事や放送記録など、時期を確認できる資料があるのか。

こうした視点は、「最初はグー」に限らず、昭和のテレビ番組から生まれた流行語や遊びの歴史を調べる際にも役立つ。

「最初はグー」に関するよくある質問(FAQ)

Q1:最初はグーを最初に考えたのは誰ですか?

A1:発案者として広く知られているのは志村けんさんです。2018年12月の『有吉弘行のダレトク!?』で、飲み会の会計をじゃんけんで決める際、酔った仲間のタイミングを合わせるために使ったと説明しています。ただし、番組以前から使用例があった可能性も指摘されています。

Q2:最初はグーはいつ全国に広まったのですか?

A2:大きく広まったのは1981~1982年ごろです。『8時だョ!全員集合』の志村けんさんと仲本工事さんによる「ジャンケン決闘」が普及のきっかけになりました。1981年2月7日放送回が初登場回として紹介されています。

Q3:最初はグーは神楽坂の芸者が発祥なのですか?

A3:神楽坂などのお座敷遊びが由来という説は、2007年の朝日新聞でも紹介されています。ただし、日本で最初に使われた場所や人物を確定できる資料は示されていません。志村さん本人が語った飲み会での誕生秘話とは、分けて理解する必要があります。

Q4:「またまたグー」にはどんな意味がありますか?

A4:「最初はグー」に続けて、リズムを整えながらじゃんけんを盛り上げる掛け声です。「いかりや長介、頭はパー」「正義は勝つ」などを加えた長いバージョンもあります。じゃんけんの基本ルールを変えるものではありません。

Q5:仲本工事さんも「最初はグー」の考案者なのですか?

A5:仲本工事さんは、志村けんさんと「ジャンケン決闘」で共演した重要な人物です。誕生秘話で発案者として語られているのは志村さんであり、仲本さんはテレビで普及する過程における共演者として位置づけられます。

Q6:志村けんさんが「最初はグー」を考えたのは何歳のころですか?

A6:普及のきっかけとなった「ジャンケン決闘」が始まったのは1981年です。1950年2月生まれの志村さんは当時31歳でした。飲み会での出来事の正確な日付は公表されていません。

まとめ:「最初はグー」は志村けんとドリフが全国に残した文化

「最初はグー」の歴史をたどると、飲み会での何気ない工夫が、テレビを通じて日本中に広がっていった経緯が見えてくる。

志村けんさんが2018年に語った誕生秘話では、酔った仲間とじゃんけんをする際、タイミングを合わせるためにグーを出すよう提案したことが始まりだった。

その後、『8時だョ!全員集合』で仲本工事さんとの「ジャンケン決闘」に取り入れられ、1981~1982年ごろに子どもたちの間で広く知られるようになった。

神楽坂のお座敷遊び起源説や、番組以前から使っていたという証言もあり、言葉そのものの最初の発祥については一つの説に決められない。

それでも、志村さんが全国的な普及に果たした役割は大きい。

2026年現在も、じゃんけんの前に自然と「最初はグー」と口にする人は多い。志村けんさんの笑いが、テレビの中だけで終わらず、日常生活の習慣として受け継がれている証しでもある。

何気なく使っている一言の背景には、昭和のテレビ文化と、ひとりのコメディアンの機転があったのだ。