【歌唱の見どころ】大竹しのぶが歌う16曲のシャンソンと「愛の讃歌」
舞台『ピアフ』を語るうえで、欠かせないのが大竹しのぶによる16曲のシャンソンだ。ピアフの歌をBGMとして流すのではなく、登場人物の感情や人生の転換点に合わせて、大竹自身が歌い上げる。
2026年の公演に関するインタビューで大竹は、15年間演じる中で、歌うことは「祈り」に近いと感じるようになったと語っている。歌唱技術だけでなく、その曲が生まれた背景や、歌う人物が抱える感情をどれだけ自分の中に取り込めるかが重要なのだ。
舞台を代表する5つのシャンソン

劇中の重要なナンバーとして知られるのが、次の楽曲だ。
これらは作品を理解するうえで特に重要な楽曲であり、16曲の全曲目を示す一覧ではない。2018年に発売されたアルバム『SHINOBU avec PIAF』には11曲が収録されているが、舞台の16曲とは収録構成が異なる。CDと舞台の曲目を同一視しないこともポイントだ。
「愛の讃歌」は大竹しのぶの歌手としての評価も広げた
「愛の讃歌」は、2016年の第67回NHK紅白歌合戦で大竹が披露したことでも知られている。舞台で培った表現力をテレビの音楽番組で発揮し、幅広い視聴者にピアフの歌を届ける機会となった。
翌2017年には「愛の讃歌」がCD化され、2018年にはアルバム『SHINOBU avec PIAF』が発売された。長らく舞台でしか聴けなかった大竹のピアフ楽曲が音源として残されたことは、舞台を観られなかった人にも作品の世界を広げる出来事だった。
大竹が2026年のインタビューで特に大切な曲として挙げたのも「愛の讃歌」だった。観客の期待が大きい曲だからこそ、余計なことを考えず、祈りとして歌いたいという趣旨を語っている。
「歌うことが祈りに近い」
この言葉は、16曲を単なる歌唱披露としてではなく、ピアフの人生を伝える演技の一部として捉えるための重要な手がかりになる。
【2026年キャスト一覧】梅沢昌代・彩輝なおら共演者との関係
『ピアフ』が長年支持されてきた理由は、大竹しのぶ一人の演技だけではない。ピアフを取り巻く人物を演じる共演者との関係性も、作品の大きな魅力だ。
2026年の15周年記念公演では、初演から作品を支えてきた梅沢昌代、彩輝なおに加え、複数の新たな出演者が参加した。主要人物を演じるキャストは次のとおり。
主要キャストと役柄の関係
※2026年公演の公式キャスト情報および役柄を紹介した公演インタビューに基づく。
梅沢昌代と彩輝なおが初演から支えてきた意味
梅沢昌代と彩輝なおは、2011年の初演から大竹と共演を続けている主要メンバーだ。
梅沢が演じるトワーヌは、ピアフの人生を理解するうえで欠かせない親友。ピアフが成功を収める華やかな場面だけでなく、孤独や苦しみを抱える場面でも、彼女の人間性を浮かび上がらせる役割を担う。
2026年のインタビューでは、大竹が梅沢を親しみを込めて「梅ちゃん」と呼び、戦争を背景にした「ミロール」の歌唱についても一緒に考えてきたことを明かしている。長年の共演によって築かれた信頼関係が、舞台上の人物同士の結び付きにも生かされている。
栗山民也の演出と大竹しのぶの演技が生む相乗効果
演出家の栗山民也は、2011年の初演から2026年の15周年記念公演まで一貫して演出を担当している。
2026年の公演では、大竹が栗山の細やかな演出によって新たな発見があったと語っている。再演を単に過去の舞台の再現にせず、俳優の年齢や経験、社会情勢の変化に合わせて作品を更新していることが分かる。
この関係性は、15年間続く作品にとって大きな強みだ。主人公を演じる大竹の経験が増える一方、演出家も同じ戯曲を繰り返し読み直し、表現を磨いていく。固定された演技を繰り返すのではなく、同じ役を演じながら新しい解釈を生み出す仕組みができている。
【評判を検証】『ピアフ』はなぜ大竹しのぶの代表作になったのか
『ピアフ』が大竹しのぶの代表作として定着した背景には、演技力、歌唱力、役柄との精神的な共鳴、そして長年にわたる再演の積み重ねがある。
東宝の公式公演紹介では、初演後の2012年に大竹が読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞し、演出の栗山民也も同年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したことが紹介されている。2013年には再演が演劇雑誌のミュージカル・ベストテンで1位に選ばれ、2016年には梅沢昌代が菊田一夫演劇賞を受賞した。作品を支える俳優と演出家の仕事が、それぞれ評価されてきた。
評判の理由1:歌唱が人物の感情と一体化している
大竹の歌唱の特徴は、楽曲をきれいに聴かせることだけを目的としていない点にある。
例えば「愛の讃歌」は、ピアフが最愛の人を失った後に録音した楽曲として、舞台の中でも特別な意味を持つ。大竹は歌うときの感覚を、観客に向けたパフォーマンスというより、天に向かって祈るようなものと説明している。
観客が曲のメロディーだけでなく、歌の背後にある喪失や愛情まで感じ取れることが、この舞台の大きな魅力だ。
評判の理由2:47年間の人生を身体全体で演じ分ける
ピアフは若い頃から晩年まで、環境も人間関係も大きく変化した人物だ。舞台では年齢や境遇の異なるピアフを大竹が演じ分ける。
特に注目したいのは、成功したスターとしての姿だけでなく、愛情を求めて傷つき、孤独に苦しむ姿も表現していることだ。華やかな歌手のイメージだけでは理解できない、ピアフの人間的な複雑さが舞台上に現れる。
2022年のインタビューでも大竹は、ピアフの人生は孤独と愛の繰り返しだという趣旨を語っていた。年齢を重ねるごとに、ピアフが経験した愛の意味を理解できるようになったという点も、長期にわたる再演の意義につながっている。
2026年の観劇レビューはどう評価した?
2026年1月13日公開の演劇情報サイト「エントレ」の観劇レビューでは、大竹の演技を通してピアフの人生を追体験するような感覚があったと評価された。
特に印象的だったとされたのは、ピアフを見いだしたルイの死を描く場面だ。大きな声で泣き叫ぶのではなく、言葉を失い、歌うことで悲しみを伝える演技が、観客の感情を揺さぶったという。
一方、レビューは作品の見づらさにつながる要素も指摘している。場面が短く、登場人物が次々と現れるため、初めて観る人は時代や人物関係を把握するのに戸惑うことがある。また、ピアフの奔放な生き方や戦争に関わる描写は、観客によって好みが分かれる部分だ。
それでも、歌と演技のエネルギーによって、ピアフの人生を強く印象付ける舞台として評価されている。単純に「感動的な歌の舞台」として紹介するだけでは、実際の観劇体験を十分に伝えられない作品だ。
『ピアフ』はどんな人におすすめ?
おすすめできる人
- エディット・ピアフやシャンソンの名曲に興味がある人
- 大竹しのぶの演技と歌唱を一度に味わいたい人
- 恋愛、喪失、孤独、人間の強さを描いた濃密な人間ドラマが好きな人
- 伝記を題材にした演劇や、実在の人物を描く舞台が好きな人
好みが分かれる可能性がある人
- 明るく軽快なミュージカルや、歌を中心としたコンサートを期待する人
- 登場人物や時代背景を丁寧に説明する、ゆったりした物語を好む人
- 戦争、貧困、病、恋愛の破綻など、重いテーマの描写が苦手な人
観劇前にエディット・ピアフの生涯や代表曲を少し予習しておくと、短い場面が続く構成でも人物関係を理解しやすくなる。特に「愛の讃歌」「バラ色の人生」「水に流して」の3曲を聴いておくと、舞台の感情表現をより深く味わえる。
【2026年最新】東京・愛知・大阪の15周年記念公演は終了
2026年の『ピアフ』は、東京・愛知・大阪の3都市で上演された。15周年記念公演として、東京公演の開幕から大阪公演の千穐楽まで、約1か月半にわたって各地の観客に届けられた。
2026年の公演日程と会場
公演日程は東宝の公演情報および各地の公演案内に基づく。
2026年10月30日現在、15周年記念公演の全日程は終了している。東京公演は1月31日、愛知公演は2月8日、大阪公演は2月23日にそれぞれ公演期間を終えた。
そのため、これから観劇を検討している人は、次回の再演情報や公式からの新しい公演発表を待つ必要がある。今回の公演を見逃した場合でも、2018年発売の『SHINOBU avec PIAF』や、大竹が歌唱した「愛の讃歌」の音源を通じて、ピアフの世界に触れることはできる。
【大竹しのぶとピアフ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:大竹しのぶが舞台『ピアフ』に初めて出演したのはいつ? A1:2011年10月の日本初演です。演出は栗山民也、原作はパム・ジェムス。2026年の15周年記念公演は6度目の上演となりました。
Q2:大竹しのぶとエディット・ピアフの出会いは? A2:20歳の頃、十八代目中村勘三郎からピアフの自伝を紹介されたことがきっかけです。自伝を読んでその壮絶な人生を知り、LPレコードを購入して歌にも親しみました。
Q3:舞台『ピアフ』では何曲のシャンソンを歌う? A3:大竹しのぶが劇中で歌うシャンソンは16曲です。「愛の讃歌」「バラ色の人生」「水に流して」「私の神様」「ミロール」などが作品を彩ります。
Q4:2026年の『ピアフ』で上演200回を達成した日は? A4:2026年1月11日です。東京・日比谷シアタークリエの昼公演で通算200回を達成しました。
Q5:2026年公演の主要キャストは誰? A5:主演の大竹しのぶをはじめ、梅沢昌代、彩輝なお、廣瀬友祐、藤岡正明、上原理生、山崎大輝らが出演しました。作はパム・ジェムス、演出は栗山民也です。
Q6:『ピアフ』は大竹しのぶの代表作といわれるのはなぜ? A6:2011年の初演から6度の上演を重ね、2012年には大竹が読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞したことに加え、16曲の歌唱と激しい人生を演じる表現力が高く評価されているためです。長期にわたって役と向き合い続けてきたことも、代表作としての評価を支えています。
まとめ:大竹しのぶにとって『ピアフ』は人生とともに深化する代表作
大竹しのぶと『ピアフ』の関係は、2011年の舞台出演から始まったものではない。20歳の頃に中村勘三郎から紹介された一冊の自伝が、長い時間を経て女優人生を代表する役柄につながった。
2011年の初演から2013年、2016年、2018年、2022年と再演を重ね、2026年には15周年と通算200回を達成。栗山民也の演出、梅沢昌代や彩輝なおら共演者との関係、16曲のシャンソン、そして大竹自身の人生経験が重なり、作品は少しずつ深みを増してきた。
『ピアフ』の本質は、シャンソンの名曲を聴かせることだけではない。愛する人を失っても歌い続け、孤独を抱えながらも誰かを愛そうとした女性の生き方を、舞台という生の空間で伝えることにある。
大竹しのぶが15年間にわたって演じ続けてきた理由も、200回という記録だけでは説明できない。毎回の舞台を新しい挑戦として受け止め、ピアフの人生から学び続けているからこそ、この作品は大竹の代表作として存在感を保っている。
2026年の15周年記念公演は幕を閉じたが、上演200回は作品の終着点ではない。大竹しのぶが演じるピアフの物語が、次にどのような舞台として帰ってくるのか。今後の再演にも期待が集まる。