【意味を徹底解説】「頂きたく存じます」はどんな敬語?
「頂きたく存じます」は、主に相手に何かを受け取らせてもらいたい場合や、相手に行動してもらいたい場合に、自分の希望をへりくだって伝える表現です。
言葉を分解すると、意味が理解しやすくなります。
「頂く」と「存じます」の意味

- 頂く(いただく): 「もらう」の謙譲語。相手から何かを受け取ることを、自分を低くして表す。
- たく: 希望や願望を表す。
- 存じます: 「思う」「考える」の謙譲語である「存じる」に、丁寧語の「ます」が付いた表現。
小学館の『デジタル大辞泉』でも、「存ずる」は「思う」「考える」「知る」「承知する」の謙譲語として説明されています。
つまり、「頂きたく存じます」は、基本的に「いただきたいと思います」という意味です。
例えば、取引先に資料を送ってほしい場合には、次のように使えます。
必要な資料を頂きたく存じます。
単に「資料をください」と伝えるよりも、相手に敬意を示しながら、自分の希望を控えめに伝えられます。
「頂きたく存じます」は二重敬語なのか?
気になる人も多いのが、敬語を重ねすぎているのではないかという点です。
この表現は、二重敬語として避けるべき言い回しではありません。
「いただく」は相手から何かを受ける行為に関する謙譲表現、「存じます」は自分の希望や考えをへりくだって述べる表現です。それぞれ異なる役割を持っています。
文化庁の「敬語おもしろ相談室」では、「いただく」を謙譲語Iとして説明し、相手から恩恵を受ける意味も含むと解説しています。
このため、目上の人や取引先に使用しても、敬語の構造として問題ありません。
相手に与える印象
この言葉から受け取られやすい印象は、主に次の3つです。
1. 礼儀正しい: 相手を立てながら依頼している。
2. 改まっている: 重要な連絡や正式な依頼に適している。
3. やや堅い: 日常的な社内連絡では距離を感じさせる場合がある。
特に初めて連絡する取引先、役職者、顧客、社外の関係者などには使いやすい表現です。
一方、毎日のようにやり取りする同僚に対して何度も使うと、必要以上に形式的な文章になる可能性があります。
大切なのは、敬語の丁寧さだけではなく、相手との関係や依頼の重要度に合わせることです。
【表記の違い】「頂きたく存じます」と「いただきたく存じます」はどちらが正しい?
このテーマで特に注意したいのが、漢字の「頂く」と、ひらがなの「いただく」の違いです。
実は、どちらか一方だけが常に正しいわけではありません。文章の中で、どのような意味で使っているかによって表記が変わります。
漢字とひらがなの使い分け
文化庁の公用文に関する表記原則では、本来の動詞として使う場合と、補助動詞として使う場合を区別しています。
例えば、「書類を頂く」は実際に物を受け取る動作を表すため漢字を使います。一方、「確認していただく」は、前の動詞に補助的な意味を添えるため、ひらがなで表すのが基本です。
具体的な違いを整理します。
「いただきたく存じます」と書くのが適切なケース
ビジネスメールで頻繁に登場する次の表現では、ひらがなを使うのがおすすめです。
- ご確認いただきたく存じます。
- ご検討いただきたく存じます。
- ご返信いただきたく存じます。
- ご協力いただきたく存じます。
- ご対応いただきたく存じます。
これらの「いただく」は、相手の行動に対して補助的に働いています。
公的な文書や、それに準じるビジネス文書では、ひらがな表記に統一すると読みやすく、用法も明確になります。
「頂きたく存じます」と書くのが適切なケース
一方、次のような文章では「頂く」を本来の動詞として使用しています。
- 資料を頂きたく存じます。
- 貴重なご意見を頂きたく存じます。
- 必要な書類を頂きたく存じます。
- 詳細な情報を頂きたく存じます。
つまり、実際に何かを受け取ることが目的なら、漢字表記が基本です。
なお、文章全体の読みやすさを優先して、媒体や企業の表記基準に従い、ひらがなに統一することもあります。
2026年現在も参考になる文化庁の表記方針
文化庁は2022年1月7日、文化審議会による「公用文作成の考え方」を公表しました。
この考え方では、従来の公用文の形式だけにとらわれず、一般の読み手にとって分かりやすく、親しみやすい文章にする方向性が示されています。
敬語も、難しい漢字を多く使えばよいというものではありません。
相手に伝わること、意味を誤解されないこと、文章全体で表記が統一されていることが重要です。
【使い方と注意点】目上の人に使っても失礼ではない?
「頂きたく存じます」は、上司や取引先、顧客など目上の人に使える敬語です。
ただし、どのような依頼にも無条件に適しているわけではありません。
目上の人に使える理由
文化庁の敬語の解説では、「いただく」は謙譲語Iに分類されています。
謙譲語Iは、自分側から相手側に向かう行為について、その向かう先の人物を立てる敬語です。
例えば、次の表現が該当します。
- 先生にご指導いただく。
- 上司にご確認いただく。
- 取引先にご協力いただく。
相手の行為によって自分が恩恵を受けるという構造があるため、相手を立てる表現として成立します。
失礼な印象になりやすい3つのケース
1.依頼内容が曖昧な場合
「ご対応いただきたく存じます」だけでは、何をどこまで対応すればよいのか分かりません。
改善例:
「添付資料の記載内容について、誤字脱字をご確認いただきたく存じます。」
依頼する作業を具体的に示すことで、相手も行動しやすくなります。
2.相手の都合を考慮していない場合
丁寧な言葉を使っていても、相手の予定を無視した依頼は負担になります。
改善例:
「ご多用のところ恐縮ですが、お手すきの際にご確認いただけますと幸いです。」
相手の状況を気遣う一言を添えるだけで、印象は柔らかくなります。
3.何度も同じ表現を繰り返す場合
一通のメールで「頂きたく存じます」を何度も使うと、文章が単調になります。
「ご確認いただけますと幸いです」「ご意見をお聞かせください」など、内容に応じて表現を変えると自然です。
使用する相手と場面の判断基準
- 取引先・顧客: 正式な依頼や重要事項の確認に適している。
- 上司・役職者: 判断や承認をお願いする際に使用できる。
- 同僚: 改まった依頼には使えるが、日常的な連絡には少し堅い。
- 部下: 通常の業務指示では、より明確で分かりやすい表現が適している。
目上の人に使う場合も、相手の行為を尊重することが大切です。
【ビジネスメール例文】そのまま使える場面別の表現
ここからは、実際の仕事で活用できる例文を紹介します。
1.ご確認いただきたく存じます
資料や契約内容、見積書などを確認してほしい場合に使います。
例文
「添付いたしました資料につきまして、内容をご確認いただきたく存じます。修正点などございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。」
ポイント
確認してほしい対象を具体的に示し、必要に応じて修正点の連絡も依頼しています。
2.ご検討いただきたく存じます
提案書や企画書、取引条件などについて、相手に判断をお願いする場面で使います。
例文
「弊社からの新しい企画案につきまして、ぜひご検討いただきたく存じます。ご不明な点がございましたら、いつでもご連絡ください。」
相手に決定を迫るのではなく、検討する機会をお願いするニュアンスがあります。
3.ご返信いただきたく存じます
問い合わせや日程調整などで、返事をお願いする場合に使用します。
例文
「お手数をおかけいたしますが、参加の可否につきまして、〇月〇日までにご返信いただきたく存じます。」
返信期限を明記すると、相手に必要な対応が伝わりやすくなります。
4.ご協力いただきたく存じます
プロジェクトやイベント、社内業務などで協力をお願いする場合に適しています。
例文
「本プロジェクトを円滑に進めるため、関係部署の皆様にもご協力いただきたく存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。」
5.資料を頂きたく存じます
相手から資料そのものを受け取りたい場合には、漢字の「頂く」を使うのが基本です。
例文
「先日ご案内いただいたサービスについて、詳細な説明資料を頂きたく存じます。お送りいただくことは可能でしょうか。」
この例では、資料を受け取ることが依頼の中心になっています。
6.お時間を頂戴したく存じます
打ち合わせや相談、商談などで相手の時間を確保したい場合に使います。
例文
「本件について直接ご説明したく、30分ほどお時間を頂戴したく存じます。ご都合のよい日時をお知らせいただけますでしょうか。」
「お時間を頂戴する」は、ビジネスの場面で使いやすい改まった言い回しです。
そのまま応用できるビジネスメール全文
〇〇株式会社
〇〇様
いつもお世話になっております。
先日ご相談いたしました企画につきまして、修正版の資料を添付いたしました。
お忙しいところ恐縮ですが、内容をご確認いただきたく存じます。
修正点やご意見などございましたら、〇月〇日までにお知らせいただけますと幸いです。
ご多用のところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
このように、依頼の対象、相手に求める行動、必要な期限を整理すると、丁寧さと分かりやすさを両立できます。
【言い換え・類語】「頂きたく存じます」と「頂戴したく存じます」の違い
同じように丁寧な依頼を伝える表現でも、言葉によってニュアンスが異なります。
相手との距離感や、何をお願いするのかによって使い分けることが大切です。
よく使われる言い換え表現
1.「いただけますと幸いです」
柔らかく依頼したい場合に適しています。
例文:
「お手すきの際に、ご確認いただけますと幸いです。」
相手の都合に配慮した印象を与えやすい表現です。
2.「お願いいたします」
簡潔で幅広い場面に使える表現です。
例文:
「添付資料のご確認をお願いいたします。」
必要以上に文章を長くしたくない場合に便利です。
3.「お願いしたく存じます」
依頼内容を限定せず、何かをお願いしたいという希望を伝えられます。
例文:
「本件につきまして、改めてご相談をお願いしたく存じます。」
4.「ご検討いただけますと幸いです」
提案や相談を柔らかく伝える際に使います。
例文:
「新しい取引条件について、ご検討いただけますと幸いです。」
5.「賜りたく存じます」
非常に改まった場面で使用する表現です。
例文:
「皆様のご理解とご協力を賜りたく存じます。」
式典や公式文書、重要な依頼などに適しています。
「頂戴したく存じます」との違い
「頂戴したく存じます」は、「頂きたく存じます」と似ていますが、使う対象に違いがあります。
「頂戴する」は「もらう」の謙譲語です。
特に、相手から何かを受け取ることを、改まった形で表現する場合に使います。
例えば、次のような使い方が自然です。
- ご意見を頂戴したく存じます。
- お時間を頂戴したく存じます。
- ご挨拶を頂戴したく存じます。
- 貴重なご助言を頂戴したく存じます。
一方、「ご確認いただきたく存じます」のように、相手に具体的な行動をお願いする場合は「いただく」を使う表現が適しています。
使い分けの目安
- 資料・意見・情報を受け取る: 頂きたく存じます
- 相手に確認や検討をしてもらう: いただきたく存じます
- 時間や挨拶などを受ける: 頂戴したく存じます
- 柔らかくお願いする: いただけますと幸いです
- 簡潔に依頼する: お願いいたします
- 非常に改まった依頼: 賜りたく存じます
言い換え表現を選ぶ際には、単純に敬意の高さだけでなく、相手に何をしてほしいのかを基準にすると、自然な文章になります。
【よくある質問】「頂きたく存じます」に関するFAQ
Q1:「頂きたく存じます」は目上の人に使っても失礼ではありませんか?
A1:失礼ではありません。「いただく」と「存じます」を組み合わせた謙譲表現であり、上司や取引先、顧客などに依頼するときにも使用できます。ただし、依頼内容を具体的に伝え、相手の都合にも配慮しましょう。
Q2:「頂きたく存じます」と「いただきたく存じます」はどちらが正しいですか?
A2:文脈によって異なります。資料や意見など、物を受け取る意味の本動詞なら「頂く」、相手の行動に補助的な意味を添える場合は「いただく」とするのが基本です。「ご確認いただきたく存じます」はひらがな表記が適しています。
Q3:「ご確認いただきたく存じます」は正しい敬語ですか?
A3:正しい敬語です。「ご確認いただく」は相手の確認という行為を受ける謙譲表現で、「存じます」が自分の希望をへりくだって伝えています。
Q4:「ご検討いただきたく存じます」はどのような場面で使いますか?
A4:企画書や提案書、取引条件などについて、相手に検討をお願いするときに使います。押し付けがましさを避けたい場合は「ご検討いただけますと幸いです」と言い換える方法もあります。
Q5:「頂戴したく存じます」との違いは何ですか?
A5:「頂戴したく存じます」は、意見や時間、資料などを受け取りたい場合に適した表現です。「ご確認いただきたく存じます」のように相手の行動を依頼する場合とは、使い方が異なります。
Q6:「頂きたく存じます」の類語には何がありますか?
A6:「いただけますと幸いです」「お願いしたく存じます」「お願いいたします」「賜りたく存じます」などがあります。柔らかさを重視するなら「いただけますと幸いです」、簡潔さを重視するなら「お願いいたします」が使いやすい表現です。
まとめ:相手への敬意と伝わりやすさを両立する使い方
「頂きたく存じます」は、相手に何かを受け取りたい、あるいは依頼したいという希望を、謙譲語によって丁寧に伝える表現です。
目上の人や取引先にも使えますが、実際のビジネスシーンでは、漢字とひらがなの使い分け、依頼内容の具体性、相手との距離感が重要になります。
特に覚えておきたいポイントは次のとおりです。
- 物や情報を受け取る意味なら「頂く」が基本。
- 相手の行動を受ける補助動詞なら「いただく」が基本。
- 正式な依頼には「いただきたく存じます」が使える。
- 柔らかく伝えたい場合は「いただけますと幸いです」が便利。
- 相手の負担を考え、依頼内容や期限を具体的に示す。
【プロの結論】
敬語は、難しい表現を使うこと自体が目的ではありません。相手に敬意を示しながら、こちらの希望を正確に伝えるためのものです。
「頂きたく存じます」を使うときも、形式的な丁寧さだけに頼らず、相手が何を求められているのかを理解できる文章にすることが大切です。
依頼の内容が明確で、相手への配慮が伝わるメールこそ、ビジネス上の信頼関係を築く土台になります。